3. 70歳代のうち「住民税非課税世帯」に該当する驚きの割合
住民税非課税世帯になる要件を確認しましたが、実際には所得要件があることから、高齢者世帯が多くなると予想されます。
厚生労働省「令和4年国民生活基礎調査」によると、年代別の住民税非課税世帯の割合(全世帯に占める住民税非課税世帯の割合)は次の通りとなりました。
- 60歳代:19.2%
- 70歳代:34.9%
- 80歳代:44.7%
年齢を追うごとに、全体に占める住民税非課税世帯の割合が増えていることがわかります。
また住民税非課税世帯を母数とした場合、70~79歳が占める割合は37%となりました。ただし、だからといって現役世代が住民税非課税世帯に該当しないというわけではありません。
要件を満たせば、誰でも住民税非課税世帯に該当する可能性はあるということです。
年金以外の労働収入は減ることが一般的ですので、所得の減少とともに非課税世帯は増えると考えられます。
一方で、住民税非課税世帯=生活が苦しいとも一概には言えません。前述のとおり、住民税非課税世帯の条件には「金融資産保有額」が含まれていないためです。
金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査(令和5年)」より、70歳代の資産状況も見ておきましょう。
4. 70歳代の平均貯蓄額はいくら?
金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査[単身世帯調査](令和5年)」によると、70歳代・単身世帯の貯蓄は以下の通りでした。
4.1 70歳代単身世帯の貯蓄一覧
- 金融資産非保有:26.7%
- 100万円未満:5.8%
- 100~200万円未満:4.3%
- 200~300万円未満:4.1%
- 300~400万円未満:3.3%
- 400~500万円未満:2.5%
- 500~700万円未満:6.6%
- 700~1000万円未満:5.1%
- 1000~1500万円未満:8.6%
- 1500~2000万円未満:5.3%
- 2000~3000万円未満:8.2%
- 3000万円以上:17.3%
金融資産非保有が26.7%占めており、厳しい世帯がいることがうかがえます。一方で、3000万円以上という世帯も17.3%存在します。
4.2 70歳代二人以上世帯の貯蓄一覧
- 金融資産非保有:19.2%
- 100万円未満:5.6%
- 100~200万円未満:5.1%
- 200~300万円未満:4.3%
- 300~400万円未満:4.7%
- 400~500万円未満:2.5%
- 500~700万円未満:6.2%
- 700~1000万円未満:5.8%
- 1000~1500万円未満:10.2%
- 1500~2000万円未満:6.6%
- 2000~3000万円未満:7.4%
- 3000万円以上:19.7%
金融資産非保有は19.2%、3000万円以上は19.7%で、ほぼ同数となりました。
ほとんど資産がないという世帯にとっては、やはり住民税非課税世帯に対する給付はありがたいといえるでしょう。
5. まとめにかえて
ここまで70歳代における「住民税非課税世帯」の割合や貯蓄額について見ていきました。
住民税非課税世帯には高齢者が多く、所得や資産が少ない世帯には生活の助けとなっていることがわかりました。しかし、制度として助けにはなってもこれだけでは十分とは言い切れないでしょう。
貯蓄額にはばらつきがあり、生活に不安を感じる人も多いもの。老後になってから備えるでは間に合わないケースがほとんどです。
将来の資金として十分とは言えないのであれば、少しでも早くに将来の資金を貯める計画を立てることが老後の生活を豊かにするカギになるでしょう。
参考資料
- 東京都主税局「個人住民税(税金の種類)」
- 総務省「個人住民税」
- 大阪市「個人市・府民税が課税されない方」
- 内閣府「物価・賃金・生活総合対策本部(第8回)議事次第」2023年3月22日
- 板橋区「住民税 よくある質問」
- 内閣府「新藤内閣府特命担当大臣記者会見要旨 令和5年12月1日」
- 金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査](令和5年)」
- 金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査[単身世帯調査](令和5年)」
- デジタル庁「公金受取口座登録が可能な金融機関」
大庭 新太朗