半導体市況全体が低迷する中にあって、インテルが好調に売り上げを伸ばしている。2018年通期のトータルセールスは年初計画の650億ドルを大幅に上回る712億ドル(前年比13%増)を見込み、MPUは作っても作っても足りない。
その要因はパソコン需要が復活してきたことと、サーバー向けCPUの引き合いが強いためである。2019年設備投資は155億ドルを計画しており、既存の14nm世代の追加投資に加え、最先端の10nmに向けた投資を急ピッチで進めている。メモリー分野もニューメキシコ州に3D-Xpoint メモリーの新たな拠点を設立する計画であり、軒並み投資減額を図る大手メモリーメーカーとは対照的な投資スタンスを取っている。
2019年末にはサムスンを逆転する可能性も
インテルの18年第4四半期売り上げは190億ドルであり、サムスンが20兆ウォンを下回ったことで業界トップの売り上げとなった。こうなれば、2019年末にはサムスンから世界王座を奪還する可能性も出てきたのだ。
2018年の半導体売上世界ランキングは1位がサムスンの8兆3439億円で前年比16%増となっているが、2位のインテルも同14%増と好調で7兆2448億円となっている。約1兆円の差があるわけだが、2019年の6月または9月ごろまでメモリー不調が長引けば、サムスンの売り上げは伸びない。インテルは堅調に伸びると見られ、サムスンを逆転する可能性を否定できなくなっている。
WSTS(世界半導体市場統計)の2019年の予想を見ても、メモリーは0.3%減ではあるがマイナス成長となっており、これに対してマイクロ3%増、ロジック3.8%増と、論理系半導体の方が伸びが良いと分析しているのだ。関係者によれば、「昨年10月にロジック半導体は底打ちし上昇に向かっている。だがメモリー低迷の出口はまだ見えていない」という。
インテルだけではなくAMDも絶好調であり、FPGA系も回復基調、しかしスマホ向けをメーンとするクアルコム、エヌビディアなどはまだまだダメという展開になっている。AMDは先ごろ、7nmプロセスの次世代Ryzenプロセッサーを発表しており、インテル製Core i9と比較し高速で消費電力30%減というその性能が評価され、株価がかなり上がっている。
データセンター投資が止まることはない
サムスンが2年ぶりの大幅減益にあえぎ、下手をすれば2年ぶりに王座転落の危機を迎えると噂されているなか、政治的には日韓関係は最悪の状況にはまりこんでしまった。元徴用工をめぐる異常判決やレーダー照射問題などでほとんど解決の糸口が見えない。自民党の外交部会・外交調査会が1月11日に開いた緊急合同会議では、韓国の半導体製造に打撃を与える「フッ化水素輸出禁止」まで提案されているのだ。まさかとは思うが、これが実行されればサムスン、SKなどの韓国半導体メーカーは全くモノが作れないことになる。
しかし認識を間違ってはいけないことがある。それはIoT革命が止まったわけではないということだ。世界のデータ生成量は9ゼタバイトくらいであるが、ここ数年のうちに5倍の45ゼタバイトまで上がるのは確実であり、データセンターも現状の5倍になる。データセンター投資は必ずや再開されるであろう。
グーグルはオハイオに600億円、デンマークに770億円のデータセンター投資を計画し、インドネシア、チリにも投資計画がある。アップルは米国に5年間で100億ドルを投入しデータセンターを作る。アリババは英国でのデータセンター展開を狙う。フェイスブックはオレゴン州に800億円、バージニアに1100億円のデータセンター投資を進める。アマゾンはインドネシアに1000億円のデータセンターを建設する。NTTもロンドンにデータセンターを建設する。
これらが実行されれば、再び3D NANDフラッシュメモリー、DRAMなどの需要は一気に急増、サムスンは再び息を吹き返すであろう。もっともデータセンター向けのCPUに強いインテルの売り上げもまた伸びていくのであり、2019年の半導体世界チャンピオンの争いはクビ差、鼻差の勝負になるかもしれない。
産業タイムズ社 社長 泉谷 渉