原猿類は、シングル生活を謳歌する!?
人類と共通の祖先を持つとされる猿ですが、その猿の祖先に近い生活をしているのが原猿類です。原猿類のなかでも夜行性の種は、視覚より嗅覚や聴覚が発達し、基本はシングル生活を送っています。
例外は交尾期ですが、交尾が終わるとペアは解消され、オスはシングル生活に戻ります。メスも出産と授乳が終わると再び、シングル生活になります。
原猿類は、自分のテリトリーに他者が侵入することを許さないそうです。人間にもシングル生活を謳歌する人がいますが、自然な欲求の一つかなと思わないでもありません。
生活力に性差がなくなると、シングル生活を求める?
シングル生活の猿は、オスとメスの身体の大きさが同じで、身体能力も差がありません。生活能力が同じだから、シングルでも生きていけるわけです。
人間も男女で同程度の生活力を持つようになった近年、シングルが増えていることと関係があるのでしょうか。はたまたシングル生活をすると、性差がなくなるということなのでしょうか。
昼行性の原猿類は夜行性の種より体が大きく視覚も発達、そして集団生活をしています。集団生活には、構成員同士の優劣がつきものです。誰でも平等な社会を望みますが、自然界を見るかぎりそう簡単ではなさそうです。
猿の世界にもある、優位な立場者に媚びる「お追従」
集団生活で優位にある猿に与えられた特権行動一つに、肩をいからせることがあります。人間社会でもスーツには肩パッドをつけ、肩を大きく立派に見せています。
かつての日本でも武士が肩を異様に広く見せる裃を着ていました。軍人が軍服の肩章にこだっている光景を映画などで見ますが、やはり自然界の欲求かもしれません。
一方、劣位の猿は優位の猿が近づくと歯をむき出して笑います。これはグリメイスといい、笑っているのではなく、恐怖でひきつっている表情だそうです。人間の「追従笑い」と似ています。
ニホンザルのように優劣が明確な集団では、グリメイスは劣位な猿に限られています。しかし、さほど厳格な優劣のない集団では、劣位な猿があいさつとして交わす場合、あるいは優位な猿が協力関係を確認するときにも見られるそうです。
類人猿の社会も、優位にある者は包容力が大事
「猿の目を見るな」という警告板を見ることがあります。相手の目を見ることは威嚇であり、優位な猿だけの特権だからです。劣位な猿は見られても決して、見返してはいけないのです。
ただし類人猿は、劣位な猿が優位な猿の顔を覗きこむことがあるそうです。これは劣位猿の特権であり、一種のおねだり行為です。
優位な猿は覗きこまれるとおねだりを断ることができず、逆に劣位な猿は優位な猿に覗きこまれても無視、または要求を拒否する傾向があるそうです。
優位な猿は、無視や拒否をされても腹いせをすることはありません。上位者には包容力が求められるのも、人間と同じですね。
猿の世界は知れば知るほど、他人ごと、いえ他猿ごとではすまされないものがあります。
参考:山極寿一著『オトコの進化論―男らしさの起源を求めて』
間宮 書子