この記事では、以下のようなマンション売却の流れ、税金などの売却にかかる諸費用、主な注意点について詳しくご説明します。
この記事を書いている人:株式会社Housmart代表取締役 針山昌幸
一橋大学で経済学を学ぶ。大学卒業後、大手不動産会社で不動産仲介、用地の仕入、住宅の企画など幅広く担当。顧客の利益が無視された不動産業界の慣習や仕組みを変えたいと志す。株式会社ハウスマートを設立し、代表取締役社長に就任。顧客本位の不動産サービスを多数展開している。著書「中古マンション本当にかしこい買い方・選び方」がAmazonランキング・ベストセラー1位(マンションカテゴリー)を獲得。会社経営を執り行う傍ら、テレビや雑誌への出演など、マンション専門家としての活動も行う。
マンション売却の流れ
マンション売却は、大きく分けて
- 価格査定
- 売却活動
- 契約・決済
の3ステップとなっています。
中古マンションを購入する時と異なり、売却活動においては自ら足を運んで手続きをする機会は多くないです。しかし、1つ1つの決断が成功、失敗を左右します。
Step1 価格査定・媒介契約締結(約1~2週間)
Step1-1 マンション売却の理由を整理する
佐藤さん:マンションの売却は初めての経験で、どんなことから始めたら良いかわかりません。最初はとりあえず査定からやってみようかなと思っているのですが、これから売却を行っていく上で注意点はありますか?
針山:ご相談ありがとうございます!まずは売却の動機を整理してみることから始めましょう!佐藤さんがマンション売却を検討し始めたきっかけはどういったものでしょうか?
佐藤さん:これまで品川区の2LDKのマンションに嫁と子供(1人)と住んでいたのですが、子供が小学校に入学してからどうも「手狭感」を感じるようになってしまって。そこで、貯金もある程度たまって来たので、住み替えをしてもっと広いマンションに住んで子供に大きなお部屋を与えたいなと思った次第です。
針山:なるほど、お子さん思いのいいお父さんですね。佐藤さんご一家がぴったりな物件に住み替えできるように、順を追ってマンション売却の計画を立てていきましょう!
最初の売却ステップで重要なのは自宅マンションの売却に至る動機を整理することです。
マンションの売却に至る主な理由には、買い替え、離婚、相続、転勤などがありますが、それぞれの売却理由別に注意するポイントが異なります。
まずは売却の理由についてじっくりと考え、本当に売却するべきなのかについて考えてみましょう。
中古マンションを購入される方の中には、「このマンションはどんな人が住んでいたんだろう」ということを気にされる。そして「なぜ、このマンションを売ろうと思ったのか?」ということに対しても、とても敏感になります。売却の理由が「ネガティブ」なものだと、買い主様の「買おうかな」という気持ちにマイナスの影響が生まれてしまうのです。
たとえ本当はネガティブな理由だとしても、買い主様に気持ち良く買って頂くために「ポジティブな売却理由」に表現を変えることは有効な手段です。例えば「マンションが手狭になってきたから」ではなく「子供のための部屋を確保したかったから」と言ったり、「マンションが不便だから」ではなく「ライフスタイルに合ったマンションを購入することにしたから」などという形でポジティブに捉え直してみましょう。
Step1-2 住宅ローンの残債額を確認する
針山:まず最初に、現時点での住宅ローンの残債がどれくらいあるかを確認しておきましょう。マンションを売却するには、ローン残額を完済し、抵当権を抹消することが必要です。
佐藤さん:つまり、残債が支払えるように売却プランを計画することが重要なのですね!
針山:その通りです!「マンションの売却価格 > 住宅ローンの残債額 + 売却にかかる諸費用」となるように売却計画を立てる必要があります。
佐藤さん:もし売却価格が残債と諸費用の合計を下回った場合、貯金を充てる以外に選択肢はありますか?
針山:不足金額を預貯金で充当できるケースは稀かもしれません。もし株式などの資産をお持ちの場合は、それらを売却して残債の支払いをするケースもありますし、または、買い替えローンを利用して新しい住み替え先の自宅に抵当権を設定し直すことが考えられます。
マンションの価格査定とは「このマンションがいくらで売れるのか」という目安の金額を出してもらうことです。価格査定を依頼する前に、住宅ローンの残債がいくらあるのか確認しておきましょう。仮に住宅ローンの残債の方が、実際に売れた金額よりも多かった場合、足りない分を自分で現金で準備しなくてはいけなくなってしまいます。不動産会社の営業マンは、あなたの実際の残債までは把握することが出来ず、また売却依頼を受ける事に必死の為、意外と気づかないものです。
もしマンションを売った金額が住宅ローンの残高に足りなければ銀行は抵当権(住宅ローンが支払えない場合にマンションを銀行が差し押さえる権利)を外してはくれません。もちろん、売却金額に加えて手持ちの現金で住宅ローンの残りと相殺することが出来れば抵当権を外すことが出来ます。
抵当権が外せない場合の一般的な対策方法としては、新しく買う中古マンションに対して抵当権を設定し直すという方法があります。マンションを売却する理由として一番多い理由は「住み替え」になりますので、また新しく中古マンションを購入される方が多いのです。その中古マンションに対して、売却金額の不足分の住宅ローン残債を含めた抵当権を設定することになります。
また、マンションの所有者があなただけでなく複数人いる場合、誰が代表者になって不動産会社とやりとりするのか、いくらぐらいで売却できたらOKなのかということを予め話し合っておきましょう。後から揉めると大変な事になってしまいます。
Step1-3 必要書類を準備する
針山:マンション売却に必要な書類の準備もお早めに済ませておくことをおすすめします。特に気をつけたいのは、マンションの引き渡し時に司法書士からもらっているはずの「権利済証」。もし紛失してしまった場合は、別途手続きが必要となります。
佐藤さん:バッチリ、保管しています!
針山:さすがです!加えて、マンションを購入したときの売買契約書なども持っておくとスムーズにいきますよ。
佐藤さん:用意します!
マンション売却に絶対に必要な書類は権利済証、もしくは登記情報識別通知と言われる書類です。マンションの引き渡し後に司法書士から届いた書類になります。もしこの権利済証(登記情報識別通知)を無くしていると、別途手続きが必要となりますので、早めに不動産会社に相談しましょう。
加えて、マンションを買った時の売買契約書・重要事項説明書、パンフレット(チラシ)、住宅ローンの支払い明細などの書類を用意しておくと、不動産会社との相談がスムーズに行きます。
Step1-4 相場勘を掴む
針山:次は相場を把握してみましょう。ポータルサイトなどで、自宅と似たような条件のマンションの売り出し価格を眺めて見ると相場勘が掴めます!
佐藤さん:ポータルサイトの売り出し価格って、どこまで信用していいものなのでしょうか?
針山:佐藤さん鋭い!ポータルに掲載されている価格はあくまでも売り出し価格で、相場よりも大きく上回った金額になっているケースもあります。
佐藤さん:なるほど、あくまで目安なんですね〜。
針山:他にも、カウルライブラリーというサイトはおすすめです。
佐藤さん:どういった特徴があるのですか?
針山:過去の売買事例を一覧で見ることができます。こういった情報はポータルサイトには掲載されていません。
佐藤さん:すごく便利ですね!
実際に不動産会社に価格査定を頼む前に、自分の目で売却の相場をチェックしてみましょう。相場のチェックにはSUUMOやHOME’Sで今実際に売りに出ている物件の価格をチェックしたり、カウルライブラリーで同じマンション内の売出事例を確認するのが便利です。
不動産ポータルサイトで売却の相場を調べる時は「駅距離」や「築年数」「階数」「間取り」等がなるべく近しい物件を選び、1平米あたりの価格を確認します。あとは自分のマンションの広さに、1平米あたりの価格を掛け合わせれば、おおよその金額を算出することが出来ます。
なお不動産ポータルサイトに掲載されているのは、あくまで「今売りに出ている物件」ですので、価格が高かったとしても、その金額で売れるかどうかは分かりません。中には相場を完全に超えた高値で販売している物件もありますので「これなら私の部屋もこれぐらいの金額で売れる!」と考えるのは早計です。
Step1-5 金額査定をしてもらう
佐藤さん:針山さん、査定をしてもらう上で注意するべき点はありますか?
針山:ズバリ、査定額を鵜呑みにしないことです!あくまで査定額は参考程度にとどめておきましょう。中には、媒介契約を結ぶ目的で高い査定額を提示してくる不動産会社もあります。
佐藤さん:査定額だけで仲介会社を判断してはいけないということですね。
残債の確認、権利済み証などの必要書類、相場観を把握するなどの下準備が整ったら、早速マンションの査定をしてもらいましょう。不動産会社のWEBページから問い合わせるのもいいですし、近所の不動産会社に行く方法もあります。
あまりオススメしないのが、不動産売却の一括査定サービスです。一見、理にかなっているように見える不動産売却の一括査定サービスですが、6〜10社程度に見積もり依頼が行く事から、どの不動産会社もライバルに勝つ為本当は売れる事が見込めないような高値で査定金額を出し、結果としていつまでもマンションが売れないということが良くあります。
これが査定金額で必ず不動産会社が買い取ってくれるのであれば話は別なのですが、査定はあくまで「査定」でしかないので、査定金額は高いものの、本当にその金額で売れるかどうかは、また別の話なのです。
一括売却サービスを利用すると、6〜10社から一斉に電話がかかってきてしまい、とても対応出来ませんので(全ての不動産会社に部屋を見せる事になります)、自分で絞った不動産会社1〜3社程度に問い合わせをする方がオススメです。
金額査定の方法
マンションの査定方法はいくつか方法があります。居住用のマンションは殆どのケースが「取引事例比較法」によって査定されます。
- 取引事例比較法:近隣の取引事例を元に価格を算出する
- 原価法:物件を建築するコストや耐用年数などを元に価格を算出する
- 収益還元法:物件から発生する収益と利回りを元に価格を算出する
取引事例比較法の場合、ここ1〜3年の間に取引をされたデータを元に、下記のような視点からあなたの部屋であれば、いくらぐらいで売却できそうか算出していくのです。
- 広さ
- 間取り
- 築年数
- 室内の状況
- 眺望
- 方角
- 駅からの距離
- 共用施設
- 管理状態
- 近隣施設
- 学区
- マンションの施工会社
より正確な査定のためには、不動産会社に部屋の中を見せる必要があります。お部屋の痛み具合や、日当たり、眺望、通風などは、部屋の中を確認しないと分からない為です。
不動産会社の営業マンに部屋を見せた後、査定金額を出してもらいましょう。査定金額を聞いたら「なぜその金額で売れるのか」という根拠をしっかりと聞く事が重要です。単にこちらの気を引く為、高い査定金額を出してきているのであれば要注意です。
Step1-6 媒介契約を結ぶ
佐藤さん:先ほどの「媒介契約」とは何ですか?
針山:はい。媒介契約とは、売却を依頼する不動産会社と結ぶ契約のことで、「専任媒介契約」「専属専任媒介契約」「一般媒介契約」という3種類の契約があります。
佐藤さん:なんだか、難しそうな名前ですね…それぞれどんな特徴を持っているのでしょうか?
針山:とても専門的な用語ですよね…..。それぞれの媒介契約の特徴やメリット・デメリットについて整理してみましたので、ご覧ください!
佐藤さん:なるほど..もっとも縛りがある契約が専属専任媒介契約で、反対にもっとも縛りが緩いのが一般媒介契約なのですね。「どの不動産会社と、どの媒介契約を結ぶか」について、しっかり考えないといけないですね。
針山:実際には、査定額を見るだけで仲介会社の力量を判断するのは至難の技と言えるので、ぜひ一度担当者と会ってみて「査定の根拠」について聞いてみることをおすすめします。
売却活動を依頼する際に結ぶ契約を「媒介契約」といいます。売却活動をお願いする不動産会社の数は一社でも複数社でも大丈夫ですが、媒介契約の種類によっては「ウチの会社にしか売却活動をさせてはいけません」という内容になっているので注意が必要です。
媒介契約には、以下の3つがあります。
- 一般媒介契約
- 専任媒介契約
- 専属専任媒介契約
一般媒介契約はもっとも緩やかな契約で、指定流通機構(レインズ)への登録や契約期間に決まりがありません。専任媒介契約、専属専任媒介契約の場合、指定流通機構への登録は義務となっていることに加え契約の期間は3ヶ月が上限として決められています。
どんな不動産仲介業者と媒介契約を結ぶのが良いのでしょうか?
不動産仲介業者はマンション売却時に受け取る仲介手数料で利益を得ています。競合の多いマンションの売買仲介においては、不動産仲介業者としてはまずは媒介契約を結ぶことが先決です。不動産仲介業者の中にはこうした競合対策として、最初に査定価格を高く出しておき、まずは媒介契約を結んだ後、どんどん売買価格を下げていくという方法を取る業者もあります。
依頼者は初心者であることがほとんどですから、査定価格を高く出してくれる業者を選びがちです。マンションの仲介を依頼する業者は、査定価格ではなく、実際にどのように活動してくれるのかを見て決めるようにしましょう。
どの会社とどんな媒介契約を結ぶかは、査定金額だけでなく「どのようにマンションを売却するつもりか」「どこがこのマンションのアピールポイントか?」といった売却戦略も確認して選ぶようにしましょう。
営業マンと話した時に「信頼できそう」という印象を受けるかどうかも大事なポイント。実際に買主、もしくは買主側の不動産会社と交渉をするのは、その営業マンになるからです。
以下は、営業マンの力量を試す質問例です。
- 「最近、この物件の近くで売却の成約はありましたか?」
- 「現在、このマンションを購入しそうなお客様はいますか?」
1つ目の質問について。売却するマンションと同じような条件の売却の成約があったかどうか確認しておきましょう。その際にどのような販売戦略を工夫したのかを聞いておきましょう。しっかりとした戦略があれば次も活かせる可能性があります。
2つ目の質問について。売れている営業マンは常に複数のお客様の情報を持っているものです。状況にもよりますが、こうした質問に即答できるような営業マンであれば、実際にそのお客様と成約にならなくても、今後成約する可能性は高いでしょう。
Step1のまとめ
- マンション売却の理由を明確化する
- 住宅ローンの残債額を確認する
- マンション売却に必要な書類を準備する
- 売却する自宅マンションの相場観を掴む
- 金額査定をしてもらう
- 媒介契約を結ぶ
Step2 マンション売却活動(約2ヶ月〜1年)
査定が終わったら、いよいよ売却活動のスタートです。売り出し価格の決定、準備、販売活動、内覧対応、価格交渉など大事な事がてんこもりです。
佐藤さん:針山さん、マンション売却活動のポイントって何でしょうか?
針山:ズバリ、この3つです!
佐藤さん:ふむふむ。まず、最初の「セールスポイントを伝える」とはどういうことでしょうか?
針山:これは、実際にその物件に住んでみて初めてわかる利便性の良さなどを整理して購入希望者に伝えることです!
佐藤さん:確かに、自分がマンションを購入した時も売主さんが懇切丁寧に周辺環境の魅力について教えてくれたのはとても有り難かったです。
針山:また、仲介会社が作成する物件のチラシやポータルサイトにお部屋の写真がたくさん掲載されていることも大事なポイントです!
佐藤さん:なるほど!できるだけ写真にできる箇所は写真を撮ってみます!
針山:はい。佐藤様のお部屋は眺望が良く、富士山やスカイツリーが見えるので、晴れた日に撮影してその写真を広告に使ってもらうことも可能ですよ。
佐藤さん:次に、「おもてなし」とありますが、これはどういうことでしょうか?
針山:これは、いかに購入希望者に気持ちよくなってもらうかがマンション売却を成功に導くということです!掃除は絶対にしておきたいですね。
佐藤さん:なるほど!3つ目のポイントは、おもてなしをいかに根気強くできるかということですね?
針山:おっしゃる通りです!毎週末、お客様を受け入れる体制を作れるかどうかは非常に大事です。
佐藤さん:迎え入れる売主側から見ると何度も繰り返しやっている「内覧」ですが、購入希望者の方にとっては初めての「内覧」ですもんね。
針山:いいですね!その心意気があれば、必ずマンション売却で成功できますよ!
Step2-1 売り出し価格を決める
自宅マンションの売却を任せる不動産会社を決めたら、いよいよ実際に売りに出す金額を決めます。基本的には不動産会社の査定金額を元に値付けをします。
ここで重要なのは、あまり強気の価格設定をしないこと。相場より少し高めぐらいが理想です。
販売当初に相場より高く設定して反響がなかった場合、ちょこちょこと細かい単位で価格を値下げするのはおすすめしません。なぜかというと「まだ値下がりするのでは?」というイメージを購入希望者に持たれてしまうからです。マンションを探している方は物件情報を日々ウォッチしているため、価格動向に関してよく把握しています。
そのため、細かい単位での値下げをしていると「この物件また価格が下がったから、もう少し待っていたらまた下がるのでは?」と思われてしまいがちです。逆に大幅な値段改定をした場合は「こんなに下がったから売れてしまうかも!」と焦らせることもできます。
マンションを早く売るためにも、相場を基準に最初の売り出し価格を決めることが重要です!
また、買主の値引き交渉を想定し、希望売却価格に端数分を上乗せすることも有効です。
Step2-2 掃除をする
販売価格を決めたら、実際に買主候補が来た時の準備をします。大事なのはとにかく掃除です。とにかく物を捨てて、少しでも部屋をスッキリ見せましょう。レンタルスペース、貸し倉庫などを借りて、荷物を移動させるのも有効です。荷物が多いと、せっかく広い部屋も圧倒的に狭く見えてしまいます。
掃除は非常に重要なポイントです。特に玄関、水周り、ベランダ、クローゼット、キッチン、お風呂、トイレなどの水回りは徹底的に掃除しましょう。プロのクリーニング(10万円程度)を一度入れるのがオススメです。
タバコやペットなどで壁紙が汚れている、傷ついている場合や、壁に画鋲などの穴が空いている場合にはリフォームを行いましょう。壁紙の汚れは、想像以上に販売価格に影響します。壁紙リフォームは50〜70万円程度で行うことが出来ます。あくまでマイナスをゼロに戻すようなリフォームは行うべきですが、大規模なリフォームをする必要はありません。
また、お部屋のにおいにも、気をつけましょう。芳香剤を置いておくだけでも購入希望者のお部屋に対する印象はガラリと変わるはずです。
掃除をしたら、写真を撮って不動産会社に送リましょう。売却を依頼された不動産会社は、ネット媒体広告などに物件を掲載して集客活動を行います。その際に写真があるか無いかで反響が大きく違ってきます。
また、お部屋のインテリアを綺麗にコーディネートしてもらう「ホームステージング」というサービスの利用も検討してみてはいかがでしょうか?何も家具がない状態で内覧をするよりも、実際にコーディネートした状態を見せることで購入希望者もイメージを持ちやすいと思います。
Step2-3 内覧対応をする
実際に売却活動が始まると、見学の依頼が来ます。買主候補が「マンションを見てみたい」といってマンションにやってくるのです。この見学会はあなたのマンションの良さをアピールする最大のチャンスです。徹底的に掃除をし、照明器具を取り替え、全ての部屋を見れるようにし、内覧の前には換気を十分にするようにしましょう。
内覧の依頼は前日や、下手をすると当日に依頼が来る事もあります。「なんて非常識な!」と思うかもしれませんが、極力予定を合わせるようしましょう。「不動産はご縁もの」とは良く言いますが、買主は数ある不動産の中から、たまたま、あなたの物件を見つけ出したのです。前から不動産ポータルサイトを見て気になっていた物件を、たまたま内覧の前日や当日に、不動産会社の営業マンに「あの物件って見れますか?」と聞くことは良くあることです。
今週予定が合わないと、他の物件を購入してしまうかもしれません。1回の内覧には、とてつもない価値があります。なんとかして、全ての内覧を受けるようにしてください。
また、マンションの場合、室内を公開するイベント「オープンハウス」を開催することでも、多くの集客が見込めます。もしまだ居住中であっても、オープンハウスの時間帯だけ外出し、開催終了後に帰宅するなどの方法をとれば開催は可能になります。
Step2-4 買付(購入申込書)を受け取る
マンションが気に入った買主は、書面で不動産会社を通して「買付(購入申込書)」を提出します。この買付(購入申込書)には「どんな条件でマンションを購入したいのか」という情報が書いてありますので、内容をよく確認しましょう。この購入申込書はあくまでも「意思表示」にすぎませんので法的拘束力はありません。キャンセルされることも十分にありますので、相手の熱が冷めないうちに素早く対応方法を決めましょう。
Step2-4-1 引き渡し猶予の交渉をする場合もある
あなたがマンションを売却した後、新しく家を購入して住む予定の場合は引き渡し猶予の交渉が必要となるケースがあります。この交渉が必要となるのは、家を売却した代金で新しい家を購入する「住み替え」の場合です。
通常の不動産取引ですと、家を売却した代金を受け取るのと同時に鍵を買主に渡し、家を引き渡す必要があります。しかし家を売却した後に、新しい家の引き渡しを受ける場合、理想的には下記のような流れになります。
- 家を売って代金を受け取る
- 新しい家の代金を支払って引き渡しを受ける
- 引越し作業を行う
つまり「1.家を売って代金を受け取る」を行った後に、「3.引越し作業を行う」を行うまで買主に居住を待ってもらう必要が発生するのです。この買主に居住を待ってもらうことを引き渡し猶予といい、最大で1週間ほど交渉することが可能な場合があります。
もし引き渡し猶予の交渉ができない場合は、マンスリーマンションなどに一旦住む形になります。
売却中に既にマンションから引越しが終わっている場合は、引き渡し猶予は必要ありません。
Step2のポイント
売却活動のキーワードは、
- セールスポイントを明確に購入希望者に伝える
- 購入希望者に対するおもてなしを徹底する
- 忍耐力を持って売却活動にあたること
売却活動の流れは、
- 売り出し価格を決める
- 掃除を行う
- 内覧対応
- 購入申込書をもらう
Step3 契約・決済(約1ヶ月)
佐藤さん:針山さんのアドバイスの通りに売却活動をして、素敵な買主さんから購入申し込み書をもらい、無事条件合意しました!
針山:おめでとうございます!最後まで気を引き締めて契約と決済をトラブルなく終えましょう!
佐藤さん:はい!契約と決済で注意点はありますか?
針山:付帯設備の確認を怠ったケースは注意が必要です!
佐藤さん:付帯設備表とは何でしょうか?
針山:付帯設備表とは、そのマンションにはどんな設備があっって、痛み具合などの状況はどうなのかが記載されている書類です。
佐藤さん:なるほど。より具体的にどういう点に気をつければよいでしょうか?
針山:基本的に、設備は付帯設備表に記載している通りに引き渡すことが売主の義務となるので、もし引き渡し時に、契約時と状態が異なっている場合は売主の負担で修復することになります。使っていない部屋のエアコンや、床下暖房などは見落としがちなポイントです。
佐藤さん:なるほど、隅々まで設備の状態をチェックする必要がありますね。
購入申込書の内容で合意すれば、いよいよ契約になります。
Step3-1 売買契約を締結する
購入申込書を受け取ってから1週間後が契約を行うタイミングの目安です。契約をする前に必ず買主の住宅ローン事前審査が通っているかを確認するようにしましょう。
売買契約日の前日〜3日前に売買契約書が仲介会社から送られて来ます。なるべく契約書は事前に内容を確認するようにしましょう。
Step3-1-1 売買契約に必要なもの
売買契約日当日までに、準備するものは下記になります。
- 本人確認書類
- 実印
- 印鑑証明書
- 登記済証(もしくは登記情報識別通知書)
- 仲介手数料の半金
印鑑は必ず「実印」でなくてはいけません。不動産取引では、本人確認書類だけでは不十分で「登記済証」「実印」「印鑑証明書」「登記済証」の4点セットで、本当に不動産の所有者かどうかを確認するのです。
この中で印鑑証明書だけは、あらかじめ役所にいくか、マイナンバーカードを使いコンビニなどで取得する必要がありますので注意が必要です。
Step3-1-2 売買契約日当日
いよいよ待ちにまった売買契約当日。必要なものを持っていくのを忘れないようにしましょう。売買契約にかかかる時間は全体で1時間半〜2時間。売主は売買契約の途中から参加することが多いので、時間としては1時間弱になります。
売買契約ではマンションの詳細を説明した重要事項説明書、契約条件をまとめた売買契約書、付帯設備表と物件情報報告書を読み合わせ、署名・捺印を行い、最後に手付金の授受を行います。
手付金を受け取ったら、大事に保管する必要があります。手付金は売買代金の一部ですが、引き渡しまでは絶対に使わないようにしましょう。万が一売買契約が白紙となって解約された場合、手付金を全額返す必要があるからです。あくまでも仮のお金として、大事に保管することが必須です。
また、売買契約の際に引渡し日のすり合わせをすることも重要なポイントです。
契約書に記載されている引き渡し日はあくまで「最大に伸びた場合の引き渡し日」という意味ですので、買主によってはもっと早く引き渡しをして欲しい人もいます。
とはいえこちらとしても、引っ越しのスケジュールがありますので、お互いの期待値が擦り合うように話をしておくことが重要です。
Step3-1-3 売買契約を別々に行うパターンもある
売買契約は通常、売主と買主、売主側の仲介業者と買主側の仲介業者が顔を付き合わせて、一ヵ所に集まって契約を行います。ただどうしても売主と買主のスケジュールが合わない場合は、それぞれ別個に売買契約を行う場合があります。その場合は手付金を仲介会社経由で受け取ったり、振込によって受け取ったりします。
Step3-2 引き渡し日の調整をする
売買契約後、買主は住宅ローンの本審査申込をします。売買契約後から2週間〜1ヶ月後を目安に、買主の本審査通過の連絡が仲介業者を通して来るはずです。買主が本審査を通過すると、住宅ローンを借りられることが確定しますので、引き渡し日の調整を買主と仲介業者を通して行います。
引き渡し日決定の注意点としては、引き渡しを平日の午前中に行う必要があるという点です。これは買主から売買代金の振り込みを受けるために、平日しか決済が行えないからです。またその日中に登記手続きを行う必要があるので、午前中に行うのです。仕事がある方は、午前休などを取る必要がありますので、注意が必要です。
また1度引き渡し日を確定すると、Step3-4でご説明する売主の抵当権抹消書類、買主の銀行とのお金を借りる契約である金銭消費貸借契約の関係で、引き渡し日を変更することは出来ない点も要注意です。
Step3-3 銀行に連絡する
売却予定のマンションに抵当権が付いている場合(住宅ローンの借入がある場合)、引き渡し日が確定したら住宅ローンを借りている銀行に連絡をして抵当権抹消書類を準備してもらいましょう。
抵当権抹消書類とは「この日に住宅ローンの残高を返済してもらうので、抵当権を外しますよ」と銀行が宣言する書類のこと。この書類を銀行に作ってもらうことで、抵当権がない状態で不動産を買主に引き渡すことが出来るのです。
抵当権抹消書類は銀行に依頼してから、約2週間、準備に時間がかかります。フラット35の場合、もっと時間がかかる場合もありますので、お引き渡し日まで時間の余裕を持って銀行に依頼するようにしましょう。
万が一、引き渡し日がズレた場合、抵当権抹消書類を再度作り直すために2週間、時間がかかってしまいます。
Step3-4 引越し作業を進める
銀行との手続きと同時並行で引越し作業を進めましょう。「Step3-1-1」でご説明した「引き渡し猶予」を使う場合はまだ引越しをする必要はありませんが、荷物は減らすようにしましょう。
残置物が残っていると契約違反になってしまいますので、引越しは確実に終わらせる必要があります。引き渡し日ギリギリの引越しですと引越しが1日で終わらない可能性などもありますので、なるべく早いタイミングで引越しを行うようにしましょう。冷蔵庫、食器棚などは残置物になりますので、買主の依頼がない場合は撤去が必要です。エアコンは、買主との相談によります。
マンション設備の説明書類、分譲時のパンフレットはお部屋の中においたままで大丈夫です。
Step3-5 現地の立会いをする
引越し作業が終わると、売主・買主・売主側の仲介・買主側の仲介立会いのもと、現地の最終確認を行います。荷物が撤去されているか、設備の故障がないかを確認する立会いになります。売買契約時に既に空室となっている場合は、現地の立会いを省略する場合もあります。
Step3-6 引き渡し(決済)
いよいよ引き渡し日です。引き渡しの手続きは通常、買主が利用する住宅ローンの銀行で行います。店舗を持たないネット銀行の住宅ローンの場合は仲介会社の店舗で行うケースや、仲介会社の店舗で書類手続きを行い、その後銀行窓口に移動するパターンなどもあります。
引き渡し(決済)の持ち物は下記のようなものです。
- お部屋の鍵全て(宅配ロッカーも含む)
- 身分証明書
- 登記済証(登記識別情報通知書)
- 印鑑(実印)
- 印鑑証明書(3ヶ月以内のもの)
- 住民票(登記名義人変更登記が必要な場合のみ)
- 振り込み予定の銀行口座の通帳、キャッシュカード
- マンション設備の説明書類、分譲時のパンフレット ※お部屋に置いた状態でも大丈夫です
- 仲介手数料の半金(当日、買主からの支払い代金から支払うケースが多いです)
- 司法書士への報酬(当日、買主からの支払い代金から支払うケースが多いです)
Step3 契約・決済の流れ
- 売買契約
- 引き渡し日の調整
- 銀行に連絡
- 引っ越し
- 立会い
- 引き渡し
マンション売却の諸費用
針山:マンション売却に必要な諸費用についてこの段落では解説します。
佐藤さん:税金関連はとてもややこしいイメージがあります。
針山:そうですね、特に譲渡所得税の知識はしっかりと押さえておきたいところです!
佐藤さん:例えばどんな知識でしょうか?
針山:居住用財産の3,000万円特別控除や、買い替え特例についてですね。
佐藤さん:とっつきにくいですが、しっかり読んでみます!
マンション売却では、売り主側が負担
する諸費用があります。主な売却諸費用は以下の4つです。
- 譲渡取得税
- 印紙税
- 仲介手数料
- 司法書士費用
マンション売却の税金
マンション売却では、税金への情報収集が成功の鍵を握ります。とっつきにくい情報もありますが、特例などに注目しながらお得にマンションを売却しましょう。
譲渡所得税
譲渡所得税とは、不動産の譲渡所得(売却益)にかかる所得税および住民税です。所得税は確定申告にて納付し、住民税は翌年の住民税の納付税額に含まれて納税通知書が届きます。
居住用財産を売った場合の3,000万円の特別控除や、マイホームの買い替えに適用できる特例についてはぜひ利用しておきたいものです。
譲渡所得税は、マンション売却にかかる税金の中でも複雑な内容となっていますのでぜひ専門家の税理士に詳しい計算を依頼することをお勧めします。
印紙税
印紙税とは、契約書などを作成する際に国におさめる必要がある税金のことです。マンションを売却する為には、契約書を作る必要があります。この契約書に「印紙」という切手のようなものを貼るのです。印紙にかかる費用は、マンションの売買金額によって異なります。
- マンションの金額が1000万より高く、5000万円以下ならば1万円
- マンションの金額が5000万より高く、1億円以下ならば3万円
が必要となります。
この印紙は契約書1通につき1枚必要になります。マンション売買の契約書は通常2通作り、売り主様買い主様でそれぞれ持ち合いますので、印紙は2枚必要になり、それぞれ自分が持つ契約書の分の印紙代を負担します。
ほとんどのケースで印紙は自分で購入する必要はなく、仲介を依頼した不動産会社が用意してくれます。売買契約当日に印紙代金分の現金を持っていき、現金と印紙を交換するのです。
仲介手数料
仲介手数料は、売却を依頼した仲介会社に支払う成功報酬です。
仲介手数料は、取引する物件金額の3%プラス6万円が上限として宅建業法で定められており、ほとんどの不動産会社は通常上限金額いっぱいの仲介手数料を報酬として得ます。
例えば、5000万円で物件を売却した場合には、仲介手数料で156万円(税別)が必要となるのです。「仲介手数料は安くしてほしい!」と思う方も多いのではないでしょうか?
システム化に力を入れて営業コストを削減し、売却の仲介手数料を無料で提供するようなサービスも出てきていますので、こういった費用面でもどの仲介会社に依頼するのが良いか判断してみるのもお勧めです。
司法書士費用
マンションの売買では法律の専門家である司法書士が深く関わってきます。マンションの売却において特に関係があるのは抵当権の抹消登記です。
抵当権抹消登記とは、マンションについている抵当権(もし住宅ローンが支払えなければマンションを差し押さえますよ、という権利)を外す手続きになります。マンションを購入する際、ほとんどの人が住宅ローンを利用します。その住宅ローンを貸してくれた銀行がマンションに対して「万が一住宅ローンが返済できなくなったら、マンションを差し押さえますよ」という権利を設定したものが「抵当権」なのです。
この抵当権は銀行にお金を返せば自動的に外れる訳ではなく、銀行に対して「ちゃんとお金を返しました」という証明と共に、登記所に申請をしなければいけません。この手続きを司法書士が行ってくれるので、その費用がかかるのです。大体の金額としては1〜2万円前後の費用がかかってきます。
マンション売却の失敗例
針山:次は、マンション売却の失敗例についてご説明します。
佐藤さん:針山さんに教えて頂いた「マンション売却成功のポイント」を実践しなかったら失敗するのでは?
針山:佐藤さん、鋭い!他には、価格設定で気をつける点があります。
佐藤さん:教えてください!
次に、マンション売却のよくある失敗例を紹介します。
典型的な失敗例を回避するポイントをしっかり押さえ、「どうしたら購入を検討してもらいやすくなるか」について不動産会社の売却担当者と一緒に考えることが売却成功の近道となります。
部屋を掃除しなかった
「荷物をすべて出したあと、最後にハウスクリーニング業者を入れてから引き渡す」というのは、よくある部屋の引き渡しの流れです。すると、どうしても売却が決まる前に「今掃除しても、どうせ最後にハウスクリーニングしてもらうから…」と気を抜いてしまいがちになります。
しかし、購入検討者にしてみれば「今多少汚くても引き渡し前にハウスクリーニングが入る」といくら頭でわかっていても、高額な買い物ですのでやはり第一印象が悪いと今一つ踏み切れなくなってしまいます。
また、多くの購入検討希望者は新築マンションのモデルルームも見学しますので、どうしてもきれいな部屋が記憶に残ってしまっています。余計な家具や荷物は思い切って捨ててしまったりトランクルームを借りて一時保管したりする、水回りなど汚れが目立ちやすい場所を中心に大掃除をするなどすると、購入検討者の第一印象はぐっと良くなり、成約率や価格交渉の面で有利に運べるでしょう。
内覧対応しなかった
売却する前に次の家を購入することができたり、別の家を賃貸で借りたりといったことがなければ、住んだままその部屋の売却を行うことになります。家にいながら内覧してもらうのもなんだか気まずいですし、かといって少しの間とはいえ留守にして内覧してもらうのもなんだか不安、ということで内覧対応をせず間取り図や写真などで対応を済ませようとする場合があります。
しかし、未完成の新築マンションならともかく、中古のマンションでは1軒1軒状況はかなり違いますし、何かあった場合のアフターサービスも期待できません。いくら書面上良い物件に見えても、やはり実際に見ることができなければ、購入検討者からは敬遠されてしまいます。
価格交渉に応じなかった
思い入れのある自分が住んできた家は、安く見られたくないという気持ちが生じることがあります。また、自分の購入時には「〇〇万円した」という記憶もローン返済とともに強く残っているものであるため、どうしても「自分が買ったときにはあれくらいの値段だったのだから、そこまで安くならないはずだ」と考えてしまいます。
しかし、不動産の価値はあくまでも「時価」であり、極論を言ってしまえば購入時の金額は全く関係ありません。あくまでも、「どれくらいの金額なら購入したい人がいるか」「周辺の地域では近い条件の物件がどれくらいの金額で売られているか」といった需要で決まるものです。購入時の記憶や思い入れにこだわるあまり価格交渉に一切応じない姿勢をとっていると、売り時のベストタイミングを逃してしまいます。
媒介契約の種類を誤った
売却の依頼を不動産業者に頼む際には、「媒介契約」を結ぶことになり、「専任媒介契約」「専属専任媒介契約」「一般媒介契約」の3つの契約の種類の中から任意のタイプを選ぶことになります。不動産業者の営業マンのよくあるセールストークとしては「他社に手数料をとられるリスクが無い専任媒介契約のほうが、広告など営業活動にお金も人でも割くことができる」というものです。
確かにそういう一面がないことものないのですが、売却の成功は業者や営業マンの良し悪しに左右される部分も多く、素人がいきなり1つの業者に絞ることにはかなりリスクが伴います。
失敗すると、契約期間の3ヶ月の間まともな営業活動をしてもらえない、営業センスのない担当者に当たってしまうといったこともあり得ます。余程信頼できる営業マンや業者ということでもなければ、まずは一般媒介契約で複数の業者・営業マンからアドバイスを受けながら進めてみてはいかがでしょうか。
売却時期を考慮しなかった
生鮮食品のように「旬」があるわけではない不動産は、1年を通していつ売ろうとしても大差ない、と考えていませんか?実は不動産の売買の取引件数には年間の中でも時期によってかなりの差があります。最も取引が多くなるのは、年明けの1月から3月ごろまでです。
4月からの就職、進学、転勤などで最も住まいの環境を考える必要があるタイミングに備える必要があるため、この時期の売買が非常に活発になります。また、購入検討者も年末年始の長期休暇は家族で家についてじっくり話し合う良い機会になるため、年明けから実際に探し始めて2~3月に決めるというパターンは典型例です。
したがって、「新年度の仕事が落ち着いてからゆっくり売却しよう」などと考えると、売買が活発なピークを逃してしまうことになります。特段時期の制約がないようであれば、12月ごろから不動産業者への相談を始めて、1月には売りに出せるようにすればスムーズに制約する可能性がぐっと高まります。
売り出し金額が高すぎた
仮に最終的に金額交渉に応じるつもりがあっても、購入検討者がまずはじめに絞る上での一つの基準は売り出し価格です。不動産業者も予算に合わない物件を紹介してもしょうがないので、物件を紹介する際には必ず希望の金額を確認します。
「特別急ぐわけではないので、強気に出したい」「最後に○○万円までは値引きに応じてお得感を出したい」といった理由からわざと高めの金額設定をしたり、不動産業者が相場を見誤って提案をしてきたりといったことで相場から離れた売り出し金額になってしまうことがあります。
特に、これが500万円、1,000万円単位の区切りの良いラインを超えてしまうと、その時点で物件検索の対象から外れてしまうことになります。前項の時期の問題と相まって、「1~3月ごろに強気の売り出し金額で出したが売れなかったため、その後に値下げした」という状況になると売りやすい時期を逃してしまう、最悪のタイミングになってしまいます。
売却理由別の注意点
針山:この段落では、売却理由別のベストプラクティスについてご説明します。
佐藤さん:買い替えが理由のマンション売却のポイントはなんでしょう?
針山:ズバリ、資金計画です!
佐藤さん:お金のことはしっかり学んでおきたいです!
離婚・転勤・住み替え・相続・債務超過の5つの理由ごとに、マンション売却におけるテクニックを示します。
離婚
離婚によるマンション売却時の注意点について解説します。
資産の分割
離婚におけるマンションの売却は、複雑です。離婚の理由や、貯蓄といった他の資産規模・それぞれの収入・子供の有無といった要因によって、財産をどう分けるか異なってくるからです。マンションが夫婦の共有名義である場合、住宅ローンや自己資金といった出資金額に比例した持分で登記されているのが一般的ですが、離婚の際、その持分を主張出来るとは限りません。
購入してから、そこまで年数が経っていない場合など、売却しても住宅ローンを完済できずに残債が残ってしまう可能性もあります。そのまま居住を続けることが出来れば良いのですが、現金化しなければならない場合もあります。自己資金で残債を返済することができれば良いのですが、難しい場合、任意売却を選択肢に含める必要があります。住宅ローンを組んでいる場合、金融機関が抵当権を設定しているため、住宅ローンを完済してその抵当権を抹消しない限り、他の方へマンションを売却することは出来ません。金融機関に、住宅ローンの交渉が出来る手段が、任意売却です。
任意売却の流れは一般の売買と変わりませんが、物件価格は、多少低くなる傾向にあります。物件の引き渡し後に不具合が見つかった場合、その責任を売主が負えないリスクがあるためです。任意売却後も住宅ローンの返済は続きますが、返済金額は抑えられますし、分割しての支払いも相談することが可能です。
売却時のトラブル
売却を主導している側が住んでいれば問題ないのですが、どちらかが売却に協力的でなかった場合、売却に際してトラブルも生じます。夫婦仲が破綻していたため、内覧日時が居住している側に伝わっておらず、物件を見に行ったお客様が部屋の中を内覧できないという事態もありました。また、住んでいる側には居住権があるため、物件を売却したくても売却出来ない場合もあります。売却を円滑にすすめるために、売却を始める前に双方の合意をしっかり得ておく必要があります。
転勤
転勤先で住宅費用が発生する場合、早めの売却が必要ですが、早期の売却は物件価格を値下げしなければならない可能性もあります。また、引っ越しの準備をする一方で内見の対応をしなければならないので、慌ただしくなることが予想されます。そのため、転勤先の家賃を会社が負担してくれる場合は、転勤後に売却しても良いかも知れません。遠方に引っ越した時の内覧対応は、不動産業者にすべて任せることになるので、以下の点に気を付けましょう。
- 引っ越しの日付をしっかり伝え、売却のスケジュールを提案してもらいましょう。
- 内見時のお客さんの様子や反応を見ることは出来ないので、業者さんにこまめな報告をお願いしましょう。
- 設備の不具合や故障など、引っ越し前にすべて確認しておきましょう。
- 契約と引き渡しの手続きをどうするか、事前に段取りを確認し、必要な書類などは揃えておきましょう。
住み替え
子どもの成長に伴い、今より広い部屋に住みたい・両親の近くに引っ越したいといった理由で住み替えを検討する場合、どのようなことに気を付けたら良いのでしょうか。
購入が先に決まった場合
購入したい物件は決まったものの、今住んでいる物件の売却に時間がかかってしまうことがあります。住宅ローンの審査は、残債を踏まえて判断されるため、残債が多かった場合、審査が通りにくい可能性があります。審査が通っても、売却が完了するまでは二重の住宅ローンを支払わなければならないので、毎月の返済額が高くなります。また、急いで売却をしようとすると、物件価格を下げなければならない事態も。
売却が先に決まった場合
売却が先に決まった場合、売却金額が確定できるので、購入物件の資金計画をたてやすいというメリットがありますが、買主さんが引き渡しの期限を猶予してくれない場合、仮住まいの費用が発生する可能性もあります。
つなぎ融資の利用
上記のような状況を解消するのが、つなぎ融資です。購入物件が先に決まった場合は、つなぎ融資を利用することで、購入物件の残代金を支払い、先に引き渡しを受ければ、新居に引っ越した後に自宅の売却を行うことができます。
つなぎ融資のメリットとしては、
- 仮住まいをする必要がありません。
- 内見時に部屋の中に荷物がないため、購入を考える人にとっては部屋の状態が分かり、生活感のある住まいよりも一般的に売却がスムーズです。
- 焦って売却をする必要がないため、余裕をもった売却活動を行うことができます。
ただし、つなぎ融資もローンではあるので、利息や諸費用がかかります。期間は通常6ヶ月以内で設定することが一般的なので、利用にあたっては、自身にとってベストな選択を見極めるようにしましょう。
相続
通常の不動産売却において利益が発生した場合、譲渡所得に対して所得税と住民税がかかってきます。
譲渡所得=売却金額―(取得費+譲渡費用)
※取得費とは、その不動産を購入した時の費用。譲渡費用とは、売却する際にかかる仲介手数料や登記費用・不動産取得税。
所得税率 | 住民税率 | |
---|---|---|
短期譲渡所得(所有5年以下) | 30% | 9% |
長期譲渡所得(所有5年超) | 15% | 5% |
相続した不動産を売却した場合、相続税の取得費加算の特例により、譲渡した資産に対応する相続税額を取得費に加算できるため、所得税と住民税が軽減されます。
また、税率は所有期間によって異なりますが、死亡した人が所有していた期間も含まれます。死亡してから3年10ヶ月以内に売却した場合に限り有効なので、注意が必要です。
なお、実家を相続し、かつ相続前から同居していた自宅を売却する場合には、譲渡所得から3,000万円の特別控除が可能です。ただし、他に相続人がいた場合は、独自の判断で不動産の売却を決定することは出来ません。
相続は、不動産以外の現金や有価証券といった資産も考慮に入れて対策を講じる必要があるので、税理士や弁護士といった専門家に相談しながら、慎重に進めていくことが大切です。
債務超過
給与が下がったり、仕事を退職されたりと、住宅ローンを支払うことが出来なくなるなど、不測の事態が起きることもあります。売却しても住宅ローンが残ってしまう場合、
すぐに売却を検討するのではなく、まず住宅ローンの契約内容を見直してみましょう。金利が高い時期に借りていた場合は、借り換えをすることで月々の負担額や総返済額が異なってきます。契約内容を見直しても返済が難しい場合は、任意売却を先に進めましょう。住宅ローンの滞納があった場合、任意売却での売却が見込めないと金融機関が判断すると、競売へと進んでいくので要注意です。
普段から、住宅ローンの残債が今どのくらいか、金利の水準は適切か、常にチェックしておく必要があります。
買主に売却理由を伝えたくない場合
買主側に売却の理由を伝えたくない場合もあると思います。しかし、部屋や建物内で事件・事故があった場合や建物の欠陥など、売主に伝えなければならない告知事項になります。告知義務は民法で定められているので、伝えない場合は罰せられます。買主がその理由を聞いたことで、購入をとりやめるかも知れない事項に関しては必ず伝えるべきでしょう。
一方、離婚や住宅ローンの返済が苦しいといった理由の場合、売却理由を伝えたくないと不動産業者にお願いすることも可能ですが、買主さんでも売主の情報を気にする方もいらっしゃいます。売却理由を聞かれた時に、不動産業者が売主さん側が理由をおっしゃられたくないというと、マイナスのイメージを持たれやすいことも確かです。両親の近くに引っ越すといった理由で代替しても良いかも知れません。
上記の様に、売却にあたっては個人の事情や状況を売主と買主のパイプ役である不動産仲介業者に伝える必要があります。スムーズに売却が行えるのも業者さんの腕次第であることも確かなので、信頼できる業者さんを探すことが大切です。
よくあるマンション売却Q&A
針山:最後に、よくあるマンション売却Q&Aをご紹介します!
佐藤さん:ここまで長かった。。最後の気力を振り絞ります!
リフォームはするべきですか?
結論から申しますと、マンションの売却前の大規模リフォームはお勧めしておりません。中古マンションを購入してリフォームをされる買い主様は「こういう住居にしたい!」という思いを強く持っている方が多いのです。マンションの売却前のリフォームとなると200〜300万円程度かかることが多いので、そこまでしてマンションをキレイにしても、それがそのまま買い主様の満足度に繋がり、売却金額に乗ってはこないのです。
それよりも、リフォーム会社に依頼して「リフォームをしたらこんなイメージになります!」という図面やイメージを作成してもらい、100円均一などに売っているボードや厚紙に貼付けることでアピール資料を作成しましょう。そしてそのアピール資料をマンションの買い主様候補が内覧に訪れたときに飾っておけば、お金をかけることなくあなたのマンションの魅力を伝えることが出来ます。
囲い込みとはなんですか?
不動産取引における「囲い込み」とは自社で預かった物件を他社に紹介させない行為です。順を追って解説します。
前提として、不動産仲介業者は売主様や買主様から頂く「仲介手数料」で利益を得ています。もし、自社に売却を依頼してくれている売主様のマンション(媒介物件)を自社のお客様が購入した場合、売主様・買主様双方から物件価格の3%プラス6万円の仲介手数料を、成功報酬として頂くことになります。これを不動産業界の用語では「両手取引」といいます。それとは反対に、自社の媒介物件が他社の仲介業者を通して購入希望者が見つかった場合(片手仲介)、仲介手数料は各々担当したお客様側からしか頂戴できません。
つまり、多くの仲介手数料を頂戴するために両手取引を不動産仲介業者は好みます。そのため、自社媒介物件を他社に紹介させない「囲い込み」という状況が横行しているということです。まだ販売中の物件なのにも関わらず「すでに購入の話が入っているのでご紹介できません」と噓をつく、案内の約束を取り付けていざ当日になったら「物件の鍵がない」と言われるケースもあります。また、この囲い込みが大きく取り上げられた理由としては「大手不動産会社が行っている」という点でした。
インターネットや不動産流通機構には掲載し、他社から電話があった時点で囲い込みを行うので、売主様は知らない間に売却のタイミングを逃しているという問題です。囲い込みされているかを調べる方法としては、他社を名乗って媒介を預けている不動産会社に物件の確認の電話をしてみる、査定の時に来てもらった他の不動産会社に協力してもらう等がありますので、少しでもおかしいなと思ったら実践してみて下さい。
権利証(登記済証)を紛失してしまったのですが、どうすれば良いでしょうか?
不動産を購入した場合、法務局で不動産登記簿上の所有者の名義を売主から買主に書き換える所有権移転登記手続きが必要になります。この所有権移転登記が完了した際に、買主が対象不動産の権利を有するものとして法務局から発行されていた書類が登記済証です。
そして、所有しているマンションを売却するときには、売主として所有権移転登記手続きが必要となります。この際、法令上、売主は法務局へ登記済証または登記識別情報を提出することが必須です。所有者のみが有する書類または情報の提出を求めることで、物件の所有者本人が売主であることを確認し、第三者が売主になりすまして勝手に物件を売却する詐欺事件を未然に防ぐ必要があるからです。
登記済証または登記識別情報通知を紛失してしまった場合、理由を問わず再発行はされません。再発行できない書類を自身で保管するのは怖いと思われる方も多数いるのではないでしょうか。中には銀行の貸金庫に保管しているという方もいます。
もし紛失してしまった場合は、いくつかの代替手段によって所有権移転登記手続きが可能となります。大金が動く不動産売買の場合には、「司法書士による本人確認制度」を利用することが一般的です。
司法書士による本人確認制度とは、司法書士が法務局に対し、売主が所有者本人であることに間違いないと判断した旨の証明書(本人確認情報)を提出し、法務局がその判断を相当と認める場合に登記済証または登記識別情報の提出なしに所有権移転登記をすることができる制度で、面談の方法、確認する本人確認書類の内容などが厳しく法定されています。
まとめ
マンション売却の流れ、いかがでしたでしょうか。購入の時と違い、自ら動く部分は少ないものの、その分マンション売却の注意点は多いです。ぜひ、ポイントを抑え、マンション売却を成功させてください。
マンションジャーナル