米中貿易摩擦の行方が見えず、調整気味に

2018年11月16日の東京株式市場で、日経平均株価の終値は、前日より123円28銭安の21,680円34銭となりました。約2週間ぶりの安値です。米国の中間選挙のイベント通過を受けて米株はいったん上昇したものの、その後は調整気味になっています。

背景には、米中の貿易摩擦問題の行方がなかなか読みづらい点があります。米中は月末にアルゼンチンのブエノスアイレスで開かれる20カ国・地域(G20)首脳会議において、首脳会談を行う予定です。そこで大きな合意が得られればいいのですが、短期的な休戦にとどまる可能性も指摘されています。

今週以降の動きはどうなるでしょうか。まず気になるのは、ハイテク株が下落傾向にあることです。中でも、米アップルは、主力の「iPhone」の販売が低調であるとされ、株価が、10月に付けた高値から一時、約2割も下落しました。その影響は、半導体や部品メーカーなどにも波及しています。日本でも半導体関連株が売られる傾向にあります。

もう一つ懸念されるのは、原油価格が下落していることです。背景には、米中貿易摩擦を受け、中国で家電や自動車の販売が鈍るなど、世界経済が減速していることがあります。足元では、原価が下がることによりエネルギー、電力、化学品、輸送業界などには好影響となります。しかし、これが長引くと、中国をはじめとするアジアの市場で、日本の産業資材メーカーなどへの価格の下げ圧力にもなりかねません。

月末のG20を控え、しばらくは積極的な売買を控える投資家が増え、トランプ氏の言動などに一喜一憂する神経質な動きになりそうです。米国では22日は感謝祭でニューヨーク市場が休場。翌23日は東京市場が休場で3連休となります。ただし、米国では23日は「ブラックフライデー」と呼ばれ、この日からクリスマス商戦が始まります。年明け以降も含む米国の消費の勢いを確認するという点でも注目されます。

5日線、25日線、75日線と、主要な移動平均線を割り込む

先週の動きをテクニカル面から振り返ってみましょう。前週は10月2日から10月26日までの下落の半値戻しである22,709円を超えることができるかどうかがポイントでした。このあたりは、75日線や、10月2日からの下落の戻り高値とも重なります。

ここを抜ければ、「半値戻しは全値戻し」への期待も高まるところでしたが、実際にはその直前で上値を押さえられ、11月8日の22,583円を戻り高値として下落することになりました。10月26日の安値以来、下値をサポートされていた5日移動平均線だけでなく、25日線、75日線など、主要な移動平均線をすべて割り込んでしまいました。

今後の動きはどうなるでしょうか。まず、目線をどちらに持つかという点ですが、なかなか判断が難しいところです。13日には窓をあけて大きく下落しましたが、21,500円付近で反転すると、引けにかけては値を戻し、長い下ひげを付けたローソク足になりました。また、その翌日の14日はローソク足の実体がほとんどない十字線となりました。いずれも、投資家の迷いが感じられる形です。15日、16日も短い陽線と陰線が繰り返し、方向感が定まりませんでした。

シナリオとしては、ここから25日線などに上値を押さえられて下落していくパターンと、このあたりから反転してWボトム(二番底)の形になるパターンがあります。13日の安値(21,484円)や、目先で意識されやすい21,500円あたりを割り込むようであれば、目線は下になるでしょう。逆に、12日から13日の間の窓埋めとなる22,121円あたりを回復するようであれば、反発にも期待できます。

下原 一晃