2018年6月1日の東京株式市場で、日経平均株価の終値は、前日より30円47銭安の22,171円35銭となりました。今後の株価はどうなるのでしょうか。振り返りを踏まえて展望します。
南欧の政局不安リスクが世界に広がるが現在は落ち着きを見せる
一時は中止が決まった米朝首脳会談が一転して開催に向けた動きになるなど、地政学リスクが後退したことから、5月28日の終値は小幅続伸となりました。
ところがその後、新たに南欧のリスクへの懸念が高まりました。イタリアでは親欧州連合(EU)派のマッタレッラ大統領が、EU懐疑派のサボナ元産業相の入閣を拒否したことから、次期首相候補だったジュセッペ・コンテ氏が組閣を断念しました。ポピュリズム(大衆迎合主義)政党「五つ星運動」および極右「同盟」の両党による連立政権が誕生すると見られていましたが、再選挙の可能性も出てきました。スペインでもラホイ首相に退陣要求が出されるなど、政局不安が高まりました。
投資家の間に両国での政治リスクが意識されたことから、両国の国債をはじめ欧州各国の株式が売られ、米ダウ工業株30種平均も大きく下げました。日経平均も30日の終値は前日比339円91銭安の22,018円52銭と大幅に下落し、4月17日以来およそ1か月半ぶりの安値となりました。取引時間中には一時、22,000円を割り込む場面もありました。
今後の株価の動きはどうなるでしょうか。南欧の政局懸念はやや後退しました。イタリアではコンテ氏が連立政権に向けて再び組閣に着手、スペインでも最大野党党首のサンチェス氏を首相とする新政権が発足しました。
また、1日に発表された5月の米雇用統計が市場の予想を上回る結果となったことから、同日の米株式相場も大幅に上昇しました。
南欧リスクの高まりにともない、円相場は一時、108円後半まで円高傾向となっていましたが、リスク後退によって、円が売られドルが買われました。1日のニューヨーク外国為替市場では円相場は反落し、前日比75銭円安・ドル高の1ドル=109円50~60銭となっています。
週初は米株高、円安という好条件で始まることになりますが、引き続き、政治的なニュースをはじめとする外部環境に相場が振られることになりそうです。柔軟に対応できるように備えておきたいところです。
25日移動平均線から下落するも、75日移動平均線でサポートされる
株価の動きをテクニカル面から振り返ってみましょう。5月28日からの週は22,500円台や25日線を回復できるかどうかがポイントでしたが、それを達成できず、逆にこのあたりで上値を押さえられ反落しました。特に5月30日には、窓をあけて大きく下落しました。
5日移動平均線と25日移動平均線のデッドクロスが形成され、短期的には下降トレンドになりました。ただし、下値は75日線付近でサポートされました。
22,500円および、25日線回復に期待したい
今後の動きはどうなるでしょうか。現状は5月21日(23,050円)を高値とする下降トレンドラインになっています。この下降トレンドを崩すためには、戻り高値である28日の22,481円を上回る必要があります。それに近い22,500円と25日移動平均線についても、両者がほぼ重なるため、意識されやすいでしょう。
現在の価格は、3月26日以降長く続いてきた上昇の3分の1押し(22,149円)付近で、このあたりを下値に反発した形になっています。75日線、200日線も重なるために、ここを突破するには力がいるでしょう。
また、75日線、200日線ともに上向きとなっており、中期的には上昇トレンドが続いています。このあたりを割り込むようであれば目線を下に持たざるを得ませんが、現状は上昇一服と見ていいでしょう。
上値めどは22,500円および25日線回復付近。下値めどは75日線、200日線、上昇分の半値押しの21,968円などになります。
下原 一晃