2. 介護保険料に「地域格差」があるのはなぜ?
介護保険料に地域格差が生まれる理由としては、以下の3つが挙げられます。
- 要介護認定を受けている人が多い
- 単身高齢者世帯が増えている
- 地域の所得が低い
介護保険料が最も高い大阪市を例に、それぞれの理由を解説していきます。
2.1 要介護認定を受けている人が多い
介護保険料が高い地域は、要介護認定を受けている人が多い傾向にあると考えられます。
保険料の高い自治体のなかでも唯一9000円台となっている大阪市は、要介護認定を受けている人の割合が全国平均より多くなっています。2025年1月時点での要介護認定を受けている第1号被保険者の割合と、大阪市の要介護認定者の割合を比較してみましょう。
- 全国平均:約19.7%
- 大阪市:約28%
大阪市は全国平均を10%近く上回る認定率です。要介護認定を受ける人が多いと、介護保険給付が増えます。適切な給付をするためには相応の財源が必要になるため、保険料が高くなっているのです。
2.2 単身高齢者世帯が増えている
単身高齢者世帯の増加も、介護保険料が高くなる理由のひとつです。
高齢者でも夫婦で住んでいる人や子供と一緒に住んでいる人であれば、自身が要介護状態になっても、家族の支援を得ながら介護を受けられます。しかし、単身の高齢者世帯は身寄りがない場合もあり、要介護状態となった際は公的支援による介護が必須です。
2020年時点での大阪市の単身高齢者数は21万3260人です。同時期の人口は275万2412人で、人口の約8%が単身の高齢者となっています。
単身の高齢者が多くなると、結果的に要介護認定が増え、介護保険料が上がっていくのです。
2.3 地域の所得が低い
地域経済の冷え込みや低所得者の増加は、結果的に介護保険料の増加を招きます。介護保険料は、所得が多い人ほど金額が高く、低い人ほど金額が安くなります。そのため、安定した介護保険財政を運営するには、地域にどれだけ所得の高い人がいるかが鍵になるのです。
大阪市によれば、2024年度時点で65歳以上の高齢者のうち50%が住民税非課税世帯であるとしています。所得が低い人が多いと、保険料負担の軽減が適用される人が増えます。よって、制度全体を支えるためには標準となる保険料額や、所得が高い層の保険料負担を上げざるを得ないのです。
介護保険料は公的な介護支援をするために必要なお金ですが、徴収額が高いと家計も苦しくなるものです。介護保険料の地域差が家計や生活に与える影響を、次章で解説します。