2024年3月31日、歌手の松田聖子さんが中央大学の法学部(通信教育課程)を卒業したことが報道されました。芸能活動しながら学業を修めた彼女の努力を称え、祝福する声があふれています。
中央大学といえば「法律の名門校」として古くから知られています。毎年、旧帝大や早慶に並び多くの司法試験合格者を輩出し、通信教育課程であっても卒業要件を満たすのが容易でないことは想像に難くありません。
また、近年「リスキリング」という言葉を耳にするようになりました。学び直しとして、社会人の大学進学率が高まっているデータが文部科学省より発表されています。
本記事では、大学の通信教育課程の実情について見ていきましょう。記事後半では、実際の学費例や「リスキリング」の需要についても解説します。
1. 大学の通信教育課程を卒業するのは一般的にかなり大変なこと
通信教育課程について「誰でも入学/卒業できる」といったイメージを抱く人もいますが、こうした見方は事実とは少々異なります。
講義を受けるだけでなく、何冊もの学術書を読んだり、多くのレポートを執筆したりしなければなりません。
また、学部によっては卒業論文の提出が求められます。英文系の学部であれば英文での執筆が求められることもある程「通信制大学」における教育レベルは高いといえるでしょう。
入学の段階でこそ学力があまり求められない「通信教育課程」ですが、高偏差値の大学や名門大学の通信教育課程であれば有名大学の学士号取得者、大手企業のサラリーマン、学識ゆたかなシニア層も多く見受けられ、学生のレベルも高い傾向にあります。
ゼミやスクーリングでは、勉強慣れしている若者についていく必要があり、決して容易な道ではないといえるでしょう。
2. 中央大学の法学部(通信教育課程)を修了できる学生はごくわずか
たとえば、冒頭で触れた中央大学の法学部(通信教育課程)の入学者は書類選考で基本的に選ばれます。ただし、小論文や面接が課されるケースもあるようです。
卒業要件を満たすには、レポートの提出やスクーリングの受講も求められます。法律に関する科目だけでなく、学習に必要な文章の読解力やレポートの作成能力を養うことを目的にした科目もあります。
また、教員と少人数(20名程度)の学生でのゼミ形式の講座への参加も求められます。
さらに、レポート学習後は科目試験が課されるため、学生にとって負担は大きいでしょう。民事訴訟法、労働法(個別的労働法)、法哲学、環境法などの専門分野に加えて、英語や歴史(日本史)などといった教養科目の試験もあります。
英文系の学部を卒業した筆者は「体験スクーリング動画」で森光先生の「法解釈学とは何か」を視聴してみました。質が高く、大変興味深い内容でした。
その一方、受講生がある程度の教養を有していることを前提としているものであり、勉強慣れしていない人や高校レベルの学問を理解しきれていない人には難しい内容に感じました。
同課程の卒業生の中には大学院進学者や司法試験の合格者も多くいます。また、すでに公的機関や企業の法務系の業務に携わる人が、より円滑に進めるために同課程に進学したという例も少なくありません。
優秀な人も多い同課程ですが、決して遊び半分で進めるような道ではないのです。
次の章からは、実際の学費についてチェックしていきましょう。