働く女性の増加と働き方の多様化により、出産後も仕事をすることが当たり前の世の中になってきています。その一方で、「マタハラ」(マタニティ・ハラスメント)など妊娠・ 出産・育児への職場の理解不足や対策が遅れている現状も明らかになっています。働く女性全てに産休を取得する権利があります。手続きを会社任せにせず前もって自ら知り、動くことも必要です。今回は産休の仕組みや申請方法、関連するお金の流れについて把握しましょう。
産休の仕組みとは
「産休」とは、正式には「産前休業」及び「産後休業」と呼ばれる長期休暇のことです。労働基準法で定められた正当な制度です。母体の保護を目的として、一定期間の休業が認められています。
その産休ですが、産前休業と産後休業とでは取得できる期間が異なります。
- 産前休業は出産予定日の6週間前から
- 産後休業は出産翌日から8週間まで
上記が取得可能となっています。
ただし、双子以上の場合は14週間前から産前休業を取得することができます。
また産後休業については、出産後6週間が過ぎていれば医師の許可のもとで復職することも可能です。
ちなみに、出産予定日が遅れても産後休業がその分差し引かれるようなことはなく、実際に出産するまでは産前休業と見なされます。
産休中に貰えるお金はいくらか
産休中は会社の健康保険に加入していればそこから出産手当金を貰うことができます。
出産手当金は、1日当たり標準報酬日額(支給開始日以前の継続した12ヶ月間の各月の標準報酬額を平均した額)の3分の2の金額となっています。産休を取得した日数分貰えますが、最大で98日分(出産日以前42日から出産の翌日以降56日目まで)、多胎出産の場合は154日分(出産の日以前98日から出産の翌日以降56日目まで)となっています。
また、健康保険加入者が出産した時には、申請により出産一時金が支給されます。出産育児一時金としては、赤ちゃん1人につき42万円が支給されます。詳しくは自身が加入する健康保険組合に問い合わせてみるのがよいでしょう。
産休で貰えるお金の申請方法
まず、産休に入る前に所定の申請手続きを行う必要があります。勤務先の総務部や健康保険組合などに必要書類を提出するケースが多いと思います。ただ、具体的な手続き内容や書式などは会社ごとに異なるので、いざという時に備えて確認しておきたいところです。
また、出産育児一時金は、「直接支払制度」と「受取代理制度」という2種類の受け取り方法があります。
直接支払制度の場合は病院が健康保険組合と直接やり取りをして費用の授受を行ってくれるので、個人としては特別な手続きが必要ないケースがほとんどです。
一方、受取代理制度とは、被保険者が出産する医療機関などを代理人として定め、出産育児一時金の受取を医療機関に委託する制度で、直接支払制度を導入していない小規模な医療機関などで出産する被保険者において、出産費用と出産一時金との差額だけが医療機関に支払われることになります。ただし、出産前に受取代理申請書が必要となります。
社会保険料の免除申請も必要
産休中は社会保険料の免除が認められているため、その申請手続きが必要です。健康保険や厚生年金保険の被保険者は、産休中に産前産後休業取得者申出書を提出しなければならないので忘れずに作成してください。
実際の手続きは会社が行ってくれますが、提出する時期などによっては追加で別の書類が必要になることもあるので注意が必要です。
それでも困ったときには公的機関や弁護士へ相談も
妊娠中は体調など様々なことが変化します。場合によっては、つわりがひどい方もいるでしょう。産休のことなどまだ考えられない方も多くいるかと思いますが、いざ産休を取得しようとすると渋い顔をされることもあるでしょう。
周囲に協力をあおりながら、早めに申請方法を確認するのが良いと思います。また困った際には、労働局雇用環境・均等部や弁護士などに相談しましょう。
参考資料
- 厚生労働省資料「必見 子育てをしながら働き続けたい パート社員 派遣社員 契約社員 あなたもとれる産休&育休」
- 全国健康保険協会「出産で会社を休んだとき」
- 全国健康保険協会「子どもが生まれたとき」
- 世田谷区「出産一時金の支給」
- 味の素健康保険組合「出産育児一時金 受取代理制度について」
- 日本年金機構「産前産後休業保険料免除制度」
- 「2015年 非正規マタハラ白書 全データ」
LIMO編集部