4. 「老後のお金を増やす」今から考えておきたい6つの方法
前章では、60歳代~90歳以上の平均年金月額を確認しました。
国民年金と厚生年金では、平均年金額に大きな開きがありますが、この差が世帯収入の格差につながる可能性があります。
たとえば、自営業の夫婦二人世帯であれば、二人ともが老齢基礎年金を受け取るため、世帯の収入は合計で14万円ほどです。一方、厚生年金に加入する夫婦共働き世帯であれば、世帯収入は30万円弱になります。
世帯によって、生活に必要な金額は異なるとはいえ、収入を得る手段が限られるシニアにとって、この差は大きいものです。もし老後の生活費が足りないと感じたら、老後のお金を増やすための方法を早めに考えておくことをおすすめします。
年金を増やす、貯蓄を増やす方法は、おもに下記の6つの方法があります。
- 年金の繰下げ受給
- 年金の任意加入
- 国民年金基金に加入
- 付加年金に加入
- NISAやiDeCoを活用した資産運用
- 可能な限り、長く働く
各項目を順番に見ていきましょう。
4.1 年金の繰下げ受給
65歳で年金を受け取らず、66歳以後75歳までの間で繰り下げると、年金を増額することができます。ひと月繰り下げるごとに、年金が0.7%ずつ増加し、請求時の年齢が75歳だと増加率は84%になります。
増額率は一生変わらず、老齢基礎年金と老齢厚生年金を別々に繰り下げることもできます。ただし、特別支給の老齢厚生年金は繰下げ受給ができません。
4.2 年金の任意加入
国民年金保険料に未払いの期間があるなどして、老齢基礎年金の受給資格を満たしていない方、あるいは老齢基礎年金を満額受給できない方は、60歳以降でも国民年金に任意加入して保険料を納めることができます。
遡って加入することはできませんが、納付月数が480月に満たなければ65歳まで加入できるので、年金額を増やすことができます。後ほど説明する付加年金にも加入できます。
4.3 国民年金基金に加入
自営業やフリーランスには厚生年金にあたる2階部分がありません。この2階部分を補うのが国民年金基金です。加入は任意ですが、老後の年金が心配な方は検討してみましょう。
掛金額によって将来受け取る年金額が決定し、年金は終身にわたり受け取ることができます。受け取り期間を指定することも可能です。税制上の優遇もあるので、拠出時からメリットが得られるのも魅力です。
ただし、いったん加入すると、自己都合での途中脱退や解約はできません。付加年金との併用も不可です。iDeCoとは併用できますが、掛金の合計は6万8000円を超えないように設定する必要があります。
4.4 付加年金に加入
付加年金とは、国民年金被保険者が加入できる制度で、国民年金保険料に月400円を上乗せして支払うと、受け取れる老齢基礎年金に付加年金が上乗せされます。
上乗せ額は「200円×付加保険料を納めた月数」なので、2年で元が取れる、お得な制度と言えるでしょう。
4.5 NISAやiDeCoを活用した資産運用
NISAとiDeCoは、いずれも将来の資産形成を支援する制度です。長期・分散・積立投資をおこなうことで、リスクを減らしながら、効率的な運用を目指すことができます。
資産形成のための投資は長期運用が基本ですから、20年、30年、40年と継続して運用することをおすすめします。年金生活になったら、運用は継続しつつ、一部を解約して使うことも可能です。
税制の優遇などはiDeCoの方が充実していますが、NISAは中途解約の制限がなく、商品のラインナップもiDeCoより豊富です。両方を併用することも可能です。
4.6 可能な限り、長く働く
働いて収入を得ることは、資産を増やす上では最も確実な方法です。働くことで生活費の大半、あるいは一部でも賄えれば、貯蓄が減るスピードを遅らせることができるだけでなく、年金の繰下げ受給も検討しやすくなります。
現在、在職老齢年金の見直しも進められており、働くシニアの収入アップも見込まれています。
5. 年金受給者の生活支援制度もある!上手に利用して年金額アップを
現在、老齢基礎年金・障害基礎年金・遺族基礎年金のいずれかを受給中で、所得が一定水準以下など、支給要件を満たしていれば、年金と一緒に「年金生活者支援給付金」が支給されます。一度手続きをすれば、要件に該当するかぎり、支援金を受け取ることができます。
このように、年金額をアップするには、いくつかの方法があります。活用するかしないかで、老後のお金の心配が変わってくるので、それぞれの制度を理解しておくことが大切です。
とくに支援金制度や年金額は、今後も新設、見直しや改正が見込まれます。できる限り、チェックしておきましょう。
老後の生活に不安がある方は、まず自分が受け取れる年金額や、老後のお金がいくら必要になるかを計算して、どのような準備が必要なのか考えてみてはいかがでしょうか。