台湾エレクトロニクスの強さはいつまで続くのか

中国・米国依存からIoT時代に求められる変化

台湾エレクトロニクスの象徴であるTSMC

 台湾のエレクトロニクス企業の強さは際立っている。世界のマザーボードの88%を握っており、ケーブルTV受信機、DSLモデム、無線LAN製造についても圧倒的なシェアを持っている。今やノートPCの83%は台湾製で、米アップル社のサプライヤー数も台湾企業が6年連続で世界一(52社)となっているのだ。

 半導体ファンドリー(受託製造企業)ランキングにおいても、台湾TSMCがぶっちぎりの強さ(世界の約半分)を見せており、第3位にはUMC、第6位にパワーチップがランクされている。今や世界最大の半導体メーカーになったサムスンがファンドリー徹底強化を打ち出し、打倒TSMCを掲げているものの、2017年の売り上げはTSMCの322億ドルに対し、46億ドルしかなく、この分野の世界ランクでは4位にとどまっている。

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 台湾ファンドリー躍進の要因は何といっても米国のファブレス企業をがっちりと捉えたことにある。クアルコム、ブロードコム、エヌビディアなど世界半導体企業の上位にランクされる企業はひたすらTSMCに大量の発注を行っている。

時代はITからIoTと自動車へ

 こうした台湾ITの黄金時代はこれからも保証されているのかというと、そうとは言い切れないかもしれない。時代は音を立ててITからIoTへと変化を遂げている。コンピューティング的にはサーバーとPC、スマホなどの端末で完結する完全集中制御から自立分散制御に移っている。つまり「センサー to センサー」、「モジュール to モジュール」というコミュニケーションが激増することは間違いなく、ネットに入ることなくエッジデバイスで処理するケースも格段に増えてくるだろう。同じ仕様で大ロットを作るという大量生産から多品種少量、多品種変量に移行してくれば、ファブレス~ファンドリー~OSATという大きな流れに変調をきたしてくることも充分に考えられる。

 そしてスマホの頭打ちもはっきりとする中、今後のビッグマーケットは次世代自動車になっていくことが見通されている。何しろ平均単価が100万円を超え、約1億台が出荷される巨大市場であり、ここが動けばスマホのインパクトを軽く凌駕する。

 エコカー、自動走行、コネクテッドカーという次世代自動車への移行は、車載向け半導体を現在の10倍に押し上げていく。自動車のカルチャーはスピードにはなく、安全と安心、耐久性にあり、半導体、電子部品に求められる特性はスマホとはまるで違うのだ。自動車のマーケットシェアで35%を握り、トップを行く日本企業を抜きにどのような開発も進めてはいけないだろう。

車載分野に立ちはだかる日本の牙城

 台湾はこれまでひたすら米国のIT企業を重視していればよかった。またサプライズ成長を遂げた中国のIT企業をがっちりと捉えていればよかった。しかしIoT時代の流れは自動車の革新につながり、ここで日本を無視することはできない。

 もっとも台湾は周知のように親日であるからして、これからも日本との関係は良好に保っていくだろう。ただし車載向け半導体については日本の牙城はまずパワーデバイスにあり、マイコンにあり、CMOSイメージセンサーをはじめとするセンサーにある。台湾のビジネスモデルは変化せざるを得ず、これまでの圧倒的な強さを発揮することは少し困難になっていく可能性が高い。

 それにしても、先ごろ台湾の蔡英文政権が中国ハイテク企業の規制強化に乗り出したことには驚かされた。米中貿易戦争の流れを受けて、ファーウェイ、ZTE、レノボなどの中国機器排除に動いていくというのだ。この動きを見る限り、台湾は貿易上は圧倒的な中国依存であっても、その視線は決して中国には向いておらず、ひたすら米国重視なのだと改めて思わされる。

産業タイムズ社 社長 泉谷 渉

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泉谷 渉
  • 泉谷 渉
  • 株式会社産業タイムズ社 社長

30年以上にわたって第一線を走ってきた国内最古参の半導体記者であり、現在は電子デバイス産業新聞を発行する産業タイムズ社社長。
著書には『半導体業界ハンドブック』、『素材は国家なり』(長谷川慶太郎氏との共著)、『ニッポンの環境エネルギー力』(以上、東洋経済新報社)、『これが半導体の全貌だ』(かんき出版)、『心から感動する会社』(亜紀書房)などがある。
一般社団法人日本電子デバイス産業協会 理事 副会長 企画委員長。全国各地を講演と取材で飛びまわる毎日が続く。