現役世代の方の中には、「老後生活は今の生活よりもお金がかからなくなるから、生活も何とかなるのでは」と思われている方もいるのではないでしょうか。

確かに、現役時代の生活は住宅ローンや教育費などお金が出ていくことも多いので、これらがなくなると考えると老後の生活費は減少できる可能性が高く思えます。

しかし、昨今では物価高騰などが生活に影響を与えています。株式会社帝国データバンクが2024年10月31日に公表した「食品主要195社」価格改定動向調査―2024年11月によると、11月の食品値上げは282品目にのぼり、11カ月ぶりに前年を上回る勢いです。

毎日の食費や光熱費などがかさみ、収支のバランスが昔と異なるにもかかわらず、年金の受給額は物価上昇ほどにあがりません。

こうした中、FPである筆者は多くの方から将来のお金についての相談を受けていますが、その多くが「年金だけでは不安」という声です。

ただし、その多くは「なんとなく不安」や「年金だけでは厳しそうだから」といったもので、具体的な話になるとよくわからないと答える方が多いのも事実です。

では、いずれ訪れる老後生活にはどのように備えたらいいのでしょうか。

本記事では、いま老後生活を送っている65歳以上・無職夫婦世帯のひと月の生活費や平均貯蓄額・年金月額」を確認していき、現状を知ったうえで今できる備えについて考えていこうと思います。

1. 世帯主が「65歳以上の無職夫婦世帯」の平均貯蓄額はいくら?

総務省統計局の資料によると、世帯主が65歳以上で無職の夫婦世帯の平均貯蓄額は2504万円でした。

【写真1枚目/全4枚】65歳以上・無職夫婦世帯の平均貯蓄額。勤労世帯も含む貯蓄額は2枚目で紹介

65歳以上・無職夫婦世帯の平均貯蓄額

出所:総務省統計局「家計調査報告(貯蓄・負債編)-2023年(令和5年)平均結果-(二人以上の世帯)」

平均貯蓄額の推移は下記の通りです。

【2018年から2023年までの平均貯蓄額の推移】

  • 2018年:2233万円
  • 2019年:2218万円
  • 2020年:2292万円
  • 2021年:2342万円
  • 2022年:2359万円
  • 2023年:2504万円

2018年から2020年まで、貯蓄額は2200万円台でしたが、2021年には2300万円台に上昇し、2023年には2500万円台に達しました。

シニア世代の貯蓄額の増加には、いくつかの要因が考えられますが、主な要因として以下の内容が挙げられます。

  • 年金への不安
  • 長寿化
  • 金融市場の影響

少子高齢化が進む中で、年金制度に対する不安が高まっており、高齢者世帯が将来に備えて貯蓄を増やす傾向が強まっています。

なお、2020年以降に貯蓄額が急激に増加している背景には、2019年以降に話題となった「老後2000万円問題」による年金不安も関係していると考えられます。

また、日本の平均寿命が延び続けていることで、長い人生に備えた生活資金が必要になり、貯蓄を増やす必要性が高まっているのでしょう。

年金不安や長寿化以外にも、資産運用や投資を活発に行っている世帯では、金融市場の変動による資産価値の上昇が貯蓄額の増加に影響している可能性もあります。

ここまで無職世帯の貯蓄額について見てきましたが、次の章では65歳以上の「勤労世帯も含む」世帯の貯蓄額についても確認していきます。