はじめに
自由な立場で働きたい、様々な事情によりオフィスに出向いての仕事が難しい、などの事情から、会社に所属しない働き方を選択している人がいます。この記事では、そのような働き方のひとつである業務委託について、ご紹介いたします。
目次
1. 業務委託とはどんな働き方?
2. 業務委託と業務請負の違いとは?
3. 業務委託を受けて働く場合のメリットとは
4. 業務委託を受けて働く場合のデメリットとは
5. 業務委託の契約書で確認するべき点とは
6. 業務委託で働く前に準備することは?
7.業務委託の求人はどのような業界、職種で募集しているの?
1. 業務委託とはどんな働き方?
一般的に業務委託とは、企業が社内では処理が出来ない業務を外部の業者や個人に委託するという契約を指しています。
例えば、プロジェクト遂行のために、一時的にデザイナーやエンジニアなどに代表されるような、専門知識を要する技術者が必要になったとしましょう。企業がそのためだけに社員を雇うとなると、求人広告や社会保険料の負担など、非常にコストがかかることになります。また、いざ雇ってみても、プロジェクトが頓挫した結果、その人に与える業務が何もないという事態が起こることも充分に考えられます。そんなときに、よくとられるのが、一時的に業務を外部の業者や個人に任せてしまうという方法、すなわち業務委託というわけなのです。
つまり、このような形で企業から業務を依頼される個人にとって、業務委託とは、会社に雇われるのではなく、対等な立場で仕事を請け負う働き方、ということができるでしょう。
2. 業務委託と業務請負の違いとは?
業務委託と似た言葉として、業務請負という言葉があります。一見同じようにも見えますが、これらの違いとは何でしょうか。
業務委託
企業から依頼された作業をすることを指します。この場合、依頼された作業に対して報酬が支払われます。
業務請負
企業が希望する成果をあげることを指します。この場合、依頼された仕事による成果に対して報酬が支払われます。
つまり、業務委託では作業の結果は問われないが、業務請負では結果がでないと報酬を受け取ることができないということもありうるのです。
3. 業務委託を受けて働く場合のメリットとは
企業から業務委託を受けて働くことについてのメリットを考えてみましょう。
時間や働く場所に自由がきくこともある
企業に出向いて依頼された作業を行わなくてはいけない場合は別ですが、持ち帰りが可能な作業の場合、いつどこで作業をしてもよいというケースも多くあるようです。このため、契約によっては、時間や場所をとわれず、自由に働くことができます。
人間関係のストレスが少ない
自宅でも作業可能という案件の場合、対人関係がないため、人間関係のストレスがほとんどありません。また、企業に出向いて依頼された作業を行う場合についても、契約期間だけしか出社しないため、トラブルが起きるほどに深くかかわるまでには至らず、人間関係のストレスとは無縁、ということも多いようです。
4. 業務委託を受けて働く場合のデメリットとは
一方、企業から業務委託を受けて働くことにはデメリットもあります。
労働基準法の対象外になってしまう
基本的に業務委託を受けて働く場合は、労働基準法の対象外となります。具体的にいえば、社員として雇用契約を結んでいる場合、企業側は長時間労働による残業代や割増賃金を社員に支払う必要がありますが、業務委託をした場合、長時間労働が発生しても受託者に対して残業代を支払う必要はないとされています。
確定申告や保険料の支払いを自分でやらなければならない
個人で業務委託を受けて働く場合、多くの人は個人事業主として活動することになります。すべてを会社側にやってもらうことができるサラリーマンとは異なり、個人事業主は、自分自身で国民健康保険と国民年金に加入し、それらの保険料を自分自身で納めなくてはいけません。また、所得税の申告においても、毎年決められた時期に確定申告の手続きをし、自分自身で金融機関に出向いて税金を納入する必要があります。
自分で仕事を見つけなくてはいけない
業務委託を受けて働く場合、ひとつの仕事が終わったら、自動的に次の仕事が舞い込んでくる・・・というようなわけにはいきません。このため業務委託を受けて働く人の多くは、あまり期間があかないように、自分自身で仕事を見つけて、スケジュールを埋めていくということを行います。このとき、業務委託のマッチングサイトや、求人サイトなどを利用して探すだけではなく、場合によっては、自分自身で営業をして仕事を開拓するということも必要となります。
5. 業務委託の契約書で確認するべき点とは
業務委託を受ける際は、業務を委託する企業と受託者の間で契約書が取り交わされることとなります。作業方法、報酬などの条件等は事前に口頭やメールで打ち合わせておくことが多く、契約書はそれを書面に起こしただけ・・・と簡単に署名捺印をしてしまう人も多いのですが、契約書には成果物の帰属先や仕事の内容についての守秘義務など、わざわざ打ち合わせてはいない内容についても書かれていることがあります。面倒でも、ひととおり内容には目を通しましょう。以下に、業務委託の契約書で確認しておきたい項目をピックアップしてみました。
業務委託か業務請負か
業務委託契約だと思って受託したら、企業側は業務請負契約のつもりだったということもあります。先にも説明したように、後者の場合、仕事の成果によって報酬が変わってしまう可能性もあります。あとで慌てることがないよう、契約書の段階できちんと把握しておきましょう。
作業内容や納期
「どこまでが依頼された作業となるのか。」「また納期はいつか。」という点についても、契約書をしっかりと確認したほうがよいでしょう。例えば、システム開発を受託したとして、プログラムを作るところまでが依頼された作業なのか、その先のドキュメントの作成までが依頼された作業となるのかでは、工数が大幅に違ってくることになります。
仕事にかかる経費
一般的な業務委託契約では、通勤費や通信費などの仕事にかかる経費は受託者持ちとなります。しかし、遠方への移動をともなう仕事や、特殊な機材を使用する仕事などの場合は、報酬への上乗せという形で支払ってもらえることもあります。この点についても、契約書を取り交わす際に、きちんと確認することをおすすめします。
報酬の支払い方法と時期
多くの場合、報酬は銀行振り込みとなりますが、企業によっては金融機関が限定されることもあります。また、支払のタイミングは翌月というケースが殆どですが、締のタイミングや企業側の資金繰りの関係上、報酬を翌々月払いとしている場合もあります。認識の相違で「報酬がなかなか振り込まれない。」というトラブルに発展することもありますので、これらの点についても、しっかりと契約書を確認しましょう。
6. 業務委託で働く前に準備することは?
業務委託を受けて働くのは初めて、という人は、以下の準備をしたほうがよいでしょう。
開業届の提出
税務署に出向いて開業届を提出し、個人事業主として活動する旨の届け出をしましょう。また開業届とともに青色申告申請書を出すことで、確定申告の際に、税金の優遇措置がうけられる青色申告ができるようになります。なお、開業届を提出せずに仕事をしても、特に罰則はありませんが、その場合の確定申告は、税金の優遇措置のない白色申告をすることになります。
確定申告の準備
業務委託を受けて働く場合、報酬は事業所得の扱いとなり、確定申告をする必要があります。「扶養範囲内に抑えるから別にいいや。」と思っている人もいるかもしれませんが、被扶養者であるかないかと、確定申告をするかしないかは別の話です。事業所得により利益が発生した場合は確定申告をするもの、と思っていたほうがよいでしょう。なお、確定申告をするにおいて、税法上の優遇措置が受けられる青色申告を行う場合は、帳簿をつけ、期初と期末に貸借対照表や損益計算書といった書類を作成することになります。簿記の知識がないと難しい場合がありますので、その場合は、個人事業主用の会計ソフトの導入を検討してもよいでしょう。
パソコンやネット環境の準備
パソコンを使う仕事でなければ必須ではありませんが、委託者である企業との連絡をインターネット経由で行うというケースが増えています。インターネットにつながるパソコンを準備しておくことで、新たなビジネスチャンスを得ることができるかもしれません。なお、パソコンにはセキュリティソフトを忘れずに入れておくことをおすすめします。また、仕事関係の連絡を確実に把握するためにも、メールアドレスは、プライベートで使っているものとは別に、仕事用のものを新たに取得しておきましょう。
7.業務委託の求人はどのような業界、職種で募集しているの?
近年、コスト削減を目的として、社内のコア部分以外の業務を外部に業務委託する企業が増えつつあります。このため、企業が業務委託する仕事は、特殊な技能を必要とするものだけではなく、給与、経理、採用業務などといった業務まで、実に多岐に渡ります。しかし、受託者が個人というレベルで見ると、やはり募集が多いのは。IT系のエンジニア、webデザイナー、データ入力、ライター、翻訳者といった経験やスキルが必要な職種となるようです。
なお、業務委託の求人を見ていると、未経験OK営業や集配業務、調理スタッフ、清掃スタッフなど、一見、「パートやアルバイトではないの?」というような職種が紛れていることがあります。これは、仕事の内容はパート/アルバイトとかわりませんが、採用になった場合は、個人事業主として、企業と業務委託契約を結んで働くことになるという求人です。雇用契約とは異なりますので、注意しましょう。
おわりに
企業と対等な関係で契約を結んで働く業務委託は、非常に魅力的な働き方といえます。その一方で、自分自身で仕事を探す必要がある、確定申告をしなくてはいけないという側面もあります。価値観の多様化にともない、人々の働き方も多様化してきました。会社という枠にとらわれずに働いてみたいという人は、業務委託という働き方も選択肢の一つとして検討してみてもよいのではないでしょうか。
LIMO編集部