シャープ㈱は、自社開発した国産フレキシブル有機ELディスプレーを搭載したスマートフォン「AQUOS zero」を年内に発売すると発表した。国内企業ではジャパンディスプレイなども有機ELを開発中だが、国産スマホに搭載されるのはこれが初めて。
これに加えて、シャープは前モデルが200万台超のヒット商品となったIGZO液晶ディスプレー搭載スマホ「AQUOS sense 2」も発表。これら2機種を武器に、法人への販売も強化して、国内のAndroid搭載スマホ市場シェアを40%超にまで引き上げる考えだ。
動画やゲームのヘビーユーザーに最適
AQUOS zeroは、自社国内製6.2インチフレキシブル有機ELディスプレーを搭載し、解像度WQHD+(2992×1440画素)を実現した新たなフラッグシップモデルだ。キャリアや価格は未公表。有機ELの採用によって100万:1の高コントラストやDCI-P3規格を100%満たす広色域を実現し、高画質化技術「リッチカラーテクノロジーモバイル」を有機EL向けに改良してリアルで色鮮やかな映像を映し出せるようにした。CPUにはQualcomm Snapdragon 845を採用し、メモリーには6GB RAMと128GB ROMを搭載した。
有機EL搭載と並ぶもう1つの目玉が、端末の軽さだ。6.2インチで電池容量が3130mAhありながら、重量はわずか約146g。アップルの4.7インチiPhone 8の148gよりも軽く、発表会では風船4つで浮かぶデモも実演した。
軽さを実現したのは、液晶から有機ELへディスプレーを変更したことでバックライトをなくしたことに加え、ボディーをアルミからマグネシウムに変更したこと、そして背面パネルに現在主流のガラスではなく、鉄の5倍の強度を持つ帝人のアラミド繊維「テクノーラ」を採用したことが大きく寄与した。ちなみにマグネシウムボディーは、ダイキャストから24の切削・加工工程を経て作製しており、一般的なアルミ構造より41%軽量化(AQUOS R2比)できたという。
AQUOS zeroは「エンターテイメント・フラッグシップ」を標榜したモデルで、最先端のHDR映像技術「Dolby Vision(ドルビービジョン)」と立体音響技術の「Dolby Atmos(ドルビーアトモス)」を採用。加えて、充電ICを並列で搭載し、充電中の発熱を抑制・分散できる「パラレル充電」を初搭載した。一方で、メーンカメラは、他社のフラッグシップがデュアルやトリプルであるのに対し、AQUOS zeroはシングル。Micro SDカードスロットも省いた。まさに、充電しながら動画やゲームをガンガン楽しみたい人に向く端末だ。
有機ELは堺と三重で量産化
AQUOS zeroの発表会で、有機ELについては「薄型、曲がる、高コントラストは液晶では実現できないうえ、軽量化が新たなトレンドになると考えて採用した。自社生産の特性のよく分かったデバイスを使いたかった」と採用理由を述べるとともに、「(当社の有機EL)は事業になるレベルになった」とディスプレーの品質に自信をのぞかせた。
シャープは16年9月に有機ELへの投資を判断し、堺事業所や三重事業所に数百億円を投じて量産体制を整備した。LTPSバックプレーンを三重事業所、有機EL発光層の蒸着およびバックプレーンとの貼り合わせとモジュール組立を堺事業所で手がけている。有機ELの真空蒸着装置はアルバック製、蒸着用のメタルマスクは凸版印刷製を採用しているとみられる。
有機ELの現有生産能力は決して大きくないが、今後について「明言はできないが、当社はこれまでも(液晶などの)コアデバイスを外部に供給してきた歴史があり、今後それと同様の展開が考えられる」と述べ、将来の外販展開に含みを持たせた。
電子デバイス産業新聞 編集長 津村 明宏