4. 税法上の扶養は手取りに影響する

会社の規定によって、扶養を統一しなければならない場合、「税法上の扶養」についても知っておく必要があります。

「税法上の扶養」は、所得税や住民税に関係するため、手取り額に影響します。

扶養する子どもが16歳以上であれば、扶養控除を受けられるので、所得が多い人ほど、税負担を軽減できます。

扶養区分ごとの控除額

扶養区分ごとの控除額

出所:国税庁「No.1180 扶養控除」をもとに筆者作成

※1 16歳以上の人
※2 19歳以上23歳未満の人
※3 70歳以上の人
※4 老人扶養親族のうち、納税者又はその配偶者の直系尊属(父母、祖父母など)で、普段同居している人

健康保険の扶養と違って、収入が多い方が扶養するといった規定がないので、どちら側が扶養しても差し支えありませんが、扶養控除が受けられる場合は、収入が多い方の扶養に入った方が所得税を少なくすることができます。

所得控除が受けられない16歳未満の子どもの場合は、所得税には影響しませんが、住民税が非課税になる「非課税限度額」制度の扶養の数に含めることができます。

これは前年の所得が自治体ごとに決められた非課税限度額以下になると、住民税が非課税となる制度です。

扶養する子どもがいると、非課税になる限度額が上がるので、住民税が非課税になる可能性が高くなります。

自治体や扶養人数によって異なりますが、年収150万円~200万円くらいの場合は検討してみるとよいでしょう。

5. まとめにかえて

健康保険の扶養は、収入が多い方が子どもを扶養する決まりになっていますが、収入が同程度の場合は、どちらが扶養するかを選択することが可能です。

その場合、健康保険組合の給付内容を参考にするとよいでしょう。

一方、税法上の扶養は規定がないので、どちらが扶養しても構いません。

しかし、選択によっては扶養控除や住民税の非課税限度額に関わるため、手取り額に影響します。

そのため、子どもをどちらの扶養にするかの選択は健康保険の扶養以上に考える必要があるでしょう。

しかし、この場合も、会社が扶養を統一することを求めていたり、税法上の扶養、健康保険の扶養、またはその両方が、会社独自の扶養手当の要件になっていたりする場合があるので、子どもをどちらの扶養に入れるかは、それぞれの会社の制度を確認してから、総合的に判断しましょう。

参考資料

石倉 博子