少し前からさまざまな媒体で推奨されている「叱らない子育て」。しかし、その名前だけが独り歩きしている感は否めません。また、いたずら盛りの子どもを持つママとしては「叱らないで済むなら、そうしたいわよ!」と思わず叫びたくなってしまいます。
なんだか腑に落ちない…という声も聞かれる、叱らない子育て。今回は、叱らない子育てに感じるモヤモヤの正体を探ってみたいと思います。
それ、失敗なんじゃないの?
賛否別れる叱らない子育て。まずは、「叱らない子育てにモヤモヤさせられた」というママの体験談をいくつかご紹介しましょう。
「ママ友グループのひとりが、叱らない子育てを実践中。でも、その子って超がつくほどワガママ。お友だちのおもちゃは平気で奪うし、気に入らないことがあると、叩くわ蹴るわ。そんなことをしても、ママは決して動じず『あらあら、○○ちゃん。そんな言い方ママ悲しいわぁ~。ねぇ、いい子だからごめんなさいしましょうねぇ~』とニコニコ笑顔でその子に声をかけるだけ。『いやいや、そこは怒れよ…』と思ってしまいます」(5歳の男の子のママ)
「姉が叱らない子育て推進派。こちらに被害がなければ、どんな子育てしようと自由なんだけど…。お盆に実家に集まっていたとき、姉の子どもが勝手に包丁を触っていたんです。見かけたときにはゾッとして『何してるの、危ないわよ!』と声を荒げて包丁を取り上げたんです。当然子どもは号泣。すると姉は、あろうことか私に向かって『子どもがみんなの前で怒られるのって、どれだけプライドが傷つけられるか知ってるの!? この子に謝りなさいよ!』と逆ギレ。あきれてものが言えないとはこのことでした」(7歳の男の子のママ)
「幼稚園の子どものクラスメイトの両親が、叱らない育児をしているそうです。保護者懇談会でも堂々と、『うちの子はとてもナイーブで、叱ると委縮してしまい、心に傷を負ってしまうんです。うちでは叱らずに、話して聞かせるようにしていますので、先生も配慮をお願いします』と言ってのけたんです。しかし、その子はナイーブが聞いてあきれるくらいの暴れん坊。いつも他の園児を叩いたりつねったりしているんです。被害にあった園児の母が直接抗議しても、『わかりました。後でゆっくりお話ししておきますね』と、どこ吹く風。うちの子も何度も泣かされました。そんなこんなで私は叱らない育児に大反対です」(6歳の女の子のママ)
叱らない=しつけない、ではない
叱らない育児の被害者が後を絶たないのはいったいなぜなのでしょうか? それは、叱らない子育てを自分の都合のいいように解釈している人が多いから。では、本当の叱らない子育てとは、いったいどのような子育てなのでしょうか。
保育士の先生によると、本来、叱らない子育てとは「子どもが好ましくない言動を行ったとき、カッとする気持ちをおさえて冷静になる」ということ。子どもが何かしたときに、条件反射で「やめなさい!」「ダメじゃない!」なんて感情のおもむくままに怒鳴ったり叱りつけたりしないようにしよう、という子育て論なのです。
しかし、それを手前勝手に解釈して、「叱らない子育てとは、自由奔放に育てることである」と勘違いした人が増えてしまったのが悲劇の始まり。「叱らない」ということと「しつけない」ということは違います。子どもの言いなりになったり、子どもが何をしても許したりすることが親の愛情ではありません。
社会生活を送るに当たり、ルールやマナーを教えることこそ親の義務であり、そのためには子ども正しく叱ることもときには大切なのです。間違った「叱らない子育て」で育てられた子どもは、将来善悪の判断がつかなくなってしまう恐れがあります。気づいたときにはときすでに遅し…なんてことにならないように、叱るべきときはしっかりと愛情を持って叱ることができる、そんな親であり続けたいものです。
参考:【保育監修】叱らない子育てって、本当に子どもにいいの?どんな子どもに育つ?(たまGoo!)
君子危うきに近寄らず?
とはいえ、間違った叱らない子育てを実践している人々に、「あなたそれ、間違えていますよ」なんて言いにくいですよね。自分の都合のいい解釈で叱らない子育てをしている人には、近づかないことが一番なのかもしれません。人のふり見て我がふり直せ、ではないですが、我が子には愛を持った厳しさと冷静さで接していきたいものですね。
大中 千景