風疹(ふうしん)が今年8月ごろから首都圏を中心に急増しており、注意をうながす声が広がっています。国立感染症研究所の調べによると、2018年の風疹患者数は、すでに2014~2017年の年間平均の約10.8倍にあたる1884人(2018年11月7日現在)となっており、今後ますます感染が拡大する可能性が懸念されています。

多くの人にとって風疹は、「名前は聞いたことがあるけど、どんなものかよくわからない」という病気だと思いますが、具体的にどのようなもので、この流行によってどんな影響があるのでしょうか?

30~50代の男性が感染者の半数以上

風疹とは、発熱や発疹、リンパ節の腫れなどが主な症状です。「はしか」と呼ばれる麻疹とは、字が似ていますが異なるもので、症状自体は麻疹よりも軽いとされています。子どもより大人のほうが重症化する傾向にあります。

そして、感染者の半分以上は、「30~50代の男性」です。というのも、制度上、この世代の男性の多くが風疹の予防接種を受けていないからです。

こうした理由により、風疹はワクチンで予防可能な感染症であるにもかかわらず、いまだ感染者があとを絶ちません。

妊婦への重大な影響

風疹で最も恐れられているのが、「先天性風疹症候群」です。これは、妊婦が風疹にかかった場合、その影響で、出生児が障害を持って生まれてくることを指します。難聴や、視力の低下につながる白内障のほか、心臓に生まれつき異常を抱えている先天性心疾患が主な症状です。

風疹は、主としてくしゃみや咳による「飛沫感染」で広がります。ワクチンを接種していない30~50代の男性をはじめとした風疹患者が感染源となり、妊婦や胎児に風疹が感染してしまう危険性が大いにあるのです。

こうした危険性から、10月23日、アメリカの疫病対策センターは妊婦に対して、「日本への渡航を自粛するように」という勧告を行いました。

予防接種を呼びかける声も広がる

そんな中、風疹による妊娠中の女性への影響を案じて、予防接種を呼びかける声が相次いでいます。

講談社の運営する「コミックDAYS」では、10月11日に医療漫画『コウノドリ』の風疹のエピソードを期間限定で無料公開しました(現在、無料公開は終了しています)。また、Twitterでは、自身の妊娠時、抗体がつきにくく風疹に怯えていたエピソードをもとにした漫画が投稿され、反響を呼んでいます。

また、東京都は、妊娠を予定する女性や妊婦と同居する男性も、風疹の免疫に関する検査や予防接種の補助対象とする方針を出しました。そのほか、ワクチン接種の費用を一部負担したり、予防接種の機会を設けたりするなど、独自に対策をとる企業も出てきています。

集団感染を防ぐために

一方で、ワクチンの流通量が減っており、

「ワクチン接種を受けたいが断られてしまった」
「ワクチンがないのでは予防接種を呼びかけても仕方がない」

という声も少なくないようです。また、助成の対象が広がったとはいえ、独身男性や妊娠予定のパートナーがいない人には補助が下りないため、対策はまだまだといえるでしょう。

多くの先進国ではほぼ撲滅されているにもかかわらず、日本ではまだまだ感染が広がっているという風疹。予防接種ひとつで防げるものの、ワクチンの生産や予防接種のハードルを下げることなど、自治体や企業だけでできる対策には限界があります。今後、国をあげてのさらなる対策が行われることを期待したいところです。

クロスメディア・パブリッシング