2024年1月下旬に、厚生労働省から「2024年度の年金額例」とともに、年金額の引き上げが発表されました。
2024年度の国民年金の満額受給額は「6万8000円」、厚生年金(夫婦2人分の老齢基礎年金を含む標準的な年金額)は「23万483円」となり、前年度よりも2.7%の増額となります。
ただし、近年では増額率を上回る物価上昇となっていることから、2.7%の増額でも実質的には目減りとなっており、素直に増額は喜べないのが現状です。
年金だけでは老後の生活が厳しいと言われる今。定年退職後もフルで働き続ける高齢者の数が年々増加するだけでなく、30代・40代のうちから老後に向けて年金の足しになる老後資金づくりをスタートさせる方も少なくありません。
幅広い年代層の間で話題になることも多い老後資金。多くの方は「年金だけでは老後の生活が破綻する」と不安を感じていますが、実際、年金だけで老後生活を支えるのはどれほど厳しいものなのでしょう。
今回は、60歳~89歳の年金支給額を見ていきながら老後資金づくりの必要性について考えていきたいと思います。
※本記事でご紹介する厚生年金の金額には、すべて国民年金の金額が含まれます。
1. 【公的年金】国民年金と厚生年金のしくみ
公的年金には「国民年金(基礎年金)」と「厚生年金」があり、図のように2階建ての構造となっています。
1.1 国民年金(基礎年金)とは
- 加入対象:原則、日本に住む20歳から60歳未満の方
- 保険料:一律(年度ごとに見直し)
- 年金額:満額79万5000円(※)✕調整率(未納期間がある場合は差し引かれます)
※2023年度の年額
1.2 厚生年金とは
- 加入対象:主に会社員、公務員など
- 保険料:報酬比例制(毎月の報酬により決定)
- 年金額:加入期間や納付保険料によって決まります(国民年金に上乗せで支給)
国民年金は保険料が一律のため、40年間全ての保険料を納めれば老後に満額を受給することができます。一方、厚生年金は、現役時代の給与や賞与などの報酬によって保険料が計算され、納めた保険料と加入期間によって老後の受給額が決定します。
国民年金と厚生年金は、老齢年金・遺族年金・障害年金といった国民の生活をサポートする公的な制度ではありますが、上記のような違いがあるため仕組みを正しく理解しておきましょう。
2. 【年金一覧表】60歳~90歳以上「厚生年金」の平均年金月額を確認
では、現代シニアはどれくらい年金を受給しているのでしょうか。
厚生労働省から公表された「令和4年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」をもとに、年齢別の平均年金月額を確認しましょう。
なお、以下の厚生年金はすべて国民年金部分を含みます。
2.1 厚生年金の平均月額(60歳~69歳)
- 60歳:厚生年金9万4853円
- 61歳:厚生年金9万1675円
- 62歳:厚生年金6万1942円
- 63歳:厚生年金6万4514円
- 64歳:厚生年金7万9536円
- 65歳:厚生年金14万3504円
- 66歳:厚生年金14万6891円
- 67歳:厚生年金14万5757円
- 68歳:厚生年金14万3898円
- 69歳:厚生年金14万1881円
2.2 厚生年金の平均月額(70歳~79歳)
- 70歳:厚生年金14万1350円
- 71歳:厚生年金14万212円
- 72歳:厚生年金14万2013円
- 73歳:厚生年金14万5203円
- 74歳:厚生年金14万4865円
- 75歳:厚生年金14万4523円
- 76歳:厚生年金14万4407円
- 77歳:厚生年金14万6518円
- 78歳:厚生年金14万7166円
- 79歳:厚生年金14万8877円
2.3 厚生年金の平均月額(80歳~89歳)
- 80歳:厚生年金15万1109円
- 81歳:厚生年金15万3337円
- 82歳:厚生年金15万5885円
- 83歳:厚生年金15万7324円
- 84歳:厚生年金15万8939円
- 85歳:厚生年金15万9289円
- 86歳:厚生年金15万9900円
- 87歳:厚生年金16万732円
- 88歳:厚生年金16万535円
- 89歳:厚生年金15万9453円
一般的な年金受給開始年齢である65歳以降を見ると、年齢が上がるにつれて平均月額も上昇しており、平均で月額14万円から16万円程度となっています。
ただし、厚生年金は収入に応じた保険料を支払うため、受給額には個人差が大きく現れます。また、65歳未満の厚生年金保険(第1号)の受給者は、老齢厚生年金の特別支給の定額部分の引き上げにより、主に報酬比例部分のみの者となっています。