4. 「年金格差の実態」なぜこんなに違うの?

ここからは、60歳~90歳以上の全受給権者の年金月額を、男女別グラフを用いて見ていきます。

厚生年金の平均額(全年齢)

厚生年金の平均額(全年齢)

出所:厚生労働省年金局「令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」をもとにLIMO編集部作成

4.1 「厚生年金」の平均年金月額

  • 〈全体〉平均年金月額:14万6429円
  • 〈男性〉平均年金月額:16万6606円
  • 〈女性〉平均年金月額:10万7200円

※老齢基礎年金部分を含む

4.2 「国民年金(老齢基礎年金)」の平均年金月額

  • 〈全体〉平均年金月額:5万7584円
  • 〈男性〉平均年金月額:5万9965円
  • 〈女性〉平均年金月額:5万5777円

平均年金月額を男女別で見ると、国民年金(基礎年金)では大差がない一方、厚生年金では月額でおよそ6万円もの顕著な差が見られます。

この差が生まれる背景には、受給額が「現役時代の収入」と「加入期間」で決まるしくみと、女性のキャリアパスの傾向があると考えられるでしょう。

今の受給者世代では、女性が主に出産や育児といったライフイベントを機にキャリアを中断したり、パートタイムで家計を支えたりするケースが多く見られました。

こうした働き方が、結果として厚生年金の加入期間や現役時代の平均収入に差を生み、老後の年金額に直接反映されているのです。

しかし、この状況は今後変化していくでしょう。かつての専業主婦世帯が中心だった時代とは異なり、現代では共働き世帯が主流となり、正社員として長くキャリアを築く女性も増えました。

社会がこのように変わっていくことで、女性が厚生年金に加入する期間はより長くなり、生涯にわたる収入も増えていきます。

そのため、今の現役世代が老後を迎えるころには、年金の額に見られる男女の差は、現在よりも小さくなっていると考えられるでしょう。