「ハラスメント」というからには、相手側に悪意があるように思うかもしれません。しかし嫁ハラの場合、あくまで義両親側に悪意はないのです。

義両親は「これが当たり前の価値観」と信じて、60年以上生きてきました。特に家事や育児、親戚付き合いといったあまり科学的に証明されていないものは、その家の価値観が根強く残る分野でしょう。「自分たちはこれが当たり前で生きてきたし、何が悪いのかわからない」のが正直なところです。

一方で、悪意がないから仕方ない、という話でもありません。「言われて嫌な気持ちにる人がいる」という点が問題で、ハラスメントになるのです。

距離を置くしかない

嫁ハラを解決するには、どちらかを変えるしかないと思うでしょう。しかし義両親側は、60年以上その価値観で生きてきたので、今さら変わることは期待できません。まずは「相手は変わらない」という認識を、女性側がしっかりと持っておく必要があります。

では、嫁が折れれば解決するのでしょうか。傷ついても我慢し、義両親の言う通りにするのは、建設的な人間関係を築くためにはお勧めできません。嫁とはいえ、その人の人生はその人のもの。義両親の言うことを聞くということは相手の人生を生きるようなものですし、自立になりません。また、義理とはいえ家族ですから、結局は長続きしないでしょう。

お互いの価値観が相容れないのですから、距離を置くのが一番でしょう。距離を置けばお互いに気に入らないものが見えにくくなりますし、口出しをされて傷付く機会が減ります。仕事、学校行事、習い事、病院の予定などをフル活用したり、最近では長期休暇も夫だけ帰省してもらうという人も増えています。

義両親を褒めるのも、一つでしょう。褒めてくれる人に対しては、相手も責められなくなります。嫁ハラが始まったら、すぐに話題を変えましょう。話を聞いてもらいたいときは、病院や学校の先生といった第三者の意見を信じる世代でもあるので、そういった方たちの話を出すことも大切です。

「ダメな嫁と諦めてもらうのも手」とAさん。気に入られようと頑張ると自分の意見が言えなくなりますが、ダメだと諦めてもらえば、自分の意見を言えるようになります。「ダメと言われて傷付きましたが、少し気が楽になったのも確かです。距離を置いて、自分らしく生活しようと思います」と最後にAさんは言いました。

永山京子