ファーウェイショックだけではない懸念材料

2018年12月7日の東京株式市場で、日経平均株価の終値は、前日より177円06銭高の21,678円68銭となりました。4日ぶりの反発です。週初は米中の貿易摩擦の一時休戦を受けて、買い戻しが進み、7日続伸となりました。しかし、その後は利益確定売りが進み、もみ合いとなりました。

5日には、カナダ政府が中国の通信機器最大手、華為技術(ファーウェイ)の孟晩舟最高財務責任者(CFO)を逮捕したと明らかにしました。孟氏はファーウェイの創業者で最高経営責任者・任正非氏の娘です。米中摩擦が悪化するという懸念が再び浮上したことから、米国をはじめ、世界の株式市場で中国関連株やハイテク株を中心に売りが広がりました。

今週以降の動きはどうなるでしょうか。米中は前週、中国の知的財産保護などで協議を行うことで、2019年1月以降に予定されていた米国による関税引き上げを90日間猶予することで合意しました。その矢先の「ファーウェイ・ショック」により、再び楽観できない状況になってきました。

懸念されるのは中国だけでなく、米国経済も減速の気配が感じられることです。米債券市場では12月に入ってから、短期の債権利回りが長期の債券利回りを上回る「逆イールド」現象が起こっています。この現象が見られるのはその後の景気後退の前触れと言われるだけに注意が必要です。また、7日に発表された11月の米雇用統計では、雇用者数の伸びが市場予想に届かず、ダウ工業株30種平均は3日続落し、前日比558ドル72セント安の2万4388ドル95セントで終えています。

11日には、英国の欧州連合(EU)離脱を巡り英議会で採決が行われる予定です。議会内では反対論が拡大しており、否決される可能性も出てきました。その場合でもただちに「無秩序離脱」が決まるわけではありませんが、メイ首相の辞任や総選挙といったリスクが生じれば、欧州株式市場や為替市場などにもそのリスクが波及することになります。

Wボトム(二番底)が崩れ、再び方向感のない展開へ

先週の動きをテクニカル面から振り返ってみましょう。ポイントの一つは、11月21日の安値によりWボトム(二番底)が形成されるかどうかという点でした。チャートのセオリーとしては、Wボトムの形成を確認するためには、10月2日から26日の下落からの戻り高値である11月8日の22,583円を超えることが条件になります。このあたりは75日線にも重なっています。

実際には週明け3日に窓をあけて上昇すると、一時、22,698円まで上昇しました。しかし、終値は22,574円と、11月8日の高値を超えて終えることができず、ここで上値を押さえられるようにして翌日から下落してしまいました。

今後の動きはどうなるでしょうか。現状は、方向感が定めにくい状況です。先週は下落しましたが、10月26日の安値(20,971円)を割り込まなかっただけでなく、11月21日の安値(21,243円)も割り込みませんでした。つまり上値を押さえられながらも下値が切り上がっていくような形になっています。

短期的には目先意識されやすい21,500円と、直近の戻り高値である22,500円の間でのもみ合いになりそうです。このレンジを上抜けるようであれば、もちろん積極的に付いていきたいところですが、21,500円を割り込んだとしても、21,000円を一気に下回ることは考えにくいところです。これまで何度も下値サポートラインとなっていますので、このあたりでいったんは下げ止まるのではないでしょうか。

下原 一晃