現在、3歳児の育児に奮闘中。子育ては大変だろうと覚悟はしていたものの、出産前は何とかなると思っていました。しかし、いざ始まってみると精神的に余裕がないことも多く、自分の未熟さを嫌というほど痛感することに。
そんな日々で心に生じた、育児をツライと感じてばかりの自分に対する罪悪感。これは、育児書の世界では「ダメな母親」と言われるような私が「私って母親失格かな?」という葛藤を乗り越えたエピソードです。
初めての育児で覚えた違和感
2014年、私は初めての出産を経験しました。それからは、怒涛のように過ぎゆく毎日。初めての授乳やおむつ替え、初めての病気、泣く子をあやしながらの家事や夜泣きと向き合う毎日。
激しい抵抗を受けながらの歯みがきや着替え、離乳食や幼児食はすべて手作りしなければという変な使命感、トイレトレーニングやママ友たちとのお付き合い、幼稚園選びのプレッシャーなど、同じぐらいの年齢を子を持つ母親たちが味わう苦労は、ひと通り経験してきたと思います。他にも、ここには書ききれないほどの不安や葛藤があったのは言うまでもありません。
周囲から見ると、優しい夫がいて、かわいい子どもができて、仲のいい円満家庭だった我が家。しかし、不安や葛藤だらけの育児に追われるうちに、私はひとつの違和感を覚えたのです。
―あら? 私、育児が楽しいと思えない―
私は昔から子どもが大好きで「大学を出たら保育科のある学校に入りなおして、保育士になろう」と夢見ていた時期もあるほどです。それなのに、最初の2年半は「子育てって楽しい」と思ったことはほぼなく、むしろ「ひとりにして! この毎日から解放されたい」と追いつめられていることが多かったように感じます。
SNSを見れば、いいことも悪いこともひっくるめて子どもがいる日々を楽しんでいる同級生の姿。子どもに対して広い心で接することのできない自分を責め「私って母親に向いていないのかな? ごめんね、こんな母親で」と、子どもの寝顔を見ながら泣いた日もありました。
自覚している以上に母親だった
私はまだ幼児までの育児しか経験したことがないので、子育てを終えた方からするとまだまだこれからの段階です。しかし、これまで何度も「子育てがツライ」と感じたなかで、一度も思わなかったことがひとつだけあります。それは「産まなきゃよかった」ということ。どんなに腹が立っても、今この瞬間あっちに行ってくれと思っても、いなくなってくれと思ったことはありません。
信じられない方もいるかもしれませんが、怒り狂って子どもに向かって物を投げつけてしまったこともあります。もちろん、直接叩いたり食事を抜いたりしたことはありません。しかし、私の行動は子どもに恐怖を与えるものとして、精神的な虐待と感じる人もいることでしょう。
世の一般論で言えば、ダメな母親です。しかし物を投げてしまったときも、丸めたティッシュやタオルなど、怪我をしないであろうものばかりを無意識のうちに選んでいました。ギリギリのラインを越えてしまいそうな危うさを持ちながら、母親としてきちんと我が子のことは愛せていたのです。
ケガをさせなければいいと自分の行動を肯定するわけではありませんし、何度も自己嫌悪に陥りました。しかし、子どもを立派に育てたい気持ちが強いからこそイライラし、不安を抱くこともあったのだろうとも感じるのです。
母親だって人間
母親という存在に対して、世間の理想はとても高いように感じます。出産した瞬間に、ひとりの人間ではなく理想通りの母親として生きるよう大変身することを求められているような感覚。情報があふれているからこそ、そのプレッシャーを感じることも多いのかもしれませんね。
しかし、「こうでなければいけない」と思うほど、その理想に押しつぶされてしまうことはないでしょうか。母親と子どもだって、人間同士。親子といっても、別の人間。イライラすることもあるでしょう。
ママ友のひとりが、こう言っていました。「怒らないって心に決めるのはやめた。1分だけ怒ることにしたの」。
この言葉を聞いたとき、私の心に衝撃が走りました。それから私も、怒っている私を否定しないようにしました。つい感情的に怒ってしまったときは、素直に「さっきはごめんね」と子どもに謝ることにしたのです。すると不思議なことに、怒りをぶつけることが少なくなっていきました。
もちろん、だからといって感情のままに怒るのが正解というわけではありません。けれど、それを機になぜか子どもがイヤイヤしている姿も、大声で泣きわめいている姿も、なんだか微笑ましく思えるようになったのです。
まとめ
子育てをしていると、母親としての自信がなくなることが何度もあります。しかし、子育てという行為を楽しめなくても、子どもに対する愛情があれば、それだけで充分なのかもしれません。
うまくいかない日があっても「今日はダメな母親だったな、明日は今日の分まで笑わせてあげよう」と、少し肩の力を抜いてみませんか? 悩みながらも育児に向き合っている姿は、きっと素敵な母親そのものでしょう。
大中 千景