4. 【特養】特別養護老人ホームの費用を「年金だけで払えない場合」の対処方法

では、特別養護老人ホームの費用を年金だけで支払うことができない場合に検討したい対処方法を4つ、お伝えします。

  • 軽減制度を利用する
  • 生活保護を受給する
  • 融資を受ける
  • 自宅を売却する

4.1 軽減制度を利用する

特別養護老人ホームで利用できる軽減制度は「負担限度額認定(特定入所者介護サービス費)」と「高額介護サービス費」の二つ。

それぞれの概要について整理していきましょう。

■その1.負担限度額認定(特定入所者介護サービス費)

特定入所者介護サービス費(補足給付)の対象者

出所:厚生労働省「介護サービス情報公表システム」をもとに筆者作成

負担限度額認定(特定入所者介護サービス費)とは、所得や資産等が一定以下の方に対して、負担限度額を超えた居住費と食費の負担額が介護保険から支給される制度です。

その対象者と利用者負担段階は以下の通りです。

※夫婦の場合、預貯金等基準額は(  )内の金額となります。

第1段階

  • 市町村民税世帯非課税者である老齢福祉年金受給者
  • 生活保護の被保護者

※預貯金等限度額:1000万円(夫婦の場合 2000万円)

第2段階

  • 市町村民税世帯非課税者
  • 年金収入+その他の合計所得金額が年80万円以下の者

※預貯金等限度額:650万円(夫婦の場合 1650万円)

第3段階(1)

  • 市町村民税世帯非課税者
  • 年金収入+その他の合計所得金額が年80万円超から120万円以下の者

※預貯金等限度額:550万円(夫婦の場合 1550万円)

第3段階(2)

  • 市町村民税世帯非課税者
  • 年金収入+その他の合計所得金額が年120万円を超える者

※預貯金等限度額:500万円(夫婦の場合 1500万円)

■利用者負担段階別の負担限度額(日額)

利用者負担段階別の負担限度額(日額)

出所:厚生労働省「介護サービス情報公表システム」をもとに筆者作成 

利用者負担段階別の負担限度額(日額)は以下の通りです。

【第1段階】

居住費

  • ユニット型個室:820円
  • ユニット型個室的多床室:490円
  • 従来型個室:320円
  • 多床室:0円

食費:300円

【第2段階】

居住費

  • ユニット型個室:820円
  • ユニット型個室的多床室:490円
  • 従来型個室:420円
  • 多床室:370円

食費:390円

【第3段階(1)】

居住費

  • ユニット型個室:1310円
  • ユニット型個室的多床室:1310円
  • 従来型個室:820円
  • 多床室:370円

食費:650円

【第3段階(2)】

居住費

  • ユニット型個室:1310円
  • ユニット型個室的多床室:1310円
  • 従来型個室:820円
  • 多床室:370円

食費:1360円

負担限度額は所得段階、施設の種類、部屋のタイプによって異なります。

例えば『第2段階で要介護3、居室タイプ「多床室」』の方の月額費用は次のようになります。

『第2段階で要介護3、居室タイプ「多床室」』の方の特養月額費用

出所:各種資料をもとに筆者作成

  • 施設介護サービス費 2万1360円
  • 介護サービス加算 3000円
  • 居住費(370円/日) 1万1100円
  • 食費(390円/日) 1万1700円
  • 日常生活費 5000円

総額 5万2160円
※介護サービス加算と日常生活費の金額は一例。自己負担割合が1割の場合。

軽減制度その2.高額介護サービス費

高額介護サービス費とは、同じ月に利用した介護サービスの、利用者負担の合計額が高額になり一定額を超えたときに、超過分が「高額介護(介護予防)サービス費等」として支給される制度です。

なお、この制度は申請を行うことで支給を受けられます。自治体から通知書と申請書が届くため、受け取ったら速やかに申請手続きを行う必要があります。

4.2 自宅を売却する

自宅(持ち家)を売却して資金にあてるという方法もあります。

ただし、自宅を売却する場合は、専門の不動産業者に査定をしてもらい、確実な金額を把握する必要があるでしょう。

また、親が認知症になってしまうと売却が難しくなることもあるため注意してください。

4.3 融資を受ける

「リバースモーゲージ」というシニア向けの融資制度を利用するのも1つの方法です。

これは、持ち家のある人が、介護施設などへの入居に当たって、自宅(持ち家)を担保にして銀行などの金融機関からお金を借りることができる融資制度です。

所得の低い高齢者向けには、国の生活福祉資金貸付制度の「不動産担保型生活資金」を利用できる場合があります。

こちらは、お住まいの市区町村社会福祉協議会、または都道府県社会福祉協議会が相談窓口です。

4.4 生活保護を受給する

年金だけで費用を支払えない場合「生活保護の受給」も対処法となります。

ただし、生活保護を受給したい場合は、世帯年収の最低生活費に満たないことが条件となっているなど一定の条件を満たす必要があります。

生活保護を受給して特別養護老人ホームに入居したい場合は、自治体の担当窓口やケアマネジャーに相談してみるといいでしょう。

参考資料

中谷 ミホ