6. 2025年度の年金額は1.9%アップ

年金額が変わる理由としてもう一つ、年金額改定があります。

公的年金は賃金や物価を考慮して年度ごとに見直しがおこなわれます。2025年度(令和7年度)の年金額は、前年度より1.9%引き上げとなっています。

3年連続のプラス改定にはなりましたが、「マクロ経済スライド(※)」によって物価上昇率を下回る改定率となっており、実質的には年金額は目減りしています。物価上昇に年金額が追い付けていないのです。

※マクロ調整スライドとは:「公的年金被保険者(年金保険料を払う現役世代の数)の変動」と「平均余命の伸び」に基づいて設定される「スライド調整率」を用いて、その分を賃金と物価の変動がプラスとなる場合に改定率から控除するしくみ

またシニアの多くは、下記の税や社会保険料を老齢年金からの天引きで納めています。

年金から天引きされる税や社会保険料が記載される「年金振込通知書」

年金から天引きされる税や社保が記載される「年金振込通知書」

出所:日本年金機構「年金振込通知書」

  • 介護保険料
  • 公的医療保険(国民健康保険・後期高齢者医療制度)の保険料
  • 個人住民税および森林環境税
  • 所得税および復興特別所得税

年金見込み額は「ねんきん定期便」や「ねんきんネット」で確認できますが、年金は「額面通りにはもらえない」点は意外な盲点かもしれません。

7. 老後の生活費は天引き後の年金額で考えよう

今回ご紹介したように、老後の年金額は現役時代の年金の加入状況で決まります。

個人差が大きいので年金見込み額はねんきんネットなどで確認するのがよいですが、その際も「天引きされた後の金額で生活すること」は念頭におきましょう。

また、年金額も毎年度改定されます。

物価などの状況により増減しますが、2025年度は1.9%増額もマクロ経済スライドの調整が▲0.4%入りました。少子高齢化の日本では、老後の年金受給額が変わる可能性もあります。

公的年金のみで生活するのは難しい人も多いでしょう。日々の生活費だけでなく、旅行や趣味、車や家電の購入費や維持費、病気や介護が必要なときの備えも必要です。これを機にマネープランについて考えてみましょう。

参考資料

 

宮野 茉莉子