ルイス・フロイスは戦国時代の日本を訪れたイエズス会の宣教師です。

高校日本史でその名を知った方も多いのではないでしょうか?

ルイス・フロイスはその著書『日本史』(ポルトガル語: Historia de Japam)のなかで堺の人々の精神について論じています。

本記事ではその内容をご紹介するとともに、今の日本のインバウンドの状況についてもお伝えします。

1. 地獄をも恐れぬ堺の人々

織田信長ともたびたび面会したことで知られるルイス・フロイス。

彼が執筆した『日本史』には戦国時代の日本の姿が記録されています。

なかには日本随一の商業都市と称された「堺」についても描写されています。

堺の市民はきわめて自尊心が強く、また、「私がキリシタンになれば世人は私のことをどう言うだろうか」といった面子のことにひどくこだわっていたから、少なくとも、長い期間かからねばできることではなかった。というのは、彼らは、公然と、「自分たちが信用や、世間からの人望を失うのでなければ天国へ行けぬものなら、むしろそんなところへ行こうとは思わない」と言っていたからである。

ルイス・フロイス著 松田毅一、川崎桃太訳「完訳フロイス日本史1」中公文庫 2000年

ルイス・フロイスの『日本史』によれば、堺の人々は自尊心が強く、面子を大切にしたと書かれています。

また、周囲の人々との絆や世間体を非常に重視する精神性を有しており、人望を失うなら地獄に行く方がましだと言う人もいたようです。

『日本史』では続く文章で堺の人々を決して良い方向には評価していません(彼らは宣教師なので当然ですが)。

しかし、現代を生きる我々からすれば、むしろ堺の人々の精神的な強さや自立した心といったプラスの側面を強く描写した評価とも言えます。

2. 日本のベニス「堺」とは

堺は15世紀に遣明船の発着港となるなど国際貿易で栄えた都市です。

戦国時代に活躍した鉄砲の生産によっても多くの富を築き上げたほか、茶の湯や連歌が花開くなど、経済・文化の両面で大きな発展を遂げました。

そんな堺では商人が力をもち、大名に支配されない自治都市が形成されました。

三方に濠を巡らせた環濠都市を作り上げることで外敵から身を守るなど軍事の面でも大きな特徴をもつ都市でもあったのです。

ポルトガル人宣教師ガスパル・ヴィレラは執政官が治めているという共通点から堺は「日本のベニスのようである」と記しています。

また、貿易によって栄えたという点でも堺とベニス(ヴェネツィア)は共通しています。