5. 【65歳以上の夫婦のみの無職世帯】老後の生活費はいくら?
収入:25万2818円
■うち社会保障給付(主に年金)22万5182円
支出:28万6877円
■うち消費支出:25万6521円
- 食料:7万6352円
- 住居:1万6432円
- 光熱・水道:2万1919円
- 家具・家事用品:1万2265円
- 被服及び履物:5590円
- 保健医療:1万8383円
- 交通・通信:2万7768円
- 教育:0円
- 教養娯楽:2万5377円
- その他の消費支出:5万2433円
- 諸雑費:2万2125円
- 交際費:2万3888円
- 仕送り金:1040円
■うち非消費支出:3万356円
- 直接税:1万1162円
- 社会保険料:1万9171円
家計収支
- ひと月の赤字:3万4058円
- エンゲル係数(※消費支出に占める食料費の割合):29.8%
- 平均消費性向(※可処分所得に対する消費支出の割合):115.3%
この世帯の場合、毎月の収入は25万2818円、そのうち約9割(22万5182円)を社会保障給付(主に公的年金)が占めています。
一方で支出の合計は28万6877円。そのうち消費支出(いわゆる生活費)が25万6521円、非消費支出(税や社会保険料など)が3万356円でした。
またエンゲル係数は29.8%、平均消費性向は115.3%。この夫婦世帯の場合、毎月3万4058円の赤字が発生し、主に貯蓄の取り崩しなどでカバーしていくことになるでしょう。
6. まとめにかえて
70歳代世帯の貯蓄事情をのぞいた後、シニア世代の年金受給事情や、リタイア夫婦世帯の家計収支データについてもみてきました。
厚生労働省によると、「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」である健康寿命は、男性72.57歳、女性75.45歳です(2022年時点)。
一方で、平均寿命は男性81.05歳、女性87.09歳(いずれも2022年時点)。健康寿命と平均寿命の差は、医療費や介護費などがかさむ世帯が増える時期。貯蓄の取り崩しフェーズにある世帯が多数派になる期間と言えそうです。
人生100年時代と呼ばれるいま、健康寿命と資産の寿命はセットで延ばしていけたら良いですね。働き盛りの現役世代のころから、預貯金・保険・投資をバランスよく組み合わせたポートフォリオを意識していきたいものです。
7. 豆知識【老齢年金】繰上げ受給・繰下げ受給の基本《受給は何歳から?年金額はどう変わる?》
一般的な老齢年金の受給開始年齢は65歳ですが、「繰上げ受給」で前倒しする方法と、「繰下げ受給」で後ろ倒しする方法を選ぶことができます。
受給開始時期や、年金額の減額率・増額率についても整理しておきましょう。
7.1 繰上げ受給
- 60歳から65歳になるまでの間で受け取り始める
- 原則として「老齢基礎年金・老齢厚生年金」はセットで繰上げ請求が必要
- 繰り上げた月数に応じて年金が減額される
- 減額率:繰り上げた月数×0.4%(最大24%)
7.2 繰下げ受給
- 65歳で受け取らずに「66歳以後75歳まで」で受け取り始める
- 老齢基礎年金と老齢厚生年金は別々に繰下げが可能。どちらか一方のみ繰下げすることできる
-
繰り下げた月数に応じて年金が増額される
-
増額率:繰り下げた月数×0.7%(最大84%)
-
なお、いったん決まった「繰上げ受給の減額率」「繰下げ受給の増額率」は、生涯適用されます。繰上げ受給をした場合、65歳以降も減額された年金額が続く点には留意が必要です。
また、特別支給の老齢厚生年金には繰下げ制度は設けられていません。
参考資料
- 厚生労働省「健康寿命の令和4年値について」
- 厚生労働省「令和5年簡易生命表の概況」
- 金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査](令和5年)」
- 厚生労働省年金局「令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
- 総務省「家計調査報告 家計収支編 2023年(令和5年)平均結果の概要」
吉沢 良子