直近の決算で増収増益の学習塾が相次ぐ

学習塾の業績が好調です。東京個別指導学院(4745)の2018年2月期の決算(非連結)は当期純利益が前期比21%増の17億4400万円と、3年連続で過去最高益を更新しました。同社はベネッセホールディングス傘下で、首都圏を中心に個別指導塾を展開しています。

また、個別指導塾「TOMAS」を首都圏中心に展開するリソー教育(4714)も2018年2月期の決算(連結)で増収増益でした。早稲田アカデミー(4718)も2018年3月期(連結)で増収増益です。

個別指導塾「明光義塾」をフランチャイズ方式で展開する明光ネットワークジャパン(4668)も、2017年8月期(連結)は増収増益。神奈川県西部が地盤のステップ(9795)も2017年9月期(非連結)で増収増益となっています。

早期化する受験対策

少子化が進んでいることから学習塾の市場は縮小していると考えられます。それなのになぜ、学習塾を運営する企業の業績が好調なのでしょうか。背景の一つに、少子化であるがゆえに、親が子ども1人あたりにかける教育費が増えているという傾向があります。小学校高学年から学習塾に通うという子どもも珍しくありません。

といっても、これらの子どもたちが皆、有名私立中学などのいわゆる中学受験を目指すというわけではありません。中学受験をするほど経済的な余裕はないといった理由に加えて、あえて、中学は公立に行かせたいと考える親も多くなっています。

ただし、その後の高校受験、大学受験となると、できれば有名校に進学してほしいと考えるため、小学校高学年や中学校低学年など、早い段階から学習塾に通うようになっているのです。特に最近では、受験対策だけでなく、定期テストなどでの成績向上に照準を合わせた個別指導塾が人気で、いずれの個別指導塾も生徒数を増やしています。

浪人生対象から小中学生へ、ビジネスモデルが変化

かつて、学習塾の主要なビジネスモデルといえば、浪人生を対象とした予備校でした。駅前の一等地にビルを構え、人気講師が大勢の受講生を前にマイクを片手に講義を行うというスタイルが中心だったのです。

しかし、少子化による大学の全入時代になり、浪人生の数が激減すると、浪人生に依存してきたビジネスモデルが成り立たなくなってきました。2014年には、大手予備校「代々木ゼミナール」を運営する高宮学園が全国27カ所の校舎を7カ所に減らし、話題となりました。

生き残りをかけて学習塾が選んだのが、「小中学生へのシフト」でした。実はここに、多くの学習塾を復活させた理由があります。

浪人生を対象とした予備校であれば、有名大学の受験生を対象に、同じ講義を行うこともできます。ところが、小中学生を対象にすると、各地の学区、公立高校や私立高校の人気や難易度などを把握した上できめ細かな対策が必要です。

さらに、定期テストなどでの成績向上なども視野に入れると画一的な講義では対応できません。個別指導塾が生徒数を増やしているのもこのためです。

また、このため、大手学習塾といえども、スケールメリットを発揮するのは容易ではなく、一気にシェアを獲得できるものではありません。さらに、個別指導塾は駅前の一等地でなくてもいいため、賃料負担を抑えることもできます。中堅の学習塾でも十分に勝負できます。

最近では、英語4技能など、新たに始まる大学入試制度に対応する小学生向けのカリキュラムを用意する学習塾なども登場しています。生徒獲得のための競争が激化する一方で、市場がさらに活性化するとも考えられます。

上山 光一