先日、筆者の自宅兼事務所に設置しているFAXに「受信中」の表示が。番号違いだったようで、すぐに通信は切断されたのですが、「そういえば、FAXのやり取りなんて年単位でしていないかも」と思いました。FAXだけでなく、かつて仕事で使っていたフロッピーディスクも、外付けのFDドライブとともに保管しているのみです。

身近だったはずの商品や製品、サービスなどがいつの間にか懐かしいものに変わってしまうことがあります。そんなケースについて現在の姿を確認してみましょう。

ファクシミリはどのくらい保有されているのか?

総務省「通信利用動向調査」の平成29年のデータによると、FAXの一般家庭における保有率は35.3%であり、ピークだった平成21年の57.1%から下落しています。また、固定電話は70.6%ですが、こちらも平成21年には91.2%を記録しており、保有率は下がっています。

総務省の「小売物価統計調査」の調査品目にも「固定電話機」がありますが、その詳細は「ファクス付き電話機,親機(コード付き受話器)・子機(コードレス)各1台セット,〔親機画面サイズ〕3.8型以上,特殊機能付きは除く」とされています。

平成15年までは「ハンドスキャナ(コードレス)付き」の製品が調査対象となっていましたが、平成16年からは「特殊機能付きは除く」に改められています。消費者がファクス機に求める性能、そしてメーカーがファクスの一部として提供する性能が簡素化されていることの現れでしょう。

ビジネスシーンでのFAXへの需要はどうでしょうか?

一般社団法人 情報通信ネットワーク産業協会が2017年12月13日に発表したプレスリリースによると、FAX機能のみの製品は「利用頻度の減少でさらに需要縮小する」と予測されています。

しかし、ビジネスファクシミリ複合機は「ドキュメント機器を小型集約化した高機能カラー複合機への買い替え需要が増加」していることから、2022年度にも1,721億円の国内需要があると予測されています。

家庭でのFAXの保有率は減少し、ビジネスシーンでも単機能製品への需要は減少しているものの、複合機はまだまだ活躍している様子が分かります。

銀行が「フロッピーディスクの取り扱い終了」の告知

平成30年3月26日、中国銀行が「フロッピーディスク等(媒体)の取扱い終了のお知らせ」を発表しました。香川銀行も、平成31年3月29日をもってフロッピーディスクの取り扱いを中止する旨を発表しています。

ここ数年、同様の発表を行なう銀行が相次いでいます。大きな理由として各行が挙げているのは、国内メーカーがフロッピーディスクや光磁気ディスク、カートリッジ磁気テープなどの製造、サポートなどを終了していることです。

しかし、現時点でサービスを継続している香川銀行の例もあるように、フロッピーディスクがすでに姿を消しているわけではありません。2016年5月には、アメリカ国防総省の核兵器開発部門でも、いまだフロッピーディスク(8インチのものなども含む)が使用されているとの報道もあり、たいへん驚かされたものです(BBCの報道による)。

とはいえ、同部門では、2017年末までにフロッピーディスクがセキュリティーロックのかかったデジタル装置に変更され、2020年までに老朽化したシステムの刷新が行われるとのことでした。

通帳レス口座、印鑑レス口座の登場

私たちが銀行に口座を開くときは、印鑑や身分証明書を持参し、通帳やカードなどを発行してもらうことがこれまでの流れでした。しかし、通帳を発行しない通帳レス口座や、契約の際に印鑑を必要とせず、その後も印鑑なしで取引ができる印鑑レス口座が登場しています。

記帳に出向く手間暇がかかる紙製の通帳ですが、ウェブ上で取引明細を確認できる通帳レス口座なら、記帳の手間が省けます。大手銀行が通帳レス口座、印鑑レス口座のサービスを開始した流れを受けて、紙製の通帳を目にする機会は減っていくのかもしれません。

ただし、通帳レス口座では、取引明細をウェブで確認できる期間が限定されており、その期間を過ぎた明細はプリントアウトしたり、利用者側で保存したりしなければ、データが手元に残りません。そのため、紙の通帳があったほうが安心という人もいるでしょう。パソコンの操作が苦手な高齢者には、ウェブでの取引明細確認のほうがかえって負担感が強くなるかもしれません。

本人が認知症になったときや、亡くなった場合に、目に見える形の通帳がないため、「どの銀行と取引があったのか」を、ご家族が確認する手掛かりが極端に減る、という可能性もあります。

通帳レス化、印鑑レス化に伴うさまざまな課題に、各銀行はどう取り組んでいくのか、私たち消費者ができることは何か、考えていきたいところです。

終わりに

ここまでご紹介した製品やサービスの他にも、すでにメーカー側が生産を終了している白熱電球は、私たちが手に取ることが減っていくでしょう。一方で、業界4位のカメラメーカー・カシオが生産終了を発表したコンパクトデジタルカメラは市場規模が縮小から拡大に転じつつあると報道されるなど、潮目が変わる時期を迎えているのかもしれません。

私たち消費者としては、新製品発売や生産終了に伴う市場の熱気に巻き込まれるだけでなく、「自分が本当に欲しいもの、必要なもの」を選び取ることが、今後ますます大切になるのではないでしょうか。

河野 陽炎