退職後の生活費に課題があるのはどんな人?

退職後年収と公的年金の受給額比較

2017年8月に実施した「資産活用世代のお金との向き合い方」アンケートのなかから、単身「D(Decumulation、資産活用)」世代の退職後の生活費を分析すると、いくつかの懸念材料が浮かんでくる。

今回は、単身「D」世代の退職後生活費(=退職後年収)と公的年金の受給額を比べてみた。特に既婚で配偶者無しの世帯(すなわち、離婚または死別によって単身となった世帯)では生活費が高い割に公的年金の受け取り額が少ない傾向にあり、退職後の生活に大きな懸念が窺える。

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単身「D」世代の退職後の生活費は夫婦世帯の5-7割

夫婦世帯との比較で見ると単身世帯の生活費が意外に高い。既婚配偶者無し世帯の生活費は、60代前半で230万円程度、60代後半では250万円前後となった。男性・女性ともに大きな違いがないのが特徴だ。また未婚世帯は210万円前後。

これらを既婚配偶者有り世帯と比較をすると、既婚配偶者無し世帯は6-7割、未婚世帯は5-6割といった水準だ。

課題は単身だからといって生活費の水準が夫婦世帯の半分とはいかないこと。特に、既婚配偶者無しの世帯は6-7割の水準で、資産の枯渇スピードを速める懸念が残る。

単身「D」世代の公的年金の受給額は7割程度

公的年金の受け取り額も比較してみる。単身世帯の受取額は、未婚も既婚で配偶者無しも夫婦世帯の7割程度に落ち着いている。

65歳以上の単身「D」世代2290人の公的年金の受け取り金額は、既婚配偶者有り1928人で平均211.6万円、既婚配偶者無し206人で平均141.1万円、未婚156人で150.3万円。夫婦世帯と比べて、既婚配偶者無し世帯は7割弱、未婚者は7割強の水準となった。

この2つのデータから、65歳以降の生活費の何割を公的年金がカバーしているかを見ると、夫婦世帯が6割、未婚世帯が7割、既婚配偶者無し世帯が5割強といった水準になる。

既婚で配偶者無し世帯では退職後の生活費を抑制するか、未婚世帯以上に退職後の資産を用意しておく必要があることがわかる。

退職者の退職後年収(退職後の年間生活費)   (単位:人、万円)

出所:フィデリティ退職・投資教育研究所、資産活用世代のお金との向き合い方アンケート、2017年8月
注:退職者6250人のうちわからない・回答したくない人を除いた4,521人が対象。退職後年収は平均値のみを収載

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合同会社フィンウェル研究所代表 野尻 哲史

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執筆者
野尻 哲史

合同会社フィンウェル研究所代表。国内外証券会社、大手外資系運用会社を経て、2019年5月に現職。資産の取り崩し、地方都市移住、雇用継続などの退職後の生活に関する提言を行っている。行動経済学会、日本FP学会などの会員などの他、2018年9月から金融審議会市場ワーキング・グループ委員。著書に『IFAとは何者か』(一般社団法人金融財政事情研究会)『老後の資産形成をゼッタイ始める!と思える本』(扶桑社)『定年後のお金』(講談社+α新書)『脱老後難民 「英国流」資産形成アイデアに学ぶ』(日本経済新聞出版社)など多数。