今週末からプロ野球日本シリーズが開幕

プロ野球は今週末から日本シリーズが開幕します。セ・リーグは広島カープ、パ・リーグはソフトバンク・ホークスが各々、クライマックスシリーズを勝ち上がってきました。日本一を目指す両チームの戦いに期待しているファンも多いでしょう。

しかし、その一方で、長くプロ野球を観てきた中高年のファンの中には、パ・リーグで優勝した西武ライオンズに大きく離されて第2位となったソフトバンク・ホークスが、日本シリーズに出場することに違和感を覚える人もいるはずです。

昨年はセ・リーグのペナントレースで第3位のDeNA・ベイスターズが日本シリーズに出場しましたが、2003年までは両リーグの王者同士の対決、名実ともに日本一決定戦という形が取られていたのです。

クライマックスシリーズ、セ・パ交流戦の目的は?

クライマックスシリーズは、パ・リーグが2004年から、セ・リーグは2007年から導入しました(注:パ・リーグの04~06年は現在とは異なるシステム)。そもそも、クライマックスシリーズ導入の目的は、優勝チームが大方決まった後も、シーズン終盤までファンの関心度を高めるためです。いわゆる“消化試合”を少なくして、観客動員に結びつけようということです。

実際、それまではシーズン終盤になると、優勝チーム以外はスタンドに空席が目立ち、最後の数試合はスタンドを無料開放するチームも珍しくありませんでした。

また、クライマックスシリーズとは別に、2005年からシーズン序盤に「セ・パ交流戦」を実施しています。普段はなかなか見られない対戦カードの実現、例えば“巨人対ソフトバンク”などが人気を呼んでいるようです。これも導入の目的は観客動員数の増加です。

2005年から入場者数は増加基調が続く

クライマックスシリーズが導入されてから13年が経過しましたが、クライマックスシリーズやセ・パ交流戦は観客動員数の増加につながっているのでしょうか?

結論から言うと、着実に効果を上げています。1試合平均の入場者数を見ると、セ・リーグは2005年の26,650人が2018年は33,183人へ、パ・リーグは同20,226人が26,376人へと増加しています。両リーグとも6,000人超の増加です。この間、東日本大震災の影響があった2011年~2012年はやや減少したものの、それ以外はほぼ一貫して増加基調にあります。

13年間で6,000人増加という数字に対しては“少ない”という見方があるかもしれません。しかし、人々の余暇や時間の使い方が多様化していることを勘案すれば、相応に評価していい結果ではないでしょうか。

女性ファン拡充をもたらした「カープ女子」効果

入場者数が増加した理由は、クライマックスシリーズやセ・パ交流戦の導入だけではありません。サイン会や握手会(AKBのようですが)といったファンサービスの拡充や、ネットやスマホによる情報提供なども功を奏していると考えられます。もちろん、プロ野球のレベルが向上していることや、スター選手の登場も見逃せない要素です。

しかし、近年の観客数増加の大きな牽引役の1つとなっているのは、女性観客数の増加でしょう。日本プロ野球機構は観客数の男女別比率を公表していませんが、女性比率が大きく上昇していることは容易に想像できます。一部報道では、プロ野球の観客に占める女性比率は4割弱に達しているともいわれます。

そして、プロ野球の女性ファン拡大の象徴となったのが、流行語にもなった「カープ女子」です。「カープ女子」とは、その名の通り、広島東洋カープの女性ファンを称するものですが、特徴としては、地元の広島のみならず、関西・関東も含めた全国レベルでの女性ファンを指しています。

これは、2009年に新本拠地球場(現在のマツダスタジアム)開設に際し、女性ファン拡充のプロジェクトがスタートしたことに起因しています。

広島カープの観客動員数は巨人と阪神を猛追

実際、広島カープの観客数は、2008年までセ・リーグ最少レベルでした。しかし、その後は増加ペースが加速し、セ・リーグ3連覇を達成した今年2018年は過去最高の約223万人を動員し、巨人(約300万人)、阪神(約290万人)に次いで第3位となっています。これで第3位は4年連続です。

ちなみに、2008年実績は、広島カープの約139万人に対し、阪神が約298万人、巨人が約288万人でしたから、その猛追ぶりが分かります。

もちろん、増加したのは女性ファンだけではないでしょう。また、巨人や阪神は本拠地のキャパシティ(収容人数)が上限にあることも考慮しなければなりませんが、広島カープの女性ファン拡充が着実に効果を上げていると考えられます。

「カープ女子」おそるべしというのは言い過ぎでしょうか。また、「カープ女子」効果に触発されたわけではないと思いますが、女性ファン拡充に注力し始めたDeNA・ベイスターズも2018年実績は過去最高、ヤクルト・スワローズも直近20年間の最高数字を記録しています。

日本ハムと楽天は減少に転じた2018年

一方で、2018年実績では、少し気になる結果も出ています。パ・リーグの日本ハム・ファイターズは5年ぶりの減少に転じ、楽天・イーグルスも8年ぶりの減少となりました。日本ハムは大谷選手が抜けたこと、9月に起きた震災が影響した可能性があります。楽天はシーズンを通して最下位に沈んだ成績不振が要因かもしれません。

いずれにせよ、男性・女性を問わず、黙っていても観客が入る時代は終わりました。プロ野球球団は、経営幹部も選手も一体となって、観客動員数増加に向けた努力をする必要があると言えましょう。

葛西 裕一