はじめに

働き方の多様化とともに、会社員ではなくフリーランスという働き方を選ぶ人が増えてきました。ところで、フリーランスとは、具体的にどのような働き方のことをいうのでしょうか。また、税金の収め方など会社員と違う点はどのようなところなのでしょうか。

目次

1. フリーランスとはどのような働き方なのか
2. フリーランスのデザイナーを目指す
3. フリーランスのエンジニアとして働く
4. フリーランスのイラストレーターの仕事
5. フリーランスが確定申告をするときの注意点
6. 会社員とは異なるフリーランスの税金
7. フリーランス協会の果たす役割

1. フリーランスとはどのような働き方なのか

フリーランスは、特定の企業には所属せずに働くことをいいます。どのような仕事をするかは人それぞれで、とくに仕事の内容が明確に決められているわけではありません。

では、会社員とフリーランスの違いについてみてみましょう。会社員は特定の会社に雇われ、作業の対価として所属する会社から給与を受け取ります。これに対して、フリーランスは特定の会社に所属していないため、立場としては個人事業主や個人事業法人として契約することになり、作業の対価は、一般的には報酬と呼ばれる形で、顧客に支払ってもらうことになります。

なお、個人事業主になるには、仕事を始めるにあたって税務署に開業届を提出するという手続きが必要ですが、特別な問題がなければ受理されると思ってよいでしょう。なお、収入がそれほど多くない場合は、配偶者の扶養に入ったままフリーランス、という働き方も可能です。

やるべき仕事を会社から与えられる会社員と異なり、フリーランスは自分で顧客と交渉し、仕事を受注する必要があります。ただ、会社員のように、仕事の量が決まっているわけではないため、いくらでも稼げるチャンスがある反面、仕事が取れなければ、全く稼げないというリスクもあります。

フリーランスの仕事の種類は多岐にわたりますが、デザイナー・エンジニア・イラストレーターなどとして活躍する人が多いようです。これらの職種は、案件ごとに対価をつけやすいというのも、その要因のひとつかもしれません。

2. フリーランスのデザイナーを目指す

デザイナーとは、文字通りデザインを考える職業です。ただ、一言でデザイナーといっても、さまざまな分野があります。このため、フリーランスのデザイナーになりたい場合、どのような分野があるのか、自分が得意分野は何かをあらかじめ把握しておいたほうがよいでしょう。

フリーのデザイナーというと、一般的にホームページ作成やサイトのデザイン構築などを担当するWebデザイナーを思い浮かべる人が多いようですが、企業のロゴを考えるロゴデザイナーや、アニメなどのキャラクターを考えるキャラクターデザイナー、デザインを必要とするすべてのものにデザイナーが存在します。ただ、フリーランスとして働くのであれば、どれか1つに特化するのではなく、複数の分野にわたる仕事をすることも十分可能といえるでしょう。

フリーランスのデザイナーは、毎月決まった金額の給与を受け取るわけではないので、年収が極めて高い人もいれば低い人もいます。平均を見ると30代で300万円台ほどですが、能力の高いデザイナーは1,000万円を超えているといわれています。スキルを上げる努力を続けると、最初は稼げなくても次第に稼げるようになるということなのかもしれません。

フリーランスであれば、デザインを考えることに加えて情報の収集も自分自身で行う必要があります。そのため、仕事時間のうち、たとえば、考える作業、すなわちクリエイティブな部分に2~3時間、情報収集に2~3時間というようにしっかりとした時間配分をすることが重要です。

専門の学校に通って知識を身につけるほうが、短期間でプロになれるという考え方もあります。しかし、学校に通うにはある程度の時間とお金が必要です。近年では本やWebサイトが充実しているため、本気で学ぶ意欲があれば独学で勉強することも十分にできます。ある程度のレベルに達すれば、受注できる仕事を探し実践を積みながら勉強を続けることも可能でしょう。

3. フリーランスのエンジニアとして働く

社内SEを始めとして、会社員として働くエンジニアが一般的ですが、最近はフリーランスで働くエンジニアも増えているようです。なお、会社員であってもフリーランスであっても、仕事内容に大きな違いはなく、主な仕事内容としては、システムを構築する、アプリケーションを作成するといったことが業務の中心となります。ニーズとしては、動作環境を問わず、また複数のプログラミング言語を扱うことができるエンジニア、最新の技術に精通しているエンジニアの需要が高い傾向にあるようです。

年収600万円以上を稼ぐエンジニアもいるといわれていますが、フリーランスのエンジニアの場合、年収400万円以下というケースも多く、エンジニアだから簡単に高収入が得られる仕事というわけではないようです。

客先に常駐して働くフリーランスのエンジニアも多く、その場合、基本的に作業時間は会社員と同じく朝から夕方までになります。ただし、時間給ではなく、作業単価で契約をしていた場合は、拘束時間が長くなると実質的な時間当たりの報酬は下がってしまうため、効率的に稼ぐ事ができないという事態が起こることもあります。

また、複数の仕事を引き受けていた場合、ひとつの仕事に長時間拘束されてしまうと、他の仕事に充てられる時間が減ってしまうというケースもあるようです。

将来的にフリーのエンジニアとして働きたい方で、システムやプログラミング言語の知識が全くないという人の場合は、ある程度の知識があるのならば、分かりやすい参考書やウェブサイトを使って独学で学ぶことも不可能ではありませんが、専門学校などで体系的に学ぶのが最も効率的で、おすすめの方法といえます。

ただ、どちらにしても、未経験の方がいきなりフリーランスのエンジニアとしてデビューをするのは正直難しいでしょう。いったんIT系の企業に就職し、開発手順や現場のやり方をひととおり身につけたうえで独立、という手順を踏むのがよいのではないでしょうか。

4. フリーランスのイラストレーターの仕事

イラストに関わること全般がイラストレーターの仕事になります。会社員として働くイラストレーターもいますが、フリーランスとして活動するイラストレーターもたくさんいます。仕事内容は、ウェブサイトに掲載するキャラクターを描くようなものが典型例ですが、複雑な作業工程をイラストで解説するようなものもあります。

フリーランスのイラストレーターはインターネットを通じて仕事を受注することが多く、パソコンでの作業が主となるため、IllustratorやPhotoshopなどの専門的なソフトを使いこなすスキルが欠かせないといえます。昨今では、いくら手描きのイラストが得意でも、専用ソフトを使って作品を電子データとして仕上げる、ということができなければ、仕事を受注できる可能性は著しく低くなってしまうからです。

Illustratorなどのソフトウェアの操作方法の習得は、基本操作を独学で学んだあとに実際に仕事をしながら身につけるということも可能なものですから、それほど心配することはないのかもしれません。ただ、余裕があればパソコン教室などのスポット講座を受講して、基礎的な操作を身につけてしまうというのも1つの方法でしょう。

イラストレーターをはじめとしたクリエイティブ系の職業は、人気がでれば稼げるというイメージがありますが、実際のイラストレーターの平均年収は約260万円程度と決して高くはありません。ただし、仕事を始めたばかりの年収は低めでも、長年にわたって仕事を続けていくうちに顧客との信頼関係が生まれ、依頼される件数が増え、徐々に年収が上がることが期待できる職業でもあります。最初から高収入を期待せず、顧客を獲得しつつ、地道にスキルアップを図ることが大切なのかもしれません。

フリーランスは、あらゆる作業を自分でこなす必要があります。もちろんイラストレーターであれば、イラストを描くことが仕事の中心になるのですが、仕事に必要な道具や機材を揃える/補充する、報酬額に関する交渉や打ち合わせ、収支の記帳など、他にもやるべきことがたくさんあります。作業時間としては、イラスト関係の作業とそれ以外の雑務が半々ということもあります。効率的に仕事をするためには、雑務のやり方を工夫するなど無駄を省く努力が必要なのかもしれません。

5. フリーランスが確定申告をするときの注意点

確定申告とは、1月1日から12月31日までの所得から税額を計算し、税務署に納める手続きのことです。会社員の場合は勤務先が毎月仮に計算した所得税を給与天引きし、年末調整で清算をしてくれるということになるため、基本的には確定申告の手続きは必要ありません。

しかしフリーランスの場合は、必ず自分で確定申告を行う必要があります。基本的には毎年同じ手続きとなるため慣れればスムーズにできるようになりますが、最初は戸惑うことが多いかもしれません。確定申告の時期になって慌てないようにするには、日頃から報酬や経費といった収支を帳簿に記録し、領収書等の書類を整理しておく必要があります。

会社員は給与所得を受けていますが、フリーランスの場合、報酬は給与所得ではなく事業所得という扱いになります。会社員とフリーランスの所得税率などは基本的に同じですが、事業所得と給与所得とでは所得税の計算に、必要経費を反映させるか、させないかの違いがある点には注意したほうがよいでしょう。なお、フリーランスの所得税額は、1年間の総収入から必要経費を引いて所定の税率を乗じた金額となります。なお、仕事に関連して支出した金額を全て必要経費として計上できるわけではないため、必要経費にできるものとできないものについては、事前に確認しておいたほうがよいでしょう。

なお、フリーランスの確定申告には青色申告と白色申告の2種類があります。開業届を出すことで青色申告が適用されることになりますが、複式簿記のルールに基づいて帳簿を作成し、BL/PL、収支決算書を作成して提出すれることで65万円もの控除を受けることができます。ただし、帳簿をつけていても簡易的なものであった場合は、控除される金額が10万円と少なくなります。ちなみに、白色申告でも帳簿をつける義務はありますが、提出する書類が青色申告に比べて簡便な様式となっているために、控除を受けることができないという特徴があります。

6. 会社員とは異なるフリーランスの税金

フリーランスの場合、確定申告のほかにも、税金や社会保険に関する手続きを自分で行う必要があります。
まず、確定申告では、自身が収めるべき所得税を計算して申告しますが、所得税の支払いも確定申告後に自分自身で金融機関に出向いて行う必要があります。3月15日が納期限ですが、請求書などは特に送付されませんし、遅れてしまうと追徴課税ということになってしまうので、注意が必要です。

会社員の場合、住民税も特別徴収といって給与天引きされますが、フリーランスは自分で金融機関に出向いて納付を行わなくてはいけません。なお、こちらは所得税と違って自分で計算や申告をする必要はなく、毎年6月上旬に、居住する自治体から明細書と納付書が送られてくるシステムとなっています。

年間の売上が1,000万円以上になるフリーランスの場合、事業者として消費税を納める必要があります。売上時に預かった消費税から仕入時に支払った消費税を引き、残った部分を納付することになります。なお消費税の納期限は3月31日です。

会社員は、会社が健康保険料や厚生年金といった社会保険料の社員負担分を給与天引きで支払いますが、フリーランスは国民健康保険と国民年金に自分で加入し、自分自身で金融機関に出向いて保険料を支払わなくてはいけません。

フリーランスの税金は高いと聞くことがありますが、実際の税額等は会社員のそれと何ら変わりはありません。ただ、会社員と違って、給与天引きではなく、すべて自分の財布から支払うことになるため、持ち出しが多い感覚に陥ってしまうのかもしれません。

7. フリーランス協会の果たす役割

会社員と異なり、フリーランスには身分保障がありません。安定した給与収入や福利厚生などの観点も考えると、間違いなく会社員のほうが立場的に安定しているといえるでしょう。そこで近年、フリーランスの不安を少しでも軽減させる取り組みが行われています。その重要な役割を担っているのが、フリーランス協会という組織です。そこに加入すると、会社員ほど手厚い保障はありませんが、健康診断や人間ドックの割引、子育て支援施設の割引などを受けることができます。

フリーランス協会に加入する最大のメリットは、仕事でトラブルが発生した場合などの賠償責任補償があることです。個人で仕事をするフリーランスにとっては、万が一顧客に損害を与えるようなことがあった場合、多額の賠償金の支払いという事態になると、対応が非常に難しい面があります。このため、このような補償があることで安心して働くことができます。

また、会社員とは違って怪我などで仕事ができない場合、フリーランスだと収入が途絶えてしまいますが、そこで役に立つのが収入を補償する保険です。この保険は自分で保険会社に出向いて加入することもできますが、フリーランス協会に加入していれば、割引料金で加入をすることができます。

おわりに

会社にとらわれず、好きなだけ仕事をしてお金を稼げるというのはフリーランスの大きなメリットですが、トラブルが起きたときにはすべて自分で対応しなければならいというデメリットもあります。このため、フリーランス協会の支援の仕組みやフリーランス向けの保険を上手に活用し、安心して働ける環境を自分で作る必要があるでしょう。また、仕事で必要なスキルを高める努力を続けることはもちろん、個人事業主として、税金や社会保険料の手続きや支払いを忘れずにきちんとしておくことも大切です。

LIMO編集部