文部科学省は大学院を修了し、正規の教職に就いた人の奨学金を全額免除にする方向ですすめています。この背景には、教員の不足や優秀な教員の確保があります。
本制度は教職大学院を修了した者、もしくは大学院を修了し、条件(教育活動における実習経験など)をクリアしている者が公立校、もしくは国私立校に就職した場合に適用される見込みです。
この制度によって、国内教育水準の向上や教員数の確保が期待されています。
本記事では、教員にまつわる問題や教員の給与事情などをまとめました。記事の後半では、東京都における教職員1年目の月収・年収のモデルをチェックしていきます。
1. 「教員の高学歴化」が求められている現代社会
近年、教員に高い学歴を求める声が少なくありません。
こうした背景には何が関係しているのでしょうか。詳しく考察していきましょう。
1.1 複雑化した社会に対応できる人材を育成するには「質の高い授業」が不可欠という考え
小中高のいずれにおいても教員免許があれば、学部卒で教員になれます。小学生以上のお子さんがいるような年齢の方であれば「大学院卒の先生が学校にいた覚えがない」という人もいるのではないでしょうか。
それもそのはずで、かつては学部を卒業して教職に従事する人がほとんどでした。
しかし近年は、社会において高度な知識や技術が不可欠とされ、大学院を修了している教員が好まれる傾向にあります。
この傾向は、たとえば英語ひとつとっても明らかです。英語は2020年4月から小学校3~6年生の必須科目となりました。
英語を従来より「3年」はやく学び始めることに加え、吸収力のある幼いうちから学んで身につけた中学入学時点での生徒の平均的な英語力は、これまでよりも高い水準にあると考えられるでしょう。
また、グローバル化がすすみ、確実な英語力が求められている昨今、中高における英語の授業もレベルが高まりつつあります。
生徒の英語力がボトムアップしているため、それを教える教員にもこれまで以上の知識や深い理解が求められているのです。
1.2 自身が高学歴な保護者の中には、教員に高い学歴を求める人も多い
大学進学率が50%を超える昨今では、保護者の学歴もボトムアップしています。
一昔前であれば「大卒はエリート」というイメージもありましたが、現代ではエリアによって親世代の大半が大卒というケースも少なくありません。
保護者の中には「我が子が自分よりも下位レベルの大卒の教員に教わることに不安がある」「学部卒だがしっかりとした知識をもっているのか?」などと思う人も見受けられます。
もちろん、学部卒で十分な知識や学力を有している教員は多くいますが、それでも大卒が主流の世の中になると、教員に「プラスアルファ」な学歴を求める人も出てくるようです。
実際、都心部における中間一貫校や進学校は修士課程修了者を好んで採用する傾向にあります。それでは、公立校の採用倍率はどのような状態なのでしょうか。
次の章からは、公立学校教員採用選考試験の実施状況についてチェックしていきましょう。