皆さんは、「ママ友」という単語にどんなイメージを持っていますか?
もしかしたら、「面倒くさい」「怖い」といったネガティブなイメージを抱いている方もいらっしゃるかもしれません。そもそも、ママ友の定義とは? そして、なぜママ友という関係が生まれたのでしょうか? 今回は、ママ友を掘り下げて考えてみましょう。
2000年代前半頃から使われ出した「ママ友」という言葉
ママ友とは、子どもを通じてできた交友関係。公園や児童館、保育施設で顔見知りになった母親同士が少しずつ友達のように打ち解けて、いつの間にかお互いに「ママ友だ」と認識するようになります。
面と向かって「今日からあなたは私のママ友」と宣言するのではなく、頻繁に会うようになったり、第三者に対して「子どもの園のママ友が……」という話をするうちに、ママ友であることを自覚することもあるでしょう。
「ママ友」という言葉は、2000年代前半からじわじわと社会に浸透。インターネット界隈では、2001~2002年ころから勃興期の相談サイトに「ママ友との付き合い方」に関する悩みが出没しています。
「ママ友」を必要とするのは人間の本能?
孤独と言われる現代の子育て。近くに親類のいない場所に住み、夫の長時間労働が常態化している場合、ママ友の存在は、育児中の母親の心の支えとなったり、孤独や不安を和らげることがあります。
ヒトは、進化の過程で「みんなで協力して子育てする」(共同養育)というスタイルを確立したものの、家族の形が変化したことで母親が不安や孤独を抱えやすくなっているといいます(『ママたちが非常事態!? 最新科学で読み解くニッポンの子育て』参照)。母親が「仲間と共同養育したい」という欲求をママ友に反映するのは、ある意味本能的なことだと言えます。
一方で、「ママ友グループ」にドップリはまることのデメリットもあります。ママ友グループは、かつての農村・漁村で見られた共同養育とは異なり、「子どもは自分たちの共同体を引き継ぐ財産」といった共通の認識を抱くことがないからです。
あくまでも「かわいい我が子」を通じての関係なので、年齢や考え方が全く異なる母親同士がつながることで、たびたびトラブルが起きたり、グループに溶け込めずにさらなる孤独感に襲われることもあるようです。また、交友関係が狭まりやすい育児期、逃れられない閉鎖的な人間関係の中にいると感じたとき、大きなストレスを感じる女性は少なくありません。
近年、「ボスママ」「ママカースト」といった女性同士の力関係を表す言葉も生まれ、子どもを持つ前の女性たちを戦々恐々とさせています。
このママ友現象は何も日本に限ったことではなく、ヒトの共同保育が消滅しつつある先進国においても、しばしば見受けられます。たとえば、著者の実体験を元に書かれた『パークアヴェニューの妻たち』。ニューヨークの超高級住宅地で子育てをする著者が、「プレイデート」(子ども同士の遊び)のために、ママ友社会に溶け込もうと必死になり、少しずつ心が疲れていくシーンは、胸に迫るものがありました。
何ごとも良い面と悪い面があるように、親子ぐるみのつきあいによって母子の孤独が癒される一方で、密に付き合い、疲れ果ててしまうケースも多く見受けられます。