物価高に伴い、生活に支障が出る住民税非課税世帯への支援策のひとつとして、10万円の給付が進行しています。
さらに、岸田総理は6月21日の記者会見において、秋に「年金(生活)世帯や低所得者世帯に追加の給付金を支給する」ことを明言しています。
昨年も「住民税非課税世帯等への10万円給付」がありましたが、2024年度も新たな世帯に給付し、さらに秋に追加で給付されるとあり、関心も高まる昨今。
詳細は公表されていませんが、具体的な金額や対象者が気になる方が多いでしょう。
これまでの給付金は「住民税非課税世帯」が対象になることが多かったのですが、最新統計でその年代割合を確認すると、高齢者が多い現状も浮彫となっています。
70歳以上における金融資産保有額とともに見ていきましょう。
1. 岸田総理「年金世帯や低所得者世帯に追加の給付金」
岸田総理は、6月の記者会見において「物価高の中で食費の高騰などに苦しんでおられる年金(生活)世帯や低所得者世帯を対象として、追加の給付金で支援する」と述べました。
所得に関係なく、物価や円安の影響を受けている世帯は多いと考えられます。しかし、これまでの給付は住民税非課税世帯や家計急変世帯を対象に行われてきました。
年金世帯を対象にするのはこれまでにない動きですが、2024年度の年金額が2.7%の増額改定にとどまり、物価上昇に追いついていないことに配慮したもの考えられます。
2024年度に新しく「住民税非課税世帯等」に該当した人にも、現在10万円の給付が進められているところですが、どのような人があてはまるのでしょうか。
2. 住民税非課税世帯にはどんな人があてはまるのか
住民税は前年の所得をもとに決定されます。
しかし、一定の要件を満たす場合は非課税となり、住民税を支払う必要がありません。
自治体によって異なりますが、本記事では東京23区内における条件を確認しましょう。
2.1 東京都23区内で「住民税非課税世帯」に該当する条件
(1) 生活保護法による生活扶助を受けている方
(2) 障害者・未成年者・寡婦又は寡夫で、前年中の合計所得金額が135万円以下(給与所得者の場合は、年収204万4000円未満)の方
(3) 前年中の合計所得金額が下記の方
- 同一生計配偶者又は扶養親族がいる場合:35万円×(本人・同一生計配偶者・扶養親族の合計人数)+31万円以下
- 同一生計配偶者及び扶養親族がいない場合:45万円以下
例えば「同一生計配偶者及び扶養親族がいない場合」の目安は所得45万円以下です。年収で考えると、所得の種類によって以下が目安です(港区の例)。
- アルバイトやパートの給与収入が100万円以下
- 65歳以上で年金受給のみの人は、年金収入が155万円以下
- 65歳未満で年金受給のみの人は、年金収入が105万円以下
- 不動産収入等所得がある人は、収入から必要経費を引き、合計所得が45万円以下(令和2年度まで35万円以下)
給与収入の人は年収目安が100万円以下。年金収入の人は65歳以上で155万円、65歳未満で105万円になっていますね。
以上のことから、年金生活者の方が住民税非課税世帯に該当しやすいといえます。
次章では最新データより、年代別の住民税非課税世帯の割合も確認してみましょう。
3. 住民税非課税世帯の年代別の割合を「30歳代~80歳代」で比較
7月5日に公表された厚生労働省「令和5年国民生活基礎調査」より、年代別の住民税非課税世帯の割合(全世帯に占める住民税非課税世帯の割合)を紹介します。
- 30歳代:12.0%
- 40歳代:10.0%
- 50歳代:13.6%
- 60歳代:21.7%
- 70歳代:35.9%
- 80歳代:52.5%
- 65歳以上(再掲):38.1%
- 75歳以上(再掲):49.1%
年代があがるごとに、割合が増えていく様子がわかります。65歳以上では38.1%が住民税非課税世帯に該当することから、やはり年金世代が多いとうかがえます。
住民税非課税世帯は高齢者世帯ほどあてはまりやすい理由として、
- 収入が減る
- 住民税非課税世帯の目安となる「所得45万円」は、給与収入より年金収入のほうが高くなる
- 遺族年金は非課税
などが考えられます。
一方、住民税非課税世帯の判定には資産の有無が問われないことから、高齢者世帯の貯蓄事情が気になる方もいるでしょう。
次章にて70歳代の金融資産を見ていきます。
4. 70歳代の貯蓄「ある人・ない人」二極化へ
金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査(令和5年)」から、70歳代のひとり暮らし世帯・二人以上世帯の貯蓄額を紹介します。
4.1 70歳代のひとり暮らし世帯の貯蓄一覧
- 金融資産非保有:26.7%
- 100万円未満:5.8%
- 100~200万円未満:4.3%
- 200~300万円未満:4.1%
- 300~400万円未満:3.3%
- 400~500万円未満:2.5%
- 500~700万円未満:6.6%
- 700~1000万円未満:5.1%
- 1000~1500万円未満:8.6%
- 1500~2000万円未満:5.3%
- 2000~3000万円未満:8.2%
- 3000万円以上:17.3%
平均:1529万円
中央値:500万円
ひとり暮らしの世帯では、貯蓄の中央値が500万円となりました。
3000万円以上が17.3%で、金融資産非保有が26.7%にのぼるようです。
4.2 70歳代の二人以上世帯の貯蓄一覧
続いて二人以上世帯における貯蓄です。
- 金融資産非保有:19.2%
- 100万円未満:5.6%
- 100~200万円未満:5.1%
- 200~300万円未満:4.3%
- 300~400万円未満:4.7%
- 400~500万円未満:2.5%
- 500~700万円未満:6.2%
- 700~1000万円未満:5.8%
- 1000~1500万円未満:10.2%
- 1500~2000万円未満:6.6%
- 2000~3000万円未満:7.4%
- 3000万円以上:19.7%
平均:1757万円
中央値:700万円
平均額や3000万円以上の割合を見ると、ひとり暮らし世帯より貯蓄額に余裕がある印象を受けるかもしれません。
しかし、「金融資産非保有」は19.2%。ひとり暮らし世帯と同様、苦しい生活を余儀なくされている世帯も多いと考えられます。
資産も年金収入も少ない高齢者世帯にとっては、国からの給付に助けられることも多いでしょう。
5. 物価上昇の影響は低所得世帯以外にも…FPの見解
物価上昇の影響は、低所得者世帯以外にも及んでいます。かつて話題になった「老後2000万円問題」も、今や「老後4000万円問題」へ変わってきているという声もあります。
「4000万円」ときくと、「どれぐらい頑張って貯めないといけないのか」「本当に貯まるかな」不安に思う方も少なくないと思います。
将来を考えるうえでは、まずは自分が何のためにお金を貯めるのか、いわゆる「目的」を明確にすることがもっとも大切です。
目的がしっかりと定まることで、必要な資金が決まります。そして、資金を貯めるための必要な年数、月々の貯蓄額と、より具体的な数字として少しずつ固まってきます。しっかりと逆算し、自身の貯蓄額を鮮明にしていきましょう。
また、将来への資金準備も預金だけではなく「資産運用」を取り入れることも一つの方法です。
しかし「資産運用」は預金とは異なり、元本保証がなくリスクを伴うものです。
必要な資産を準備していくには話題の制度だけを取り入れるのではなく、自分にあった資産運用を選択しリスクと上手に付き合っていくことが何よりも大切です。
6. まとめにかえて
年金(生活)世帯や低所得者世帯を対象とした追加の給付金に加え、8~10月は電気・ガス代の補助も進められます。
最低賃金の引き上げも注目されていますが、政府の施策が家計に与える影響はまだ少ないかもしれません。
個人でできる資産形成も、それぞれが進めていく必要があるでしょう。
参考資料
- 東京都主税局「個人住民税(税金の種類)」
- 総務省「個人住民税」
- 首相官邸「岸田内閣総理大臣記者会見」2024年6月21日
- 港区「住民税(特別区民税・都民税)はどういう場合に非課税になりますか。」
- 金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査[単身世帯調査](令和5年)」
- 金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査](令和5年)」
- 厚生労働省「2023(令和5)年 国民生活基礎調査の概況」
- 首相官邸Instagram
奥田 朝