皆さま こんにちは。アセットマネジメントOneで、チーフ・グローバル・ストラテジストを務めます柏原延行です。
相変わらず風が強い日も多いように感じますが、日中は気温が上昇するようになりました。私のオフィスの周辺では、夏かと思うほど強い日差しのなかで、サツキがピンク色に輝いています。特に、日本銀行の周辺のサツキは大きな面積に植樹されており、ボリューム感がありとても綺麗です。
さて、今回の記事のポイントは、以下の通りです。
- 前回コラムでは、新興国の脆弱性懸念は、「①米国の金利上昇は、新興国からの資金流出を誘発するという新興国全体の問題」と「②一部新興国の脆弱性(ある国の固有の問題)」から成り立っていることを説明した。
- トルコ・リラの不安定化の背景にある、「エルドアン大統領が中央銀行への関与を強める」という報道は、金本位制終焉後の通貨価値を守るしくみである「中央銀行の独立性」への介入であり、通貨価値の大きな不安定化材料になって当然であると思われる。
- 前回コラムで注目すべきと言及した、「新興国の株価指標」の値動きを「先進国の株価指標」比で分析した。長い期間をとれば、新興国の経済成長は、成熟した先進国よりも高いと考えるべきであり、この結果、新興国の株価指標が趨勢的には優位にあると思われる。しかし、2011年頃から見ると、むしろ、先進国が優位な局面が多かった(足元では新興国優位)。
- 相対的な優位性は、過去は一定の期間、トレンドをもって続いており、足元の新興国優位の展開が継続するかに注目したい(なお、筆者は新興国優位のトレンドが継続すると考える)。
トルコ・リラが不安定になっています(米ドル/リラは、執筆時点で今年のリラの安値を更新中)。
メディアによると、強権的な政権運営を続けるエルドアン大統領は、再選後には金融政策の決定を巡り、一段と強い影響力を行使する考えを示したとされます。
通貨(紙幣)は、単なる紙にすぎません。したがって、通貨の発行者は、この紙に価値があると、国民や海外投資家などに信用してもらう必要があります。
この信用を得るための手段は、かつては、通貨(米ドル)と金を交換することが可能な金本位性でした。しかし、米ドルの金本位制は、1970年代前半のニクソン米大統領の発表を契機に終わりを告げました。
このため、金の裏付けを失った通貨には、その価値を保持するための仕組みが必要になりました。
この新しい仕組みが、中央銀行の独立性を確保することです。通貨の価値を守ることを第一義的な目標とする機関があり、その機関の独立性を確保することで通貨の価値を守れる(インフレ(orデフレ)がコントロールできる)と考えたわけです。
トルコの場合、現大統領が中央銀行の独立性を弱めることを示唆しているわけですから、通貨安になって当然であると思います。
米10年国債利回りの3%超えが注目を集める中で、トルコ・リラの不安定化が進んでいるため、「米金利の上昇+新興国からの資金流出」に対する懸念が高まっていますが、上記のように、トルコ・リラに関しては、固有の要因が強いと考えています。
そうはいっても、 「米金利の上昇+新興国からの資金流出」を心配される方が多いのではないかと拝察しますので、前回コラムで、新興国の状況をチェックするために私が重要であると述べさせていただいた、MSCIエマージング・マーケット・インデックス(以下、新興国株価指数という)の動きを、もう少し詳しく確認してみたいと考えます。
新興国株価指数は、前回記事の図表3と(傾向は)ほとんど変わっていないため、今回はMSCIワールド・インデックス(以下、先進国株価指数)との対比でご説明したいと考えます。
この2つの指数の動きを比較するために、新興国株価指数を先進国株価指数で割ったグラフを作成しました(新興国/先進国なので、新興国が先進国比上昇しているときに、グラフは上昇します)。
一般的に新興国の経済成長は、成熟化が進んだ先進国の経済成長率を上回り(新興国は、新しく興る国です)、この結果、新興国株価の騰落率は、先進国比で優れると考えられています。
しかしながら、図表1を見ると、①2011年頃から、先進国株価指数のパフォーマンスが新興国株価指数比で好調な時期が多かったこと、②足元では、新興国優位にトレンド転換しているように見えること、③どちらが優位であるかのトレンドは、過去では一定期間継続した場合が多いことが分かります。
ここで紙面が尽きてしまいました。その3に続きます。
(2018年5月18日 13:15頃執筆)
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柏原 延行