夫のことは心から愛している、現状に何の不満もない…。でもふとしたときに思い出してしまう、昔の彼氏、好きだったあの人。結ばれない運命を呪った日々や、悲しい結末に心が引き裂かれたけれど、今思い出すのは幸せな思い出ばかり。きっと死ぬまで好きでいるでしょう…。今回はそんな「生涯一の恋」についてのお話です。

教えてください。あなたの「忘れられない恋」

最初に、30代~60代の既婚女性に「忘れられない人はいますか?」という質問を投げかけてみました。

「ずっと片想いだったサークルの先輩です。顔、声、性格、何もかもが理想でした。とてもかっこよくて優しい先輩は、とても人気があったので私なんか相手にしてもらえない…とはなから諦めていました。でも先輩が卒業してから、サークル仲間に『先輩、あなたのことが好きだったんだって』と聞かされて。今は優しい主人と愛する子どもに囲まれて幸せな毎日です。でも、ふと、『あの時勇気を出してどちらかが告白していたら…』と考えることがあります」(32歳/専業主婦)

「小、中学校とずっと好きだった初恋の人。今でも年に一度の同窓会で再会しています。会うたびに素敵に年を重ねている彼に魅かれています。今は顔を見て話せるだけで幸せ。きっと彼に一生片想いです」(42歳/パート)

「20代の頃、結婚の約束をしていた恋人に振られました。彼曰く『どうしても、画家になる夢が諦められない』とのこと。一度は彼についていこうと決心しましたが、両親の猛反対にあい、結局彼は私のもとを去って行きました。30歳のとき地元の新聞に、画家として活動している彼の記事が。その記事を切り取って、今でも大切に取っています」(52歳/公務員)

「高校のときに交際していた男性です。交際中に不慮の事故で亡くなりました。何度も後追いを考え、生きていく気力もなく、ただ涙を流す日々でした。『もう誰も好きにならない』と公言し、仕事に生きていました。彼はいつまでも10代なのに、私は今ではしわくちゃのおばあちゃん。あの世にいったらびっくりされることでしょうね」(65歳/主婦)

「他に好きな人ができたから、と5年も同棲していた恋人に突然振られました。あの時は自暴自棄で、彼を恨んだりもしたけれど、今となってはいい思い出。安いワンルームマンションで、派手な喧嘩をしながらもつつましく暮らした日々を、ときおり懐かしく思い出します」(46歳/主婦)

一世一代の恋の思い出

当時は辛い思いや悲しい思いもたくさんしたはずなのに…時間はそんな嫌な思い出を浄化してくれます。ドロドロした恋も、胸が引き裂かれそうになった恋も、年月というベールをかけると、すべて美しく、ほほえましい思い出に。そして、過去の恋愛があったからこそ今があるんですよね。

結婚して、子どもがいても忘れられない人がいる。それは決していけないことではなく、それだけ素敵な恋愛をしたという証拠なのではないでしょうか。思い出に無理やりフタをする必要はありません。ふとした瞬間に懐かしく思い出す。彼の顔を思い出したら、胸が温かくなると同時に、ほんの少しチクッと痛む…。それこそがまさに、一世一代の大恋愛を経験した証なのでしょう。

今さら彼とどうにかなりたい、というわけではない、あの思いを再熱させたい、というわけではない、でも、どこかでまた再会できたら…そんな気持ちを胸に秘めながら生きていくのもまた、素敵なことだと思います。

きっと彼に恋していた日々こそが青春なのでしょう。そして、一緒にならなかったからこそ美しい思い出のままで心の中で輝き続ける。これもまた、人生の醍醐味なのかもしれませんね。きっと相手の男性も、ふとした瞬間にあなたのことを懐かしく思い出していることでしょう。

生涯の恋人は一生の宝物

もしあのときああしていたら、あのときこう言っていたら…タラレバを考えて苦しくなってしまう時もあるけれど、それでも「あの人に会えてよかった」と思える。そんな日々はきっと何よりの宝物です。

彼との日々があったからこそ、今の自分がいる。大切な「生涯の恋人」に感謝の気持ちを持ち続けながら生き続けることができたら、女性として人間として、こんな幸せなことはないのかもしれません。

大中 千景