「人生100年時代」というのは、嬉しい反面、「老後資金が枯渇するのではないか?」と経済的な不安を感じながら過ごしている高齢者は多いかもしれません。
2024年3月22日公表の2020年基準消費者物価指数によると、総合指数は前年同月比で2.8%の上昇になりました。
物価上昇の局面において、一定の年金収入で暮らすことに不安を感じるかもしれません。
今回は、厚生労働省の「国民生活基礎調査の概況2022(令和4年)」で、高齢者の方々の現状の生活に対する感じ方をみてみましょう。
また記事後半では、長い老後の安心を得るための備えに必要なことも紹介します。
1. 高齢世帯の暮らしぶり「生活が苦しいは51.7%」に
厚生労働省の「2022(令和4)年 国民生活基礎調査の概況」によると、65歳以上の高齢者世帯の48.3%が「生活が苦しい」と回答しています。
2019年の調査では、「生活が苦しい」と回答したのは51.7%。こちらと比べれば微減していますが、約5割の高齢者世帯が日々の生活に「苦しい」と感じているのが実態です。
次は、高齢者の方々にとって「生活が苦しい」と思う理由を収入面・支出面にわけて調べてみましょう。
1.1 高齢者の収入はどのくらい?
まずは、同調査の「平均所得金額」で、高齢世帯の平均所得金額を確認してみましょう。
上図より、2021(令和3)年の世帯ごとの平均所得額は以下のとおりです。
- 高齢者世帯:318万3000円
- 高齢者世帯以外の世帯:665万円
- 児童のいる世帯:785万円
高齢者世帯の平均所得金額は、高齢者世帯以外の世帯の平均所得額の5割以下となっています。
さらに、高齢者世帯の平均所得金額318万3000円(月額26万5000円)の内訳をみてみましょう。
- 稼働所得(労働で得た所得):80万3000円(25.2%)
- 公的年金、恩給:199万9000円(62.8%)
- 財産所得:17万2000円(5.4%)
- 年金以外の社会保険給付金:1万8000円(0.6%)
- 仕送り、企業年金、個人年金、その他の所得:19万円(6%)
上記より、高齢者世帯の収入のうち約6割が公的年金・恩給から、それ以外は働くこと、老後資金の取り崩しなどで収入を得ていることがわかります。
次は、総務省の家計調査で支出を確認してみましょう。
1.2 高齢者の収支の実態は?
「2023(令和5)年65歳以上の単身無職世帯(高齢単身無職世帯)」の家計収支で、高齢者無職世帯(夫65歳以上、妻60歳以上)における支出は以下のとおりです。
先述の収入が年換算だったため、支出も同じく年換算でみてみましょう。
- 消費支出:301万1508円(月額25万959円)
- 非消費支出:37万8456円(月額3万1538円)
- 合計支出:338万9964円(月額28万2497円)
高齢者世帯の平均所得金額318万3000円(月額26万5000円)に対して、支出は338万9964円(月額28万2497円)あり、支出から収入を差引いた不足額は20万6964円(月額1万7247円)となります。
年金以外に給料を得たり、老後資金を切り崩したりしても収支ギリギリという状況です。
もし、高齢者世帯の収入が公的年金・恩給のみであれば、収入は318万3000円(月額26万5000円)の6割となる約190万円(月額16万円)です。
単純に支出を前述の338万9964円(月額28万2497円)とすれば、不足額は148万円(12万3333円)にもなります。
年金だけでは毎月大幅な赤字生活となるので、生活を切り詰めることになるでしょう。
このような状況であれば「生活が苦しい」と感じてしまうのも無理はありません。
なお、上記の家計調査の住居費は1万6827円で、主に持ち家の人が対象となっています。
賃貸にお住いの方は、さらに多くの費用がかかる点に注意しましょう。