「孫疲れ」シニア世代のぼやき~子育てが終わらない…

育児にかかわる祖父母の意識に変化も

「なんで寝かせちゃったの、夜に寝なくなっちゃうでしょ!」

よく晴れた日の昼下がり、ベビーカーでスヤスヤ眠る3歳くらいの子どもをのぞきながら、1人の女性が彼女の父母らしき人に怒っています。

孫の子守りをしていたと思われる2人は、怒られてシュンとしています。

なぜ祖父母が「孫疲れ」するのか

近年、たびたび聞かれるようになった「孫疲れ」という言葉。結婚しても子どもを産んでも仕事を続ける女性が増えていますが、そうした女性の職場復帰を実家や義実家の父母がバックアップしているケースが見受けられます。

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職場に迷惑をかけないため、自分の雇用を守るためには、フレキシブルに動ける育児サポーターは心強い存在です。

しかし、筆者の顔見知りのシニア女性は、「孫はたまに会うくらいがいいわ。帰るとホッとする」と言います。

長い期間にわたる子育ての責任から解放され、好きなだけかわいがることのできる孫は愛おしい存在。しかし、再び大きな責任な背負うことになれば、それに伴う疲労感はかなりのものでしょう。

中には、頻繁に孫の世話を任されることで、すっかり疲弊してしまうおじいちゃん・おばあちゃんも少なからずいるようです。

妻にとって「夫は頼りにならない」!?

高度成長期、男性は家事や育児、PTAなどの地域活動を妻に委ね、長時間勤務をいとわぬ働き方で組織内で出世することができました。

共働き家庭が増えた今、女性もまた、いざという時に家事や育児を委ねられる存在が必要です。夫婦で助け合うのは理想的ですが、祖父母に育児を頼む母親側の言い分として、「夫に頼れないから」というものがあります。

明治安田生命が2016年に発表した調査結果「20~40代の出産と子育て」において、6歳以下の子どもがいる20代女性の37.8%が、「子育ての情報収集源として最も頼りになる人・もの」として、「自分の親」と回答。

「夫」と回答した女性は14.4%ですから、ダブルスコア以上の差がついています。

子育ての経験があり、ちょっと難しいリクエストでも伝えやすい自分の親は、夫以上に頼れる存在というケースもあるのかもしれません。

中には、女性が自分の実家のそばに住まいを構え、実家のサポートを惜しみなく受けている家庭もあります。「自分のそばにいてほしい」と願う母と、「子育てを任せて働きたい」と願う娘の需給がマッチした関係でもあります。

60代前半の男性の3人に1人がお金のサポートをしている

また、孫育て世代は、子どもから育児に必要な「手」だけでなく、経済的なサポートを期待されている場合もあります。

内閣府が発表した「平成29年版高齢社会白書(全体版)」によれば、60~64歳の男性の34.6%が「子や孫の生活費をまかなっている」(「生活費のほとんど」と「生活費の一部」の合計)と回答し、他の年齢層に比べて高くなっています。

お祝い、外食、旅行に教育。折に触れてイベントがある子育て期に孫の喜ぶ顔を見たさについサポートしてしまう……という人、老後資金として貯蓄してきたお金を泣く泣く切り崩して援助している人、その背景は様々でしょう。

さほど余裕がないにもかかわらず、良かれと思って始めた援助がだんだんと当たり前になり、子どもからは「孫の面倒を見れられて嬉しいでしょ」と言われ、「祖父母の心、父母知らず」といったケースもしばしば小耳にはさみます。

「子・孫からの自立」を望み始める動きも

孫育て世代の50代~70代は、日本が今より豊かな時期に膨大な時間を子どものために投資して育てあげ、「子育てこそが女性の幸せ」「子どもは身近な家族がケアすべき」と考えている人が少なからずいます。

内閣府の「平成27年度 高齢者の生活と意識に関する国際比較調査結果」では、27.1%の回答者が「孫といつも一緒にいるのがいい」と答え、これはスウェーデンの3.7%、アメリカの9.0%、ドイツの14.2%と比較すると、孫と一緒に過ごすことを望む割合は、他の国より高くなっています。

しかし、「いつも一緒にいるのがいい」という回答は、38年前の59.4%から半減し、「一定の距離が必要」と感じているシニア層が増えていることをうかがわせます。

家庭を顧みずに働き続け、孫を育てることで「子育て」の追体験を楽しむ男性、「家族」という枠組みの中でイキイキと過ごしてきた女性は共働きの子育て世代には心強い存在ですが、子・孫から自立することを望むシニア世代は、ますます増えていくのかもしれません。

【参考】高齢者と子どもの交流―意識と実態にみる日本の特徴―(平成27年度 高齢者の生活と意識に関する国際比較調査結果)

北川 和子

ニュースレター

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東京外国語大学卒。商社の営業職、専業主婦を経てライターに。男女の働き方、子育て世代の消費動向などに関心がある。