2. 採用倍率は年々減少傾向…「優秀な先生」の確保が難しいワケ
文部科学省「令和4年度(令和3年度実施)公立学校教員採用選考試験の実施状況について」を参照すると、近年における採用倍率は低下していることが分かります。
2021年の全体競争率(採用倍率)は3.7倍。前年度よりも0.1ポイント減少しました。
同調査における試験区分別の採用倍率は小学校が2.5倍、中学校が4.7倍、高等学校が5.3倍となっています。
この背景には、教員に対する「多忙」「業務範囲が広い」「理想とする教育ができない」といったマイナス的なイメージが関係していると推測できます。
また、少子高齢化で働き手が不足している昨今、学生はよりよい条件の勤め先を選ぶ立場にあるといえるでしょう。最近はリモートワークを導入する企業や、新卒の初任給を大幅にアップしている企業も少なくありません。
学生時代に教職課程を履修し、教職に興味をもっていた人であっても、一般企業の方が魅力的にうつってしまうケースもあるようです。
それでは、現に教員1年目の方々はどのくらいの給与をもらっているのでしょうか。東京都の例をみていきましょう。
2.1 【東京都の公立校】先生はどのくらいお給与をもらっているの?
東京都教育委員会「令和5年度東京都公立学校教員採用候補者選考 ー春季説明会-」によると、東京都の1年目の給与は以下の通り試算されています。
4大新卒採用で23区の小学校に勤務した場合はおおよそ月額25万4500円の給与を得られます。1年目の年収は約387万1606円、2年目の年収は435万円程度が見込まれます。
日本人の平均年収が450万円前後のため、2年目で430万前後の年収を見込める東京都の教員は金銭的に恵まれているといえるでしょう。
以下、同資料から年代別のおおまかな年収を見ていきましょう。
30代は500万円前後、40代は700万円前後、50代で700~800万円を見込めます。また、副校長や校長になれば、1000万円以上の年収も期待できます。
ただし、公立の教員であっても地域によって給与に差があり、東京都は他よりも高い傾向にあります。
また、教員は勤務時間が長いと言われています。学校によって異なるものの、8時30分頃に授業がはじまり15時頃まで行われます。
放課後になっても部活動をする生徒や自習室で勉強する生徒がいるため、彼らの指導・対応を行わなければなりません。
さらに教員の仕事は、授業の準備や教材研究、書類作成、部活動の参加、生徒の相談対応、会議など多岐にわたります。
教員の給与は低いわけではないものの、大手企業や一流企業も多く存在する東京都内では、給与が比較的魅力にうつらないのも現状かもしれません。
3. まとめにかえて
教員になりたいと考える学生の中には「大学院でも学びたいけど、奨学金の返済が不安」「大学院進学は経済的に厳しいかも」と思われる方も多くいます。
大学院修了後、正規の教員になった場合に奨学金の返済が免除になれば、こうした学生は自身の思いを実現しやすくなります。
学部時代に教員免許を取得しておけば、大学院在学中に非常勤講師として学校で働くことも可能です。
また、大学院では学部時代の専門科目を深めたり、担当教科の理解を深めたりすることもできます。教養や知識のある人の話はおもしろいもので、生徒の関心を惹き付けられるはず。
一方、本制度は正規の教員に採用された場合のみ対象となる見込みです。このため、大学院を修了したものの、教員として正規で採用されなかった場合についての懸念も残ります。
参考資料
- 独立行政法人 日本学生支援機構「令和2年度 学生生活調査結果」
- 文部科学省「令和4年度(令和3年度実施)公立学校教員採用選考試験の実施状況について」
- 東京都教育委員会「令和5年度東京都公立学校教員採用候補者選考 ー春季説明会-」
西田 梨紗