6. 公的年金から天引きされる《税金や社会保険料》年度前半と後半の「仮徴収・本徴収」とは?

公的年金からは、税金や社会保険料(健康保険料・介護保険料など)が天引き(特別徴収)されます。

「天引き額は1年間ずっと同じ」と思いがちですが、実は年度の途中で金額が変わるのが一般的です。

その理由は、年金から天引きされる住民税と社会保険料の計算が、二段階(仮徴収・本徴収)のしくみになっているためです。

公的年金から天引きされる《税金や社会保険料》年度前半と後半の「仮徴収・本徴収」とは?

年金の仮徴収と本徴収

出所:厚生労働省「保険料(税)の特別徴収」

6.1 ステップ1:年度前半は「仮徴収」

年金から天引きされる住民税や国民健康保険料などの社会保険料は、前年(2024年)の所得をもとに計算されます。しかし、その正式な年額が確定するのは毎年6月~7月頃です。

そのため、金額が確定していない年度前半(4月・6月・8月支給分の年金)では、まず前年度2月と同額が暫定的に天引きされます。これを「仮徴収」と呼びます。

6.2 ステップ2:年度後半は「本徴収」

前年の所得が確定し、その年度に支払うべき社会保険料の正式な年額が決まると、徴収方法が切り替わります。

まず、確定した年額から、仮徴収として支払った合計額を差し引きます。そして、残った金額を年度後半の支給回数で割って天引きします。これが「本徴収」です。

多くの場合、本徴収は10月支給分からですが、自治体によっては8月から始まることもあります。

6.3 前年の所得が大きく変わった人は要注意!

前年の所得が増加すると、秋以降の年金の手取り額が想定外に減ってしまうことがあるため注意が必要です。

例えば、以下のように前年の課税所得が増えるケースがこれにあたります。

  • 不動産の売却や退職金の受け取りで、一時的に大きな所得があった
  • 年金以外にパート収入や不動産収入などがあった
  • 配偶者控除などの各種控除の適用がなくなり、課税対象額が増えた

このような理由で前年の所得が増えた場合、年度後半の「本徴収額」が、前半の「仮徴収額」に比べて大幅に高くなることがあります。

その結果、秋以降に天引きされる金額が増え、年金の手取りが大幅に減ってしまう可能性もあるのです。ご自身の状況をあらかじめ確認しておくと安心です。

7. 「年金の見込額」や「必要な生活費」を今のうちから確認しておきましょう

ここまで、公的年金制度の基本や「平均年金月額」、公的年金から天引きされる《税金や社会保険料》の「仮徴収・本徴収」について解説しました。

「国民年金のみ」を受給する場合、平均年金月額は男女全体で5万7584円です。

その一方で、国民年金と厚生年金を両方受給する場合、平均月額は男女全体で14万6429円となっています。

現役時代に会社員や公務員として勤務している場合、厚生年金にも加入することになるため、国民年金のみを受給するケースと比べ、年金の受給額は多くなります。

また、今回ご紹介した平均年金月額は額面での金額なので、実際に支給される際は年金から税金や社会保険料が天引きされます。

物価高を踏まえると、年金のみで老後生活を過ごすには厳しい状況にあることが考えられます。

日本年金機構の「ねんきんネット」や「ねんきん定期便」などでご自身の年金情報を確認し、老後生活に不足すると考えられる金額を今のうちから少しずつでも準備しておくことが大切です。

家計や資産全体のバランス、ライフスタイルを考慮したうえで、老後生活に向けた準備を計画的に進めてみてはいかがでしょうか。

参考資料

安達 さやか