車載用半導体大手のルネサス エレクトロニクスの在庫調整はまだ道半ばの状況だ。2017年末からマイコンを中心に調整局面が顕在化したが、稼働調整の判断が遅かったことや、実需そのものが冷え込んでいることも相まって、2019年以降もこれを引きずることになりそうだ。
稼働率は50%台半ばまで低下
ルネサスは、16年の熊本地震の影響に伴う顧客側での在庫積み増し需要を受けて、マイコンを中心に17年までは高水準の引き合いが続いていたが、需要が一服したことで、18年からは一転して調整局面に入っていた。
需給ギャップ解消に向け、同社では生産調整を実施。自社ラインのウエハー投入量は、18年8月から大きく減少させている。また、ファンドリーからの購入量も18年7月から減少しており、在庫水準の適正化に向けた取り組みを加速させている。自社の前工程ラインの稼働率(ウエハー投入ベース)は、50%台半ばにまで落としたほか、300mmラインに限れば50%弱まで抑えたもよう。
手元在庫の調整は完了
これらの取り組みにより、同社の18年12月末時点の棚卸資産は1180億円となり、9月末に比べて235億円減少した。当初は12月末に向けて200億円程度の削減を見込んでいたが、在庫調整は想定以上に進捗している印象だ。
同社によれば、自社の在庫調整は完了したという。ただ、チャネル在庫に関しては自動車向けがおおむね適正化を図れた一方で、自動車以外の分野は若干余剰感が残っているという。本来は第2四半期(4~6月)中ごろには終息すると見ていたが、現在の中国の景況感から、上期いっぱいは時間を要する見通しだ。
1~3月は18%減収予想
2月8日に発表した19年1~3月期の半導体売上高見通しは、1460億~1540億円(中心値は前四半期比18%減/前年同期比18%減)を計画する。中国市場をはじめとする景気低迷に加え、代理店などチャネル在庫の調整が長引いていることが影響する。
セグメント別では、主力の車載向けは前四半期比10%台半ばの減収を予想する。減収幅のうち、半分弱はチャネル在庫の影響によるもので、実需ベースでは1桁台後半の落ち込みになると見ている。一方、産業およびブロードベースド部門は、車載以上の落ち込み幅となる見通しで、とりわけスマートファクトリー関連は中国景気の低迷を受けて、同30%減と最も大きな落ち込みを予想する。
18年10~12月期実績は半導体売上高が1838億円(前四半期比5%増/前年同期比11%減)、営業利益が212億円(同12%減/同38%減)となった。18年(暦年)通年業績は半導体売上高が前年比3%減の7405億円、営業利益が同14%減の1106億円の減収減益となった。
IDT買収は上期に完了予定
なお、ルネサスは18年9月に米半導体メーカーのIDT(Integrated Device Technology)を総額67億ドルで買収すると発表している。買収に関する当局の承認手続きは米国政府機関の閉鎖の影響で若干遅れているものの、19年上期中には完了する見通しだという。
決算発表時の電話会議で買収価格が高すぎる、という指摘に対し、呉文精CEOは「IDTのファンダメンタルズは継続的に堅調で、本質的な価値は不変」と言及。自動車は今後も主力分野であることには変わりはないものの、「自動車一本足の経営は好ましくないと考えており、データセンターや5Gなどいくつかのエンドマーケットで柱を持ちたい」(同氏)と買収の意義を説明した。
電子デバイス産業新聞 副編集長 稲葉 雅巳