2. 対象とされる「超富裕層」とは?富裕層の世帯数・純金融資産総額
もし仮に金融所得課税の強化が行われる場合、対象となりうるのは「超富裕層」です。
株式会社野村総合研究所が2023年3月に発表した、2021年の日本における純金融資産保有額別の世帯数と資産規模の推計によれば、富裕層・超富裕層の世帯数は約149万世帯とされています。
内訳は以下のとおりです。
2.1 富裕層
(金融資産保有額1億円以上5億円未満)
- 世帯数:139万5000世帯
- 純金融資産保有額:259兆円
2.2 超富裕層
(金融資産保有額5億円以上)
- 世帯数:9万世帯
- 純金融資産保有額:105兆円
2021年時点での富裕層・超富裕層の世帯数は2019年の132万7000世帯からさらに15万8000世帯増加しています。
また、純金融資産保有額も富裕層が2019年から15兆5000億円、超富裕層が2019年から3兆円増加しています。
なぜ超富裕層が金融所得課税の対象になりうるかというと、現行の金融所得課税制度は、所得額1億円を境に税負担率が下がっているためです。
日本の所得税は「累進課税制度」と呼ばれる、所得額に応じて税負担率が上がる仕組みとなっており、最高で45%の税率が課されます。しかし、金融所得に対する税率は前述のとおり所得額にかかわらず一律で20.315%です。
内閣府の「第19回税制調査会」において財務省が用意した資料によると、富裕層は所得の約42%が金融所得となっています。つまり、所得の約半分は税率が20%で済んでしまうのです。よって、所得税負担率が所得額1億円以下の人に比べて少なくなっています。
こうした所得額による税負担の格差を是正するために、金融所得課税の強化は以前から議論されています。しかし、実際に課税強化には至っていません。
では、もし金融所得課税が実行された場合、新NISAに影響はあるのでしょうか。次章で解説します。