それは、みなさんつい話に熱がこもって、なかなか終わらないという状況。「もう終了時間ですよ」と言っても話すのをやめないのです。

「私、ストレスが溜まると眠れなくなっちゃうんですよ……」
「私も同じです。でも、アロマテラピーをやったらよくなりましたよ」
「えっ、本当ですか! どういうアロマがいいんですか?」

 などなど、私が一方的に話すよりもよい情報交換・交流ができていることもあります。私の自己開示をきっかけに、自然に会話のしやすい雰囲気が生まれたというわけです。

自己開示はあくまで「きっかけ」に使う

 これは特別な交流の場に限らず、ふだんの職場においても同様のことです。上司や管理職など、職場における権限を持つ方ほど、自己開示から自然な交流を広げ、「話をしてもいいんだ」という空気をつくっていただきたいと思います。

 ここで気をつけていただきたいのは、自己開示はあくまでも「相手の話を引き出す」ためのコツである、ということです。

 ですので、一方的に自分の身の上話をするのはダメです。まずこちらから軽く自己開示した上で、「私はこうなんだけど、あなたはどう?」と相手に問いかけ、話を広げていくことを忘れないようにしてください。

筆者の渡部卓氏の著書(画像をクリックするとAmazonのページにジャンプします)

「一日、誰とも話さない」職場にしない

 終身雇用と年功序列制度が当たり前だった一昔前には、良くも悪くも家族意識が強い会社が多く、ワイワイガヤガヤする空気が浸透していました。しかし、いまでは「個人に干渉しない」「プライバシーを重視する」風潮が強くなってきています。

 もちろんそのことは決して悪いことではないのですが、結果として「出社してからほとんど何も話さずに退社する人が多い」「隣の席の人がどんな人なのか、どんな仕事をしているのかもよく知らない」といった状況になっているようでは問題です。

 このような職場では、「職場にいると気が詰まって憂鬱になる」「誰にも相談できない、頼れない」といった思いを抱えた社員が心身に不調をきたし、逃げていってしまうのもうなずける話です。

 職場に適度な会話を生むためには、管理職からの意識的な働きかけも必要だと感じます。まずは基本の「挨拶」から始め、続いて「自己開示」からの問いかけで話を広げ、「適度にワイガヤ」な職場を目指してみてはいかがでしょうか。

 

■ 渡部卓(わたなべ・たかし)
産業カウンセラー、エグゼクティブ・コーチ。帝京平成大学現代ライフ学部教授、(株)ライフバランスマネジメント研究所代表。職場のメンタルヘルス・コミュニケーション対策の第一人者であり、講演・企業研修・コンサルティング・教育・メディア等における多数の実績を持つ。『明日に疲れを持ち越さない プロフェッショナルの仕事術』ほか著書多数。

渡部氏の著書:
人が集まる職場 人が逃げる職場

渡部 卓