2018年6月27日に行われた、DIC株式会社個人投資家向け会社説明会の内容を書き起こしでお伝えします。説明会資料 質疑応答パートはこちら
スピーカー:DIC株式会社 代表取締役社長 執行役員 猪野薫 氏
個人投資家向け会社説明会
猪野薫氏(以下、猪野):ただいまご紹介にあずかりました、DIC株式会社代表取締役社長執行役員の、猪野薫でございます。本日は、かくも大勢の方にお集まりいただきまして、誠にありがとうございます。あらためまして、御礼申し上げます。
(当社の)テレビコマーシャルを事前に何回か流させていただいているのですが、なにぶん知名度が上がらない会社でもございますので、今一度コマーシャルを見ていただいて、そのうえで会社のアウトラインから、話を始めさせていただけたらと思っております。
(動画が流れる)
猪野:先ほど司会の方からもご案内がありましたけれども、今年(2018年)私どもは創業110周年を迎えます。ちょうど10年前(2008年)に100周年を迎えた時に、当時は「大日本インキ化学工業」という社名だったのですが、「DIC」に社名を変更いたしました。
それは、「もう、ただのインキ会社ではない」「グローバル企業(として認知されるため)に、もっと脱皮していくんだ」という想いが込められていたわけですが、BtoB企業はあまり広告宣伝等にお金をかけないものですから、残念ながら、現在の知名度は2割に低迷しているということです。
いかにBtoBとはいえ、(「グローバルに展開する国際企業」という実態に近づけていくという)社員の意識もございますし、なによりも、私どもはもっと積極的に当社の事業内容・将来性についてアピールをさせていただく。そのスタートとして、このようなテレビコマーシャルを、一昨年(2016年)から回させていただいています。
創業110年のグローバルな化学メーカー
このスライドにございますとおり、(旧社名は)「大日本インキ」という会社で(今年で)創業110周年(を迎えました)。資本金は、966億円でございます。規模としては、そこそこに大きな会社なのかなと。
連結売上高は、約8,000億円。連結従業員数も、20,000人を超えるというところでございます。
他社にないグローバルネットワーク
私どもは、のちほどご紹介しますけれども、世界64ヶ国に171社を擁しております。こちら(のスライド)に出ていますとおり、南極大陸を除きますと、すべての大陸に拠点を有してグローバル展開をしているということで、日本の化学会社としましては、極めてレアな会社と言っていいのではないかと思っております。
(こちらも)のちほどご紹介しますけれども、「印刷インキを起点に、M&A戦略等を通じてグローバル化を果たす」というのが、創業者(川村喜十郎氏)以来の夢でありました。(この64ヶ国171社でのグローバル展開は)それを着実に果たしてきた結果であると言えるかと思います。
110年の歩み:1908年に創業
レトロな写真を見つけたので、少しご紹介させていただきます。(スライドの右下は、1912年に商号変更した)「川村喜十郎商店」……(1908年に)「川村インキ製造所」というお店からスタートしたということです。現在の、墨田区にある場所(旧東京市本所区)だそうです。
110年の歩み:事業多角化の時代(1950~)
これから「110年の歩み」ということで、お話を申し上げようと思います。1950年代ぐらいから、事業の多角化に取り組んでまいりました。
もともとは印刷インキで創業しておりますけれども、当初は輸入インキの半製品を練り直すというかたちです。雑誌・新聞等で、みなさまの目の前に、いろいろな文字・活字を提供させてきていただいたわけです。1950年に入りましてから、インキの主原料であります、有機顔料と合成樹脂(から事業の多角化を開始しました)。
「有機顔料」といいますのは、いわゆる色のもとになる粉の部分でございまして、これは化学的につくります。同様に、のりになる液体部分は「合成樹脂」でつくります。この両方とも、私どもが自前で生産をしてインキをつくっていくということで、(事業の)多角化のスタートを切ったわけです。
有機顔料は粉なのですが、この粉はともすると、凝集してくっついてしまう。均一に分散するということがなかなか難しく、染料と違って、水には溶けません。
したがいまして……これは、私自身はそれほど詳しくはないのですが、いわゆる分散技術といって混ざらないものを均一に分散して、色鮮やかに提供するという基盤技術です。それから、高分子化学あるいは合成樹脂等の有機合成に技術を展開いたしまして、現在の技術基盤を確立したということになります。
110年の歩み:グローバル化の時代(1980~)
次に、少し(年代が)飛びますけれども、グローバル化の時代、1980年代でございます。
(スライドに)「大型M&Aで欧米マーケットを獲得」とありますけれども、1986年に、欧米のサンケミカルという会社を買収いたしました。
ここで私どもは、グローバルシェアNo.1の会社に躍り出たわけですが、それに飽き足らず、インド・中南米等の空白地域を押さえるために、1999年にコーツグループを買収いたしました。
したがいまして、先ほど申し上げたとおり、南極大陸以外の大陸に拠点を設けているという、化学会社としては極めて珍しい会社になったわけでございます。
新たな飛躍に向けて(2008~)
2008年の「新たな飛躍に向けて」ということで、先ほど申し上げたとおり、2008年に創業100周年を迎えました。この時に、社名・シンボルマークを変更いたしまして、ここにありますように、ロゴマークも変更したわけでございます。
もともと、経営ビジョンといたしまして、私どもは印刷インキから(事業を)スタートしたということもございますが、「化学で彩りと快適を提案する-Color & Comfort by Chemistry-」を掲げておりました。今でも、ベースは「Color」です。
したがいまして、ブランドスローガンも「Color & Comfort」ということです。冒頭で少ししつこくお見せしたコマーシャルの中に(もあったように)「Color & Comfort」というところ。これを目に焼き付けていただきたいという思いで、あのようなコマーシャルになったわけでございます。
事業内容の転換
しかしながらこの数年、みなさまにはご案内のとおり、デジタリゼーションの波が急速に訪れました。私どもの(事業においても)例えば印刷インキの一角の新聞等も、スマホで読む時代になりました。
そのあたりを、かなり以前から……ここでは2009年から表示しておりますけれども、次のDICの事業内容をどのように戦略的に構築していくのかを、先代(中西義之氏)・先々代(杉江和男氏)と、これまでの経営者が悩み抜いて、それでもベース技術を大事にしながら、多角的に事業内容を変更してまいりました。
(スライドの)上段に売上高(を記載しており)、上が非インキ事業、下がインキ事業です。我々はグローバルに展開していますので、売上高の半分近くは、未だにインキ事業です。
しかしながら、その下の営業利益を見ていただきますと、(2018年見通しの)非インキ事業の割合は73パーセント、インキ事業は27パーセントです。
これは、インキの利益が減ったというよりも、ほかの(非インキ事業の)構成する利益が増えてきたということになります。図では少し見づらいかもしれませんけれども、下の灰色の部分がインキ事業ですが、棒グラフの幅は(2009年~2018年見通しにかけて)あまり変わっていないと思うんです。
これは、新聞あるいはチラシ等でのインキの需要は減っていますけれども、逆にいいますと、いわゆるパッケージ(用インキの需要です)。食品包装を中心とした……わかりやすくいいますと、ラーメンやお菓子の袋であったり、あるいはペットボトル、トイレタリーの詰め替え用、ボトルのシャンプーであったり。そのようなものの容器には、必ず色付けがなされています。飲料缶も同じです。
そのようなものの色付けとしてのインキの需要は、先進国だけではなく新興国につきましても、ポテンシャリティとしては、相当のものがございます。まだ、さらなる上昇基調には転じておりませんけれども、ますます新興国のアジア、中国では、みなさまにご案内のとおり、スーパーマーケットあるいはコンビニの世界の中で、今まで新聞紙にくるんでいたものが、数十年前の日本がそうでしたように(いずれ)必ず衛生的なパッケージ(が求められる)分野に入ります。そのため、私どもはここを印刷インキのベースとしてさらに(事業を)拡大して、紙ベースで縮小していくもの(出荷数量)を凌駕していくということで(事業に)臨んでいるわけでございます。
しかしながら、それだけでは大きな飛躍はありません。これから具体的にご案内申し上げますけれども、冒頭で申し上げた非インキ事業の比率をどんどん増やすということで、これまでやってきたわけであります。
自動車の快適、省エネに貢献
いくつか、事業展開の例を簡単にご説明したいと思っております。「自動車の快適、省エネに貢献」ということで、ここに自動車の絵があります。
外装の塗装の分野は、有機顔料あるいは塗料用樹脂。それから、右に「PPS(ポリフェニレンサルファイド)コンパウンド」と書いてありますけれども、これは私どものエンジニアリングプラスチックであります。それから(左下の)工業用粘着テープ、(左の)ウレタン樹脂、(右下の)ディスプレイ用の液晶材料と。
こうして見ますと、自動車の中にも数限りない用途の(当社製品があり)、自動車のそもそものComfort、あるいは省エネ・環境対応というところを踏まえた製品が、これだけ多く供給されております。
デジタル社会に欠かせない製品群
次に、デジタル社会(において)印刷インキの一角が需要(新聞等)が縮小して崩れていますけれども、逆にいうと、そこに転じていったのがデジタル社会であり、そこに私どもの(製品が)使われている材料が、かなり多くあります。
(スライドの)上は、液晶テレビの絵でございます。中に入っているTFT液晶そのものをつくっている会社は、世界でそれほど数が多くありません。メジャーなところでは、3社です。私どもは最後発ですが、その3社の寡占状態の中で、ビジネスを開始いたしました。
それから、プリント配線基板のエポキシ樹脂や、カラーフィルタ用顔料。カラーフィルタを使って大型テレビ等に投影されるわけですが、この色鮮やかさ、カラーそのものは、私どもの得意中の得意でありまして、とくに緑と青につきましては、圧倒的な世界シェアを誇っております。
それから(スライドの下は)スマホ等に使われる接着用のフィルム、防水両面粘着テープ、部材固定のためのビスの代わりになるような両面固定テープ等も、製品として品揃えがございます。
幅広い事業セグメント
「幅広い事業セグメント」と書いてありますけれども、私どもは今、真ん中の「プリンティングインキ」を基本といたしまして、「ファインケミカル」「コンパウンド」「ポリマ」「アプリケーションマテリアルズ」という、5つの事業セグメントを揃えております。
(スライドの)上段が、利益貢献です。左のファインケミカルの28パーセントから始まりまして、ご覧のとおりの利益貢献度になっております。
ここで多くは語りませんが、見ていただきたいのは、一番下の世界シェア(当社調べ)でございます。
プリンティングインキは、印刷インキがNo.1。これは言わずもがなで、がっちりとした牙城を築いておりますけれども、それ以外にも(ファインケミカルで)有機顔料No.1、TFT液晶No.3、(コンパウンドで)PPSコンパウンドNo.1、(アプリケーションマテリアルズで)スピルリナNo.1と。
細かい製品群のところまで落とし込みますと、これ以外にも、さらに数多くのNo.1の製品を揃えてあります。これがそもそも、お互いのセグメントの中で補完関係にあるということで、私どもとしては、シナジーを生み出しやすい事業ポートフォリオになっているのではないかと思います。
営業利益は上昇トレンド
肝心の、みなさまが大変ご関心の業績について、売上高・営業利益をともに掲げました。
この棒グラフのとおりでございますけれども、2016年に、史上最高益を更新いたしました。それまでは、リーマンショック直前の2006年の(営業利益で)514億円というのが最高益だったのですが、これを凌駕いたしまして、2016年に542億円と(なりました)。
(さらに)昨年の2017年に565億円と、最高益を更新しました。もし、今年(2018年)の580億円を達成するということになりますと、3期連続の最高益更新ということで、若干会社の鼻息が荒いところでございます。
売上高につきましては、少し横ばい傾向に見えるのですが、当社はかなり多通貨を扱っております。したがいまして、円高あるいは(割合として)大きな欧米でドルで決算をしておりますところが、新興国通貨……例えば、稼ぎ頭であるトルコリラ・ブラジルレアル・ロシアルーブルなどが軒並み安くなっていますので、評価上はドルの金額が縮むという会計上のところもありまして、売上高は、あまり大きく伸びていないように思えます。
しかし、営業利益率(折れ線グラフ)が2014年の4.9パーセントから右肩上がりで(2016年には)7.2パーセントまで戻しているということは、先ほどの(ご説明にございました)事業内容が印刷インキだけではなく、多角的にポートフォリオを変換してきたという証左であると思います。
財務体質の改善に目処。攻めの経営にシフト
次に、財務体質です。(こちらのスライドには記載がないのですが)1998年のピーク時に、有利子負債がいくらあったかといいますと、手元のメモによると6,200億円でした。有利子負債が多いことが、株価がなかなか上がらなかった要因の1つになっていたと思います。
積極的にM&Aを展開して事業規模を拡大してまいりましたので、(有利子負債の増加は)ある程度はやむを得ないとは、もちろん思っておりますけれども。さすがに、借金がこれだけ膨れ上がる(のはどうなのか)ということで、ここに示してあります、D/Cレシオ……「D」は有利子負債、「C」は純資産です。純資産と有利子負債を足して、そのうちの純資産の割合が何パーセントあるかと(いうことです)。
(D/Cレシオで)50パーセントを目標にいたしました。50パーセントとは、今の計算式からいきますと、有利子負債と純資産が1:1になることになります。
50パーセントを切っていくということは、それだけ純資産が厚みを増していくということです。これでいきますと、2018年(見通し)の数字は、ここにお示ししておりますとおり41.9パーセントということで、財務体質の改善が、かなり急速に進んだということになります。
そのような意味で、本当はここまで無借金(経営)とかが、もちろん理想かもしれませんけれども。この低金利の時代ですから、今のポートフォリオを拡大して、より一層充実した事業ポートフォリオになるためには、もう少し積極的な攻めの経営にシフトするということ(が必要)です。戦略的投資の枠も、3ヶ年計画の中で実際に設けておりまして、これからやっていくところでございます。
2018年業績:最高益の見通し
今年、2018年の業績(見通し)です。売上高が8,200億円、営業利益・経常利益が580億円、純利益が400億円。この3つの利益を達成した暁には、先ほど申し上げたとおり、最高益の更新になります。
また、ROEも昨年(2017年)は13.0パーセント、今年は12.4パーセントと、2桁台が当たり前の会社に成長いたしました。このROEは、もともと投資家のみなさまからも非常に関心の高い指標と聞いておりますので、この高い水準を維持していくことにつきましては、私どももかなり誇りを持てるようになってきております。
サステナビリティの取り組みと外部評価
最近、みなさまは「サステナビリティ」あるいは「ESG」という言葉をお聞きおよびだと思います。公害を垂れ流しで儲けても、これからの会社はしかたがありません。
私自身は、むしろ環境浄化をするためにこそ、化学企業があると思っております。そのためにも、地球環境・事業活動の永続を通じて、どれだけ社会貢献をしていくのかにつきまして、私どもは極めて熱心であります。
取り組みの一例を、ここに掲げております。環境負荷の低減(になる製品)であったり、再生可能エネルギーの導入であったり。社会貢献的には、理科実験事業、あるいは美術館の事業も行っていく。これは(ブランドスローガンを)「Color&Comfort」としている会社ならではの事業だと思います。
その結果が(スライドの)左下にいろいろと書いてあります。Dow Jones Sustainability Indices等で、極めて高い評価を頂戴しております。とくに、このDow Jonesにつきましては、Asia Pacificという世界的なESG投資指標の中で、日系企業メーカー8社の中の1社に数えられております。
成長シナリオ
次に、DICの成長戦略です。これが、今の3ヶ年計画の一部抜粋です。(ご説明の際)よくこのページを使わせていただくのですが、これは(成長シナリオの)イメージ図です。
そう申しますのは、(まず)一番下の濃い青色の安定基盤事業。これの多くは、インキ・顔料・ポリマという、私どものスタートの事業であります。ここはかなりグローバルに展開しておりますので、引き続き安定的に、どの国からもネットワークを通じてキャッシュフローを得ていく。そのような、キャッシュ・カウのビジネスとして下支えをする事業です。
それから(その上に重なっている事業が)いくつかありますけれども、成長を加速するための成長牽引事業。これが安定基盤事業の上に嵩上げになって、今の最高益の更新に至っています。ただ、残念ながらこれだけでは、将来的に(中期経営計画「DIC108」で掲げた営業利益で)1,000億円を目指したいという会社にとりましては、まだ不足であります。
したがいまして、今後の当社にとっての次世代事業、あるいはコア事業を含めても(図の一番上の)戦略的投資の投入による、今描いている事業の柱をもっと太くすることに投資して、成長させてまいりたいと考えています。
中期経営計画 DIC108(2016-2018年):事業施策
これは、中期経営計画の抜粋です。この「成長牽引事業」といいますのは、大きく分けまして、高機能材料とパッケージ材料です。高機能材料は、先ほど申し上げたとおり、ここに書いてある「PPSコンパウンド」「機能性顔料」「TFT液晶材料」「ジェットインキ」です。それから(パッケージ材料は)パッケージ用のさまざまな材料です。
「次世代事業」につきましては、ヘルスケア。これは(藍藻類の一種の)スピルリナという(藻を使った)健康食品で、これをベースにして、当社は40年以上も藻類培養をやっていますので、そこからの派生品目です。パッケージ・エレクトロニクス・低炭素化のような環境対応製品にも、次世代事業として積極的に取り組みたい。
それから、先ほど申し上げた、事業の柱を太くするための「戦略的投資(機会の追求)」。こちらは(3年で)1,500億円の枠を設けております。
PPSコンパウンド事業:自動車用途で出荷増
いくつか、成長牽引事業についてご紹介申し上げます。
最初は、PPSコンパウンド事業です。「自動車用途で出荷増」とございます。これは、当社が唯一ではありませんけれども、力を入れているエンジニアリングプラスチック事業です。熱に強い・薬品に強い・軽いということで、とくに自動車のエンジン周りとして使われているコンパウンドであり、とくに成形がしやすいことから、エンジン周りのいろいろな部品に使われております。
とくに、今は毎日のように新聞に出てますけれども、EV化……電気自動車に、どんどん向かってまいります。私どものPPSコンパウンドは、この(2015~2017年の)3ヶ年で21パーセントと売上高を伸ばしております。
また、ここに「市場成長率4パーセント」と書いてありますけれども、EV化が進みますと、センサー類など発熱しやすい電気部品が増えることから、その(PPSコンパウンドの)使用量は、ガソリン車に比べて2倍から3倍に増えることになります。したがいまして、ここ数年の増設により、まだ直近の利益は大きくはないのですが、これには私どもも、かなり期待しております。
当然のことながら、当社の強みとしましては、この(高い)信頼性と、原料・樹脂からコンパウンドまでの一貫生産を通じて、なおかつグローバルネットワークで販売をしていく。当然、世界シェアも、現在No.1になっているわけでございます。
化粧品用顔料事業:市場拡大と採用増で好調
次は、ちょっと変わり種の、化粧品用顔料事業です。ここに(主な用途として)アイシャドウ・口紅・マニキュアとあります。化粧品会社の(製品が)、肌に塗っても唇に塗っても、あるいは(睫毛に)マスカラを塗っても、なぜ健康に害がないのか? これは、顔料の技術のためです。
もともと、私どもは有機顔料の老舗でございますので、各国の安全法規制に対応しまして、とくにアメリカでは、FDAというお墨付きも得ています。今(2015年時点)のシェアは22パーセントですが、2018年には26パーセントまでに伸ばせるのではないか。とくに、新興国の中間所得層の方々にとりましては、これからポテンシャリティとしての需要がどんどん増加することは、論を待たないと思います。
なおかつ化粧品用途も、メーキャップだけではなくてスキンケア。とくに、肌の色が中心になりますけれども、そのような(スキンケア)クリームの中にも、私どもの顔料が使われる。それも、安全性を持って使えるということです。現在は欧米が主体の展開で、どうにかグローバル展開をしていきたいところです。今はそれ(欧米)以外の日本国内においても、大きく事業展開をしていこうというところです。
ディスプレイ関連事業:市場拡大以上の成長
それから、ディスプレイ関連事業です。
先ほどちょっと触れましたけれども、とくに液晶の大型カラーテレビは、カラーフィルタを使っています。カラーフィルタに色付けをして、その(フィルタの)カラーが投影されてまいります。したがいまして(ディスプレイに必要なものは)そのカラーフィルタに使用される特殊な顔料です。色彩・色域・鮮やかな色のコントラスト。そのようなものを(ディスプレイを通じて)みなさまの目で楽しんでいただくためには、私どもの顔料が必須であります。
この(スライドの)右下に、グリーン顔料・ブルー顔料の両方とも「世界シェアNo.1」と書いてあります。とくにグリーンにつきましては、85パーセントまでシェアが高まっておりまして、残念ながら、この先の(市場成長以上の)伸びしろが少ないところまできてしまいました。ブルー顔料につきましては、今は50パーセントですので、これもゆくゆく、さらに上がっていくのではないかと思っております。
ヘルスケア事業:天然色素の拡販に期待
それから、ヘルスケア事業です。「天然色素の拡販に期待」(と書いてあります)。これは、先ほどちょっとお話ししましたけれども、私どもが(行っている)藻類培養。「スピルリナ」という種類の藻の培養を、40年以上研究してきております。現在商品化されておりますのは、スピルリナをタブレット化した、健康食品・サプリメントであります。
農業的には「オープンポンド」という(スピルリナを)池で培養するノウハウが、私どもは随一でございまして、これがシェアNo.1の理由でもあります。
そのような中で、単なるサプリメントではなく、天然青色素の「リナブルー」の需要が、新しく急速に注目されてまいりました。
アメリカ政府が天然色素を認可したこともありまして、これを皮切りに(市場が急拡大しており)例えば、欧米の大手お菓子メーカー。ご想像いただける名前があるかと思いますけれども、「2021年以降は合成着色料を使わない、天然着色料のみ使用する」ということを、すでに宣言しております。
残念ながら、私ども(が保持している天然色素は)ブルーだけです。ここ(スライドの右上)に写真が出ておりますけれども、チョコレートやガムの被覆、あるいはアイスキャンデー。このようなものが、日本ではパッと目につくところです。
これからは、さらにこの展開が(拡大していき)とくに、欧米の大手お菓子メーカーの(天然色素の)採用がなされるということですので、私どもにとってみましたら、新たな市場が出現するということで、大変期待しているところであります。
太陽ホールディングスとの資本業務提携
それから、あまりエレクトロニクスについてしゃべっていなかったので、ここで太陽ホールディングスさんとの資本業務提携について、少しお話をしたいと思います。2017年の1月、太陽ホールディングスさんに約20パーセントの出資をいたしました。
もともと素材開発が得意な私どものエポキシ樹脂を中心に、例えば、プリント配線基板や半導体周りに、いろいろな製品を供給しております。ところが、もっと川下のメーカーの方々にご評価をいただくときに、マーケティングツールが、なかなか川上の私どもにとってみたら、残念ながら少し遠いところがあります。
なおかつ、太陽ホールディングスさんにしてみますと、私どもがやっております、インクジェット(技術が、親和性の高いところです)。例えば、インクジェット方式で回路を描くところについては、太陽ホールディングスさんの(世界トップクラスのシェアを持つ)絶縁材料のソルダーレジストの生産プロセスにおいて(より)画期的な生産プロセスをもたらすことになります。
そのようなことから、以前からかなり親和性の高い会社であったのですが、ここについて資本提携をさせていただきました。今は両社で、さまざまな技術交流を続けているところでございます。
中期経営計画 DIC108:数値計画と進捗
それから、中期経営計画の「DIC108」の、数値計画と進捗について、お話し申し上げます。
売上高はここ(スライドの左上)に書いてありますけれども、これは計画比です。先ほどお話ししたように、少し売上高は目減りしております。
中期経営計画を作ったときは、1ドル120円でした。今(2018年6月27日時点)は1ドル110円近辺です。なおかつその前は、新興国通貨が極端に弱い時期でしたので、不採算事業の売却を進めたこともありますが、売上高は残念ながら、計画比としては下がっております。
しかしながら(スライド右上の)営業利益について、2016年・2017年をご覧ください。2017年は、第4四半期に原料の高騰に見舞われましたけれども、それを克服して、ほぼ計画達成。
今期につきましては、先ほど申し上げた110円の為替のインパクトと、それから昨年(2017年)の第4四半期以降、いわゆる石化原料の指標であるナフサ価格が、その前(2016年)の3万4,000円から、今(2018年)は4万8,000円程度まで上がっております。
これですと、さすがに製品価格(見直し)をお客さまにお願いするにしても、1年間で取り返すのはなかなか難しいという現実を直視して、少し下方修正しましたけれども、580億円に設定したわけでございます。
配当性向は30%程度
次に、配当・株主優待関連でございます。
ここに書いてございますとおり、配当性向は30パーセント程度。今になりますと、当たり前のパーセンテージなのかもしれません。これまで、どちらかと言うと安定配当を目指してまいりました。しかしながら、財務バランスを改善して、さらに積極的な戦略的投資を進める中で、株主還元もきちっと実施するために、いわゆるトライアングルバランスといいますか、3つをバランスよくやるための計画を立てました。
(年間の配当)実績としては、このグラフでお示ししたとおり、2015年の80円、(2016年の)100円、(2017年の)120円、(2018年の現時点見通しで)125円と、毎年増配をしてきております。
今は、残念ながら株価が少し見劣りしていますので、逆に、そこ(スライドの右上)に配当利回りを書いていますけれども、3.6パーセントと、極めて高利回りの銘柄になりました。
株価自体はPER8倍ということで、大手の総合化学企業さんのPERに近づいていますけれども、このご評価には、少し難しいところがございます。私どもは(中心が)ファインケミカルですが、いろいろな業種が混ざっておりますので、プロの投資家のみなさまからしますと、「どこの指標を取っていいのか?」というところで、少し困惑もあるのかなという感じがいたします。
ただ、これは投資家のみなさまのご判断でございますけれども、いずれにしましても、この配当で考えていただきますと、正直、伸びしろとしてはかなり大きいかなと思います。
株主優待は年2回
それから、株主優待です。これは年2回行っておりまして、1つは、基準日が12月末です。お渡しするのは4月上旬ですが、「DIC川村記念美術館」の入館券付き絵ハガキで、1枚で2人(ご入館可能なものを)2枚お送りしますので、4人分配送させていただいています。
絵ハガキにしましたのは、絵ハガキ自体を喜んでいただける方が非常に多いとわかったこと。それから、(「DIC川村記念美術館」が)千葉県の佐倉市にありますので、首都圏の方はOK(足を運びやすい場所)なのですが、遠いところ(にお住まい)の株主のみなさまは、何か機会があるときでないと行けない。
それならば(例えば)「東京近郊の親戚に、絵ハガキを送ろう」ということですと、送られた方がそれを持って、孫を連れて「DIC川村記念美術館」に行っていただける。このような、それなりの工夫をさせていただいております。
それから、当社グループ製品で、先ほどスピルリナ(のご説明)がありましたけれども、サプリメントです。これは、同じサプリメントでも、アメリカのカリフォルニアにあるEarthrise Nutritionalsというところの培養池でできました、カリフォルニアブランドのスピルリナです。これをタブレット化しまして、配っております。
それから、6月末の基準日につきましては、これは12月でしょうか……お渡ししてますけれども、「DIC川村記念美術館」のオリジナルカレンダーです。うれしいことに、私どもの(千葉県の)佐倉市にある美術館が、実は、最近かなりのご好評をいただいております。
『Casa BRUTUS』という雑誌があるのですが、そこでデザイナーや建築家のみなさまに人気投票をしたときに、昨年(2017年)の展示部門で、おかげさまで5位に入っていたんです。DICという会社よりも、少しネームバリューが上がってしまって、少し嫉妬をしているところでございますけれども。
ここにおられる(投資家の)みなさまの中にも、行かれることがある方も多いのではないかと思います。モネもシャガールもありますし、みなさまがよくご存じの印象派の画匠(の作品)もあります。それから、私どもが得意である現代美術。とくにアメリカの現代美術ですが、マーク・ロスコという極めて珍しい7点セットが(1つの展示)部屋になって、お好きな方は、その部屋に2時間でも3時間でもいられるような美術館です。
また、自分で言うのもなんですが、庭園が非常にすばらしい。四季折々の花を楽しむことができます。宣伝で申し訳ございませんけれども、イタリアンレストランがおいしいです。半日はゆっくりと時間を過ごせますので、どうぞ一度お楽しみいただければと思います。(このオリジナルカレンダーは)そこのカレンダーということです。
DICをもっと知りたくなったら、ホームページへ!
「DICをもっと知りたくなったら、ホームページへ!」ということで、ここで私がお話しできるところには、限界もあろうかと思います。もしご興味を持っていただけたら、さらに詳しいことにつきましては、このホームページに書いてございますので、ぜひともご覧いただければと思います。
最後に、本当に本日、大変(多くの方に)お集まりいただきまして、ありがとうございました。大したものを……お菓子をお渡しできるような会社ではございません。かと言って、印刷インキをお渡ししてもしょうがありません。したがいまして、最近絶好調でありますけれども(当社の)コマーシャルで吉岡里帆さんが使われています、こちらの「いろどりノート」。
それを、本日私が小1時間お話しした内容で、少しでもご記憶に留めていただけるようなことがあれば、ぜひともDICの備忘録としてお使いいただければと思いまして、同封をさせていただいたわけでございます。
本日は、大変長い間ご清聴いただきまして、ありがとうございました。
(会場拍手)
質疑応答:紙媒体印刷の今後について
質問者1:先ほど講演の中でも触れられたと思うのですが、新聞などの紙印刷の将来性について。すごく苦労されているということは、ちょっとだけおうかがいしたような気がするのですが。いわゆる、他の(事業の)分で伸びているところがあっても、紙媒体について、将来どのような展開を考えているのか。それを、ちょっと聞かせていただきたいと思います。
猪野:いいご質問です。いわゆるニューノーマルといいますか、最近の若い方は少なくとも新聞紙等の紙では、ほとんどニュースを見ないわけなんです。電車の中でも、みなさまはスマホで、情報を取られるのですかね。それから出版・本(業界で)も、kindleなどの電子書籍が出てきていますので。そのような意味では、ここの分野の需要は、基本的には縮小していくと思います。
ただし、いわゆる本・雑誌の類い(の需要減少)は、ある程度のところでもう(下げ)止まるのではないかという見方をしています。みなさまは、どうお感じになっているかわかりませんけれども、私や(私の)娘もそうですが、やはり「本は紙ではないと、なかなか読めない」という、けっこう根強いところがありまして。
おそらくダイレクトメール1つにしても、これはメディア・インターネット媒体だけでは、なかなか(広めて目に留めてもらうことが)難しいということで、ここは、おそらく下げ止まると思います。
ただし、私どもは下げ止まることを期待して、事業を組み立てるわけにはまいりません。したがいまして、大きくグローバル展開(をしていき)、買収先も含めて……とくに、需要の縮小が早く起こった欧米につきましては、この10年来合理化をしております。
例えば、多く展開しているグループ企業の生産現場を、統合してしまう。あるいは、紙媒体のインキの現場を(成長牽引事業である食品包装などの)パッケージ(用インキ)の現場に変えてしまうですとか。このあたりでは、特損もだいぶ出しました。したがいまして、この先さらに(紙媒体の需要が)減ってきている(と想定される)分を、かなり先回りをして、(印刷)市場予測も大きい需要の縮小(になるだろう)ということで、対処をしてまいりました。
その結果、特損は出しましたけれども、営業利益は逆に、今は大きく改善してきていると言えるかと思います。もう、大きなリストラ的なものにつきましては、いったん終了したと思っています。今後は、その場その場での対応策・合理化で、ある程度のもので済むのではないかと考えています。ありがとうございます。
質疑応答:「非インキ部門」は具体的に何を指している?
質問者2:どうもありがとうございます。事業内容の転換の結果、2018年の営業利益のうち73パーセントは、非インキ部門から(になる見通し)とうかがっていますけれども、具体的にはどのようなものでございましょうか?
猪野:(ご回答にあたり)どこかのページを使った方がいいかもしれませんね……(スライド12ページの)「幅広い事業セグメント」をご覧ください。上に、2017年ベースの営業利益の割合(利益貢献)が書いてあります。ファインケミカルで28パーセント、コンパウンドで8パーセントと書いてありますけれども。
非インキは、このプリンティングインキ(セグメント)を除くものです。したがいまして、とくに代表製品や用途でございますと、先ほどの(ご説明した)機能性顔料や液晶材料などの、成長牽引事業であるファインケミカル。これが急速に、業績を伸ばしています。
それから、ポリマ。ポリマは、ありとあらゆる(用途がある)と言うと、ちょっと大げさで、(見方によっては)当社のウィークポイントの1つにもなりつつある部分も、正直あるのですが、かなりの樹脂の総合デパートです。これだけの品揃えを持っている会社は、そう簡単にはない。もう少し、選択と集中を進めなければいけないかなと思っていますけれども、これが(利益貢献の)30パーセントを超えてくるものですので。
規模や利益貢献を勘案しますと(非インキ部門の)多くは、このポリマとファインケミカルとなります。
質疑応答:製品・セグメントが細かすぎるのでは?
質問者3:ご説明ありがとうございました。聞きたいことが、2つございまして。1つは、為替の感応度について。先ほど(のスライドの25ページに)想定為替レートを書いておられました。(ただ、想定していても)現実的には、例えば110円になったり、120円になったりするわけです。その場合に、どれくらいの影響を受けるかを聞きたいのですが。
ちょっとご説明を聞くと、グローバル(展開)があまりに広くて、(関連する)為替が多くて……二次元、三次元の方程式になるのかなと。
だから、いわゆる単純な為替感応度を(スライドに)記載するのが、非常に難しいのかなと思いながら聞いています。それについて、どのように思われるのでしょうか?
それからもう1つは、実は私、株主なんです。
猪野:ありがとうございます。
質問者3:それで、証券会社からおすすめしていただいて、実は(御社の株を)買ったわけです。(それから)10年近くになろうかと思うのですが、株価という面で見ますと、率直に言いまして、他の会社に比べて必ずしも、いいところではない。大変言いにくいことで、申し訳ございません。
猪野:いえいえ。
質問者3:それで、それのご説明が、先ほどのPERのところの話になるのかなと思うんです。(御社のPER予想の)8倍と(他社平均PERの)20倍ということになるのかなと。株価についてお聞きするのは、難しいことですから。どうも、なんだか製品が細かくて、非常に多すぎて、かえって評価が難しくて……ということなのかなと。
ということで、将来性について、一体どのように考えていらっしゃるのかを、今までのお話を聞きながら(私は)悩んでいますけれども。このあたりについて、どのような……自信のほどというと失礼ですが、(お考えなのかを)お聞かせいただければと思います。
猪野:厳しいご指摘、ありがとうございます。まず、最初に為替感応度についてお答えします。おっしゃるとおり、確かに(当社は)相当の通貨を使っていますので、一言でいくらというのは、大変申し訳ないことに、申し上げることが非常に難しいんです。ただし、ドル円ベースで、他の通貨が大きく変わらなければ、営業利益に与えるインパクトは4億円です。したがって、これを1つのご参考にしていただけたらと思います。
それから、2つ目。10年来の株主でいらっしゃって、株価が低迷(しているのでは)ということですが、非常に申し訳ないなと思っています。私どもも当然のことながら、「(2018年で)史上最高益の更新をしよう」というところの株価が、今はなぜここ(低いところ)にいるのかとか、なぜ某ケミカルさんや某化学さんなどの総合化学(企業)のPERの8倍と同じにならなければいけないのかにつきましては、正直、私もはっきり言って不満です。
ただ、これは経営者が「不満だ」と言ってもしょうがない話ですので、しっかりと勉強して、なぜ(株価が)この低位にいて、どうしたら上がるのか。あるいは、上がるというよりも、どうしたら正当にご評価をいただくことができるのかについては、真摯に対応したいと日々考えていると。
ご参考になるかどうかわかりませんけれども、実は今、株主の方がご指摘された「(製品・セグメントが)細かすぎる」というところについて、真剣に考えておりまして。
いわゆる化学素材メーカーは、どうしても細かい事業を積み重ねています。これは私どもだけではなく、どこもそうなのですが。実は2ヶ月ほど前、IRのために、私は欧州へ行っていました。いろいろと(当社製品を)訴えたいがために、セグメントについて「PPS(コンパウンド)もありますよ」「液晶もありますよ」「何々もありますよ」と説明する中で、実は複数の投資家から、同じような(セグメントが細かすぎてわかりにくい)ことを言われました。
これを、世の中の言葉で「コングロマリットディスカウント」と言うんだそうです。いろいろな事業をやっているがゆえに、(結局は)何をやっているかわからない、評価が定まらない。(株価の低迷の要因には)たぶんそのあたりもあるのかなということで、(当社について)単に自分よがりに滔々と訴えるのではなく、株主のみなさまに、本当の意味での当社の将来性を示すことを、セグメントのくくりの仕方も含めて(真剣に考えています)。
実は今、経営戦略部門の担当の者も、この場に来ていますけれども。来年(2019年)から始まる3ヶ年計画のところで、これ(当社の将来性)はお示しすると。残念ながら、今はちょっと中途半端なところですので、具体的には申し上げられないのですが。
ご指摘されたところについては、もっとみなさまにわかりやすく(お伝えしていく)。それで、そうなった(当社のことを十分にお伝えできた)ときには、自動的に(PERが)8倍ではない世界で、ちゃんと(当社を)見ていただけるように。そのようなことを、真摯に考えてまいりたいと思います。ご指摘、本当にありがとうございます。
質問者3:ありがとうございます。
質疑応答:自社製品を、よりPRしてもよいのでは?
質問者4:ご説明ありがとうございました。私は出版社でずっとやっていたものですから、お宅のインクの性能については、すごく存じています。今日のこのお土産(「いろどりノート」)ですが、非常にグラデーションがいいと思います。それで、今日(ご説明を)承って、非常にうれしく思っています。お宅の色味を、ずっと我々は(吟味)してきたものですから、申し訳なかったのですが。
猪野:ありがとうございます。
質問者4:忘れてはならないのは、見えないところで(御社が日本の出版物を地道に支えているということ)。お宅も約百年間の歴史の中で(世界一をキープしている事業を持っていること)。私も(これまで出版社に勤めて)印刷屋さんや営業会社さんなどを含めて、無意識にああだこうだと、いろいろと余計なことを言ってきたのですが。
あらためて、御社が世界一をキープしていることに関して……ですから、やっぱり(日本の出版物を)地道に支えているということを、もっとPRしていいのではないですか?
猪野:はい。
質問者4:やっぱり日本にはすごい技術が、あちこちにあるわけですよね。今は、ある企業がちょっと潰れかかっていますけれども。それを両脇で、日立や三菱とか、東芝は……今はちょっと苦しいですが、支えてきて。(つまり)国家の隆盛を支えてきたわけだと思うんです。だから、(印刷業界の)人口が減るのはつらいです。(そうは言っても、紙の)本の売れ行きが減っていくことは、しょうがないことなのですが。
今の日本のカラーの出版物は、見事に美しいですね。そのような意味で(これからも)がんばっていただきたいですし。だから、3.6パーセントという配当利回り(予想)は、悪くはないと思います。大手出版社もその程度ですから。
だから、(御社が日本の出版物を)地道に支えているとPRしながら、(それを通じて)PERが上がっていくように、じわじわと努力していけばいいかと思います。やっぱり(日本の出版物を支える御社は、同時に)国家の基本を支えていくと。「世界一のインキ」ということは、もっとPRしていただきたく思います。よろしくお願いします。
猪野:温かいご声援をいただきまして、本当にありがとうございます。
質疑応答:株主優待のDIC川村記念美術館について
質問者5:株主優待について、お聞きしたいのですが。今の6月中旬~下旬で(株主総会が多数開催される時期で)私も今日、株主総会を3社ほど回ってきたのですが。
株を買うという1つの概念(理由)に、株主優待があると思うんです。DICさんは(1単元が)100株で、DIC川村記念美術館(の入館券付き絵ハガキ2枚)もしくは(グループ製品の)健康食品ですか。あと、オリジナルカレンダーとなっていますけれども。
このDIC川村記念美術館の入館券をいただけると言っても、私は芸術家でも美術家でもなくて。このDIC川村記念美術館には、毎月や年間で、入館されるお客さまはどれぐらいいらっしゃるのでしょうか?
「このような美術館にはあまり行かないので、(株主優待は)やっぱりこの健康サプリみたいな商品がいいのではないのか?」という(株主の)お客さまもいらっしゃるので。DIC川村記念美術館は、毎月や年間で、どのくらいの需要があるのか。そのあたりの数字を、教えていただきたいです。
猪野:入館者数をお調べいたしますので、少々お待ちください。「(株主優待を)DIC川村記念美術館(の入場券付き絵ハガキ)ではなくて、その他のところへ振り向け(をしたほうがいい)」というご意見のある方もいらっしゃるかと思います(ので、お調べしている間にご回答申し上げます)。
これは、もともと創業家のリーダーシップの下、収集した作品を展示する美術館ですし、それからなによりも、私どもは(ブランドスローガンとして)カラーを基準とした「Color&Comfort」を標榜しております。したがいまして、これは社団法人でもなければ財団法人でもなく、これは美術館を「事業」としてやっています。正直に申し上げて、これで儲かることは、絶対にありません。
ただしこれ(美術館の運営)によって、私は最近、社内でもよく言うのですが……解決すべき社会課題に、貧困あるいは格差社会といった暗いことがいっぱいある中で、彩り鮮やかなものを美術館を通じて提供させていただくのは、立派な社会貢献なのかなと思っています。
「(ほかにも、株主優待が)毎回、オリジナルカレンダーではつまらない」というご指摘も、たぶんあるかと思います。ただ、美術館につきましては、私どもの「カラー(Color&Comfort)」をお伝えする事業と捉えていますので、ぜひともご理解をいただければと思っています。
質問者5:この美術館は、例えばピカソ、モネ、ルノワール、アンリ・マティス、シャガールまで、「いろいろな近代美術を展示している」と言っていますが、やっぱり、半年や1年で(展示する作品を)変えるのでしょうか? いつも、同じような絵画や美術品を展示しているのでしょうか? そのようなところも、ちょっとお聞きしたいです。
猪野:みなさまが、いつ来てもぜひご覧になりたいという、いわゆる定番のものについては、基本的に常設しています。それ以外のところでは、3~4ヶ月に一度、作品を入れ替えしています。あるいは、常設展だけではない部分もあります。2020年が(設立)30周年になるわけですが、それに向けたいろいろな企画展と展示会を、併せてやらせていただいています。
したがいまして、毎週来られるといつも同じ(作品)かもしれませんけれども(笑)。たまに株主優待を使ってくるときには、必ず新しい目玉のものが、企画展の部分であると思っています。
IR担当者:すみません、大変お待たせしました。入場者数ですが、昨年(2017年)に企画展をやっていた時期の3ヶ月の入場者数が、2万5,000人程度ですので、1ヶ月で割りますと、1万人弱というかたちになります。
猪野:ということでございます。よろしゅうございますか? 本日は、誠にありがとうございました。
(会場拍手)