2025年10月となり、今年も終盤に差し掛かっています。 日増しに秋が深まるこの時期、長期的な人生設計について考える方も多いのではないでしょうか。
近年、私たちの老後生活において、ただ長生きするだけでなく、「いかに健康で長く生きるか」が重要なテーマとなっています。 厚生労働省のデータによると、日本の平均寿命は世界トップクラスですが、それと並行して「健康寿命」との間に大きなギャップが存在することが指摘されています。
平均寿命と健康寿命の差は、男性で約8.5年、女性で約11.7年にも及びます。 この「健康ではない期間」は、日常生活に制限が生じる可能性があり、医療費や介護費といった経済的な負担を伴います。
一方、統計によれば、70歳代の二人以上世帯の貯蓄額には大きなばらつきがあり、平均値は1923万円であるものの、実態に近い中央値は800万円です。 さらに、65歳以上の無職夫婦世帯は毎月約3万4千円の赤字生活を送っているというデータもあります。
年金収入だけでは生活が厳しく、貯蓄を取り崩しながら生活している世帯が少なくない現実が見えてきます。
本記事では、この老後の経済的な課題に焦点を当て、健康寿命と平均寿命のギャップを踏まえた上で、豊かな老後を迎えるために現役時代から始めるべき具体的な準備について解説します。健康面と経済面の両輪で計画を立てることの重要性を理解し、将来への不安を解消するためのヒントを見つけましょう。
1. 健康寿命と平均寿命のギャップ
厚生労働省発表の「令和5年 簡易生命表」によると、2023年時点の平均寿命は男性81.09歳、女性87.14歳です。
また、総務省の「2024年(令和6年)労働力調査」(2025年1月公表)によると、全就業者数6781万人のうち「65歳以上の就業者数」は前年に比べて16万人増加の930万人で、働くシニア層は年々増えていることがわかります。
一方で、2022年時点での健康寿命(※)は、男性72.57歳、女性75.45歳です。平均寿命と健康寿命の間には、男女ともに大きなギャップが存在します。男性は約8.5年、女性は約11.7年もの間、健康上の問題で日常生活が制限される可能性があるのです。この期間は、医療費や介護費といった経済的な負担が増加する可能性あります。そのため、現役時代からこの「健康ではない期間」に備えた計画的な準備を考えることが非常に重要になります。
※健康寿命とは:「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」のこと。
働くシニア世代を後押しする仕組みは整いつつあります。しかし、医療費や介護費などがかさむ世代でもあるため、健康面での不安を感じることも増えるのではないでしょうか。