2025年6月、年金制度改正法が成立しました。働き方やライフスタイルの多様化に対応する形で、在職老齢年金や私的年金制度の見直しが行われています。一方で、現実のシニア世代の年金額や生活費はどうなっているのでしょうか?
今回は、厚生労働省や総務省などの最新データをもとに、制度改正の全体像と、70歳代夫婦の家計や貯蓄の実態を確認。今後の生活設計や備えについて、前向きに考えるヒントをお届けします。
1. 2025年【年金制度改正】5つの注目ポイント
2025年6月13日、年金制度改正法が成立しました。働き方や家族構成などの多様化に合わせた年金制度の整備、私的年金制度の拡充などにより、老後の暮らしの安定や、所得保障機能の強化に繋げていくことが主な狙いです。
今回の改正で「わたしたちの暮らしや働き方にどんな影響があるのか?」という点で、主な見直しポイントを整理していきましょう。
1.1 年金制度改正の全体像《主な見直しポイント》
①社会保険の加入対象の拡大
- 短時間労働者の加入要件(賃金要件・企業規模要件)の見直し(年収「106万円の壁」撤廃へ)
②在職老齢年金の見直し
- 支給停止調整額「月62万円」へ大幅緩和(2025年度は月51万円)
③遺族年金の見直し
- 遺族厚生年金の男女差を解消
- 子どもが遺族基礎年金を受給しやすくする
④保険料や年金額の計算に使う賃金の上限の引き上げ
- 標準報酬月額の上限を、月65万円→75万円へ段階的に引き上げ
⑤私的年金制度
- iDeCo加入年齢の上限引き上げ(3年以内に実施)
- 企業型DCの拠出限度額の拡充(3年以内に実施)
- 企業年金の運用の見える化(5年以内に実施)
今回の改正内容が示すように、公的年金制度は私たちの働き方やライフプランと深く関わっています。
総務省の「2024年(令和6年)労働力調査」によると、65歳以上の就業者数は930万人(前年比+16万人)に。シニア世代の就労は確実に増えています。
一方で、厚生労働省のデータでは、平均寿命(男性約81歳、女性約87歳※1)と健康寿命(男性約73歳、女性約75歳※2)には男性で約8年、女性で約12年の差があります。
このギャップからは、多くのシニアが医療費や介護費を必要とする期間を過ごす可能性があることがわかります。
現役時代からの貯蓄や資産形成は、70歳以降の暮らしにとって安心感に繋がるものと言えそうです。
※1 平均寿命:2022年 男性81.05歳、女性87.09歳・2023年 男性81.09歳・87.14歳(「令和5年簡易生命表の概況」)
※2 健康寿命:2022年 男性72.57歳、女性75.45歳(「健康寿命の令和4年値について」)