それでは、当初の目的だった防犯効果はどうでしょうか。近年は、防犯カメラや警備会社による遠隔監視など、セキュリティシステムの飛躍的な向上により、この防犯効果の意義も薄くなりました。さらに、イートインのニーズが高まった結果、コンビニ店舗ではイートインスペースを外から見える場所に設置するようになっています。
従前は防犯効果を目的とした雑誌販売の場所が次々に狭められ、イートインスペースになっていると考えられます。イートインスペースが外から見えれば、十分な防犯効果にもなります。むしろ、限られた店舗空間でイートインスペースを拡大する中、雑誌販売の場所は既に不要となっているのかもしれません。
雑誌取り扱いはコンビニ経営の大きな重荷に
こうした状況を勘案すると、最早コンビニにとって、雑誌の取扱いは必要不可欠でも何でもなく、逆に、店舗運営の重荷になっていると言えるでしょう。
その中において、成人向け雑誌の販売に関しては、現在のヒモ縛りだけでなく、反射シールを貼ること等で表紙すら全く見られなくする等、今後新たな規制が課せられる可能性があります。確かに、一定の需要が見込める成人向け雑誌とはいえ、そこまでして取り扱う必要があるのか?という疑問が出るのは当然なのかもしれません。
真っ先に取りやめたミニストップの事情
また、今回の一連の成人向け雑誌販売中止を最初に掲げたのが、ミニストップという点にも注目です。
コンビニ業界の過当競争が深刻化する中、ミニストップは2018年2月期に1994年の上場以来初の最終赤字に転落しました。さらに、2019年2月期も2期連続の最終赤字、しかも、赤字額が大幅拡大となる厳しい業績不振に陥っています。
そのようなミニストップが、他社に先駆けて成人向け雑誌販売から手を引くのは、それだけコスト削減を伴った収益改善に繋がると考えるべきです。これを「美談」とか「モラルの鑑」と片付けていいのでしょうか。
数年後はコンビニから雑誌が消える?
こうして考えると、他のコンビニも追随することになった成人向け雑誌販売の中止は、全ての雑誌販売中止を視野に入れた第一歩と見ることもできます。“まさか?”と思うかもしれませんが、売れない雑誌をわざわざ置いておくほど、今のコンビニ各店舗には、物理的(スペースの問題)にも、収益的にも余裕がないはずです。
さて、数年後のコンビニに雑誌は置いてあるでしょうか?
葛西 裕一