GPU大手の米エヌビディアが発表した2019年度第2四半期(18年5~7月)決算は、仮想通貨向け半導体需要の減速を示す内容となった。17年末から18年初頭にかけて、異常値ともいえる「マイニング(採掘)フィーバー」を半導体業界に巻き起こしたが、ビットコインをはじめとする通貨の下落に伴い、一気に需要が減退した。エヌビディアからは、年内の需要は「基本的にゼロ」(ジェンスン・ファンCEO)という発言も飛び出しており、当面の需要回復は望めない状況だ。
ゲーム、データセンター向けは好調
同社が発表した19年度第2四半期業績は、売上高が31億2300万ドル(前四半期比3%減/前年同期比40%増)、営業利益が11億5700万ドル(同11%減/同68%増)となり、前四半期比では減収減益となったものの、前年同期との比較では大幅な増収増益を記録した。
部門別では、ゲーム用途が同5%増/同52%増の18億ドルと好調をキープ。eSports市場の拡大などを受け、ノートブック、デスクトップ、ゲーム機すべてのセグメントで前年同期比2桁台の増収を達成。とりわけ、PascalベースのデスクトップGPUが好調だった。
また、データセンター向けも同8%増/同83%増の7.6億ドルと予想を上回る伸びとなった。主力製品の「Tesla V100」が世界の主要なクラウドプロバイダー、およびハイパースケーラー事業者に採用、出荷を伸ばしている。
車載もゲームやデータセンター向けには劣るものの、同11%増/同13%増の1.6億ドルと着実な成長を遂げている。18年7月にはダイムラー、ボッシュと自動運転分野での提携を発表。レベル4~5の実現に向け、19年から本社のあるシリコンバレーでパイロットテストを開始する予定だ。
1億ドルへの減収予想すら大きく下回る
多くの分野で成長を遂げるなか、誤算だったのが仮想通貨向けだ。仮想通貨のマイニングでは演算用チップとして、GPUもしくはASIC(特定用途向け集積回路)が用いられており、GPUに関してはエヌビディアとAMDが主要サプライヤーを担っている。
仮想通貨向けは、前四半期(2~4月)に2.89億ドルの売り上げを記録。第2四半期は需要減速から1億ドルに落ち込むと想定していたが、結果はそれをはるかに下回る1800万ドルとなった。
同社は決算説明の場で、仮想通貨向けのマイニング需要の年内見通しに関して「基本的にゼロ」を想定しており、今後の需要予測が立てられていないことを吐露した。
「当てにならない」が改めて浮き彫りに
AMDも先に発表した18年第2四半期(4~6月)決算において、仮想通貨向けをはじめとするブロックチェーン関連の需要が減少していることをコメントしている。また、これらチップの生産を請け負う台湾TSMCの業績からも、仮想通貨向けの需要減退がうかがえる。
17年末から18年にかけて一気に拡大した仮想通貨のマイニング需要。半導体業界でも新たなアプリケーションの登場として大きな期待を集めていたが、足元の需要減速、さらにはスマートフォンなどのコンシューマー製品以上にボラティリティー(変動性)が高い現実から、「当てにならない」性格が改めて浮き彫りになった格好だ。
電子デバイス産業新聞 副編集長 稲葉 雅巳