日経平均株価の大幅下落。「落ちてくるナイフはつかむな」か

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2018年10月11日の株式市場は、日経平均株価が終値ベースで対前日終値比で915円18銭値を下げ、結局2万2590円86銭で終えた。下落率でいえば同▲3.89%も下落したことになる。また、TOPIX(東証株価指数)は1701.86ポイントと同じく▲3.52%の下落となった。では、一体どのようなセクターや銘柄が下落したのであろうか。そして今後どのような姿勢で株式市場と向き合えばよいのであろうか。

大幅下落時に見える投資家に好感される株、嫌らわれる株

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機関投資家のようなプロ投資家はTOPIXのような株価指数の動きに対して個別株がどう動いたかで「アウトパフォームした」もしくは「アンダーパフォームした」という表現を用いる。個別株の株価がTOPIXの変化率を上回っていれば「アウトパフォーム」とし、下回っていれば「アンダーパフォーム」という。

たとえば、本日のイオンの株価は対前日終値比で▲0.93%、昨日の決算発表やスーパーの再編案などの発表を受け、日経平均株価やTOPIXの下落率よりも下げ幅が小さい。イオンの株価は本日は「アウトパフォーム」したといえる。決算内容や会社の施策を好感した格好となった。

一方で、ファナックは同▲6.84%下落し、TOPIXに対して大きく「アンダーパフォーム」している。昨日、安川電機の連結業績予想が「半導体投資の減速および中国市場の弱含み」を理由に下方修正されている。そうしたこともあり機械関連株の売りが加速したと言えよう。機械関連銘柄として、コマツが同▲5.12%下落、三菱電機が同▲5.11%、キーエンスが同▲4.99%下落となっている。いずれもTOPIXの下落幅を上回って下がっている。

セクターごとに見えてくる投資家心理

さて、本日、大きく株式市場が下落した中で好感されたセクターは、「小売業」、「空運業」、「水産・農林業」、「電気・ガス業」、「不動産業」などである。

先にふれた小売業は、GDPのうち国内消費が多くの比率を占めることから分かるように、私たちが生活する上で欠かせない商品やサービスを提供する産業である。景気によって消費者動向は影響されるので個別企業ごとに見極める必要があるが、機械株ほどにはボラティリティはないであろうという投資家の動きである。

また海外株式市場が下落する中で円高傾向になることが多いが(今回もその動きとなっている)、結果として小売業の輸入調達がしやすくなるという思惑も働き、小売業がアウトパフォームしているとみられる。

一方、大きく売られたセクターはどのセクターであろうか。

セクターとしては、「石油石炭製品」、「鉱業」、「機械」、「精密機器」、「非鉄金属」といった景気敏感セクターが売られている。米国の株式市場の大幅下落により、景気の先行きに関して不透明感も漂い、WTI原油先物も下落している。

先に好感されたセクターとしてあげた空運業や電気・ガス業は化石燃料を事業として必要とするセクターが対照的にアウトパフォームしているというのも見逃せない。

このようにしてみると、当然といえば当然であるが、景気悪化に対して敏感なセクターを売り、そうではないセクターをより評価するというセクターアロケーションが進んでいると見てよいであろう。

「落ちてくるナイフはつかむな」か

米国の株式市場に端を発した本日の国内株式市場の大幅下落であるが、相場の格言に「落ちてくるナイフはつかむな」というものがある。これは、株価が下落する最中に、もうよいであろうと投資をすると、投資後にもさらに株価が下落し、思わず損失が拡大するということを表現した格言である。

では、今回の場合にはいまだ「落ちてくるナイフ」なのであろうか。

日本株を専門とする機関投資家の間では「TOPIXが800では黙って買い、1800では黙って売り」ということが言われることがある。これは過去のTOPIXの動きを見て経験則として認識しているのが背景だ。

今回の場合もTOPIXが1800を超えたところで大きく下落した。もっとも、日本経済全体が成長していれば株価指数も過去のレンジにとらわれる必要もないのであるが、日本経済が過去において、循環はするけれども大きくは拡大をしてこなかったことから、先のようなTOPIXのレンジを念頭に置く機関投資家が多いのも事実だ。

現時点では、今回の下落がITバブル崩壊やリーマンショックのような性質のものだとは思えないが、今後景気の拡大に対してこれまで以上の成長期待が持てないのであれば、バリュエーションの調整も含めて、不安を持つ投資家も出てこよう。

株式市場の株価調整時に機関投資家はどのように動くのか

こうした場合に、機関投資家はどのように動くのであろうか。

一つにはバリュエーションの高い銘柄を避けて、株価調整がより影響を受けにくいバリュエーションの低い銘柄にシフトする。いわゆる「グロース株」から「バリュー株」へのシフトだ。これまで勢いよく株価が上がってきたバリュエーションが高いベンチャー企業や新興株が、特段業績に対して不透明感がないにもかかわらずこうした局面で大きく売られるのはそのためだ。

また、いざというときのために流動性の小さな銘柄も避けられる傾向にある。もともと流動性が小さいので売り圧力が高まると下落幅も大きくなるのも当然だ。

加えて、景気が悪化し、その状況が長引くとなると、業績への影響は避けられない。そうした際に業績が赤字となるような企業-利益率が低い企業は避けられるし、財務体質が良くない企業-株主資本比率が低い企業が避けられる。

平時は「ROEを高めろ。そのためには財務レバレッジをこれまで以上に高めろ」や「増配しろ。自己株買いをしろ」と声高に叫んでいた機関投資家もこのときばかりと株主資本比率の高い銘柄に殺到する。数式上で株主資本比率が低い方がROEは高まるのにだ。

買いのチャンスはどこにあるのか

もっとも、景気敏感株の扱いに長けているプロ投資家は、過去のバリュエーションを参考に現在が過去のサイクルと比較してどの程度まで売り込まれたかというのを目安に買いのチャンスをうかがう。

また、敏腕のファンドマネージャーはブルーチップと呼ばれる優良の成長株を仕込むには良いチャンスとばかりに自分の目標株価を持ち、株価とにらめっこをしている。

株価の調整は始まったばかりだが、特段大きなニュースやイベントがなければ調整はすぐに終わってしまう可能性もある。明日以降の動きから目が離せない。

泉田 良輔

参考記事

泉田 良輔

2013年に株式会社ナビゲータープラットフォーム(ナビプラ)を共同創業。ナビプラでは個人投資家のための金融経済メディア「Longine(ロンジン)」を立ち上げ、編集長に就任。大学卒業後、日本生命・国際投資部では外国株式運用のファンドマネジャー、その後フィデリティ投信・調査部や運用部にてテクノロジーセクターの証券アナリストや小型株ファンドのアシスタント・ポートフォリオ・マネージャー。慶応義塾大学商学部及び同大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科修了。著書に『テクノロジーがすべてを塗り変える産業地図』、『銀行はこれからどうなるのか』、『Google vs トヨタ 「自動運転車」は始まりにすぎない』、『日本の電機産業 何が勝敗を分けるのか』。ネットメディアにおいては「日経BizGate」での連載「泉田良輔の新・産業鳥瞰図」「東洋経済オンライン」「プレジデント」などへの寄稿も行う。東京工業大学大学院非常勤講師。産業技術大学院大学講師。