4. JTやオリックスなどが株主優待を廃止する理由②:ガバナンス意識の向上
ここでもう一度、流動性に関する変更内容を見てみましょう。
- 株主数:2200人以上(旧)→800人以上(新)
- 流通株式時価総額:10億円以上→100億円以上
- 時価総額:250億円以上(変更なし)
これを見て、東証は「どんな投資家に気を使った」ことが推察できるでしょうか。
「少数の株主で、より多額の売買を生む」という狙いが見て取れるのではないでしょうか。
ここで浮上するのは「機関投資家」です。
実際、東証は市場改革について「多様な機関投資家が安⼼して投資対象とすることができる潤沢な流動性の基礎を備えた銘柄を選定する」という狙いを明言しています。
株主優待は、個人投資家にとっては嬉しいものですが、還元をキャッシュで受け取りたい機関投資家にとっては少々厄介です。
実際に、JTとオリックスは両社そろって、優待廃止の経緯について「公平な利益還元のあり方という観点から慎重に検討を重ねた」という説明をしています。
コーポレート・ガバナンスの観点で、株主が平等となるように検討したことがうかがえ、その結果、優待の廃止を決めたのではないでしょうか。
執筆者
1991年生まれ。新潟県新潟市出身。2022年に株式会社モニクル傘下の株式会社ナビゲータープラットフォームに入社し、現在はメディア事業部・メディアグロース企画推進室マネージャー。くらしとお金の経済メディア「LIMO(リーモ)」を中心に、多くの読者の方に幅広いコンテンツを届けるための戦略立案に従事している。
それ以前は、LIMO編集部にてアシスタント・コンテンツマネージャー(ACM)として従事。第一報として報道されるニュースを深堀りし、読者の方が企業財務や金融に対する知的好奇心を満たしたり、客観的データや事実に基づく判断を身に付けられたりできる内容の記事を積極的に発信していた。
入社以前は、株式会社フィスコにて客員アナリストとして約20社を担当し、アナリストレポートを多数執筆。また、営業担当として、IRツール(アナリストレポート、統合報告書、ESGレポートなど)やバーチャル株主総会サービス、株主優待電子化サービスなどもセールス。加えて、財務アドバイザーとしてM&Aや資金調達を提案したほか、上場企業向けにIR全般にわたるコンサルティングも提供。財務アドバイザリーファームからの業務委託で、数千万~数十億円規模の資金調達支援も多数経験。
株式会社第四銀行(現:株式会社第四北越銀行)、オリックス株式会社でも勤務し、中小・中堅企業向け融資を中心に幅広い金融サービスを営業した。株式会社DZHフィナンシャルリサーチでは、日本株アナリストとして上場企業の決算やM&A、資金調達などのニュースと、それを受けた株価の値動きに関する情報・分析を配信。IPOする企業の事業・財務を分析し、初値の予想などに関するレポートを執筆。ロンドン証券取引所傘下のリフィニティブ向けに、週間・月間レポートで、日本株パートを執筆。経済情報番組「日経CNBC」にて毎月電話出演し、相場や株価の状況も解説していた。
新潟県立新津高等学校を経て、2013年に慶応義塾大学商学部を卒業。学部では、岡本大輔研究会にて企業評価論、計量経営学を専攻していた。
最終更新日:2023/11/03